2022年09月20日

何かがわかるとき

ボトムポイントは、そのストーリーの中で最も暗闇の部分である。
そこからリバーサル、つまり大逆転があり、
転じて前向きに進む。
その時がそのストーリーの最も力強い前進力になる。

その時、主人公は何かを「悟る」ことが多い。


逆に、何も分からないままであれば、
暗闇の中に閉じ込められたままだろう。
単に辛い、暗い場面になり、
次の日に明るくなってたら、
アホかと思うだけだ。

つまり、
暗闇の先で、
何かしらの理由があって、
それは光に転じなくてはならない。

暗闇を晴らすには、理由がいるわけだ。

そうじゃないと論理的な話とはいえないわけだね。


で、何かしらの理由というのは、
「わかる」「悟る」が一番やりやすいということ。

しかも単に新しいことPをわかったから、
脱出できるのではなくて、
それがこれまでのことABCD…が関係していると、
なるほど感が出る。
そうか、すべてはこのための伏線だったのか、
これで全てが繋がるぞ、
というポイントだ。

どんでん返しは、ここで多くあることが多い。

なるほどこれまでのこれは、
たった一つのPに辿り着くためにあったのか!
だとしたらこの暗闇は突破できる。

解決はすぐだ、あとは戦うだけだ、
となる流れがベストで、
ここさえうまくいけば、
あとはラストまで突っ走ることが可能になるだろう。
それほど、このリバーサルポイントはデカイポイントになり、
エンターテイメントポイントになるだろうね。


ドラマ「風魔の小次郎」のボトムポイントは、
麗羅の死であろう。
そこから何かを悟った小次郎は、
風林火山をものにする。
その「悟り」は12話冒頭で明かされる。
風のように使うこと、がその答えで、
それが完成して、小次郎は初めて風魔の小次郎になるのだ。

ここで、「何も分からずに立ち直りました」だったら、
麗羅の死はなんだったんだ、になる。
そうではなく、
麗羅がヒントをくれてたんだ、と、
これまでのことがここに繋がる、
があることで、暗闇は出口へとリバーサルするわけだ。

「ハッ!わかったぞ!」とオンで描いてもいいし、
このドラマの例のように、
すでにわかったことを誰かに語る形式でも良い。
この例ではそれで石灯籠を叩き切ることで、
これまでの伏線を全て回収し、
その向こうに死んだ風魔の魂が現れて、
最後の決戦へ向かうターニングポイントになるわけだ。

ボトムからのリバーサル、クライマックスの流れが、
非常にうまく出来ている例だね。

このリバーサルは、
カタルシス(生まれ変わる)と表現されることがある。
何かをわかること、悟ることで、
一から変化してしまうわけだ。


オンで描くとても良く出来た例は、
名匠ビリーワイルダーの、
「サンセット大通り」のボトムポイントに見ることができる。

女優の正体、執事の正体が明かされるあの場面だ。
あまりのおぞましさに震えることだろう。
このどんでん返しにより、
ラストの悲劇へと突っ走るリバーサルポイントになるわけだ。


日本神話においては、
洞窟と宝のたとえが使われている。
洞窟の奥の奥にある宝を得たから、
あとはリバーサルで一目散に脱出するわけだ。
ここでも強力なリバーサル(進む→脱出)になっている。

詳しく読んでないが、
その宝が、「これまでの伏線が意味をなして、
そういうことだったのか」とわかるものが、
最適だと僕は思う。



このように、
ボトムポイントからのリバーサルは、
シナリオにとって最も大事な裏ポイントであるわけだ。
(「最も大事なポイント」は沢山あるのだが)

あなたのボトムポイントは何?
そこからどうやってリバーサルを勝ち取る?

ここで他人に与えてもらうのはメアリースーだね。
主人公が自力で暗闇から戻ってこなくてはならない。

そのことを悟ったからには、
もう前のように泣いてる弱い者ではなく、
戦う覚悟を決めた、
一皮剥けた者になっているであろう。


で、何を悟るのかを考えれば、
それはテーマにつながることのはずなんだよな。

暗闇の中でやってきたことが、
あなたを光の側へ連れて行く。

アンダーアーマーのキャッチコピーだけど、
それがこのことをよく現していると思う。

その暗闇の中、
どうやって光の側へ生還したのか。
何を掴んだのか。

その掴んだものが、テーマであろう。
それは直接言葉で言ってもいいが、
言わずに観客に悟らせるのが最上だろう。



ただ暗闇に落ちて、
ただ帰ってきただけではストーリーではなく、
ただの起伏でしかない。

そのことになんの意味があるのか?
に答えられるのがストーリーだ。
posted by おおおかとしひこ at 01:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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