2022年10月13日

いじるべき所はそこじゃないかもしれない

リライトのTIPSみたいなこと。


リライトしているときに、
何回書き直しても満足しないパートがある。
一回二回じゃない、五回六回、十回書き直しても、
まだうまく書けた感覚のないもので、
要求するものに到達しなくて、
満足しないパートがまれによくある。

こういうとき、
そこだけを直すのはやめて、
最初の項に戻して(最終稿でもいいが)、
別の所を直すといいよ、
という話。

ツボでいえば、
遠くの所に刺激を入れて、
患部に別の血液を流す、
みたいなイメージだ。

じゃあそのツボはどこにあるんだろう。
そのパートへの伏線になっている所、
すべてが候補である。

伏線といっても、どんでん返しのような派手なやつだけでなくて、
そのパートの前提になっていること、
くらいに考えておくとよい。
因果のうち、因になっている所だね。

仲直りする、というパートを書き直したいならば、
喧嘩のシーンがそれにあたるわけだ。
でも喧嘩に至るその前もその因だよね。
結局、どこがそこに至るのか、
大体全部の線をチェックしないといけなくなるだろう。
で、それ以前の、設定から変えたほうがいいかもしれない、
なんてことに気づくかもしれない。

あるいは、
因果でいうと、果のほうからやる手だってある。
そのパートはいまいちでも、
そこに伏線を仕込むことで、
そのパートからの結果がよくなり、
名シーンであるべきはそのあとのシーンであったのだ、
ということが分かることだってよくあるよ。


あるいは、そのストーリーラインでないところを直すと、
流れがよくなることもある。
喧嘩と仲直りのストーリーラインを直そうとしているときに、
そことは関係ない、友人のサブプロットを直すと、
よくなることがあることもある。
それは順番が前後したりして、
観客の意識が変更になるからだろう。
こうしたときは、たいてい直したあとの原稿ではなくて、
初稿の素直な状態で書いたもののほうが、
合うことが多い。

問題はそのパイプラインではなくて、
別のパイプラインが詰まっていたことによる、
ということだって全然あるわけだ。


パズルでも似たようなことが起こるよね。
ここが原因だと思ってたのに、
まったく関係ないところをいじったら、
本道がとてもうまく行った、
みたいなこと。
逆に、うまくできたパズルは、
問題の箇所にわざと注目させるようにして、
隠れたところに解決のカギがあるようなものだと思うよ。
「そこかあ、きづかなかった!」
という楽しみを提供しているわけだからね。

パズルは解くことが目的だけど、
脚本上の問題はそうじゃない。
目的に対してノイズになっていることが問題なのだ。
でも、共通する構造があるように、
僕からは見えている。
それはおそらく、
脚本はパズル的な本質を持っているからだと思う。

よくできたパズルが、
何個も別解をもっていたり、
その中でも美しい解があるように、
脚本というパズルでも、
何個も別解があるし、
その中でも美しい解があるとは思う。
その中でも、
感動や笑いなど、感情がもっとも揺れ動くのが、
正解のルートだろうね。


ということで、
そこだけが問題なのか?
ということをリライトでは問うと良い。

そこは問題じゃなくて、
別の問題がそこで躓いているから、
躓きはそこだと誤解しているのかもしれないよ、
ということだ。
よくよく見れば、観客が誤解しているだけ、
ということだってある。
じゃあ、事前にその誤解を解くシーンを入れるだけで、
もとの問題のシーンは何も問題なくするっと行くかもしれないわけだからね。


それが、どのように問題になっているのか、
特定しよう。
まずは患部の特定のようなものだ。
そこを直すのは単なる外科手術だ。
それで直したことにはなるが、対症療法かもしれない。
またぶり返すことがある。
そこに何度もメスを入れてぐちゃぐちゃになるのは、
あまり推奨の方法ではない。
東洋医学的に、
原因を根本から見直して、
まったく離れた所から、遠投して直すことだ。

全く離れることはとても良いことで、
パズル全体を見渡すことでもある。
そうしたときに、
「ここは触っていないぞ」というポイントに気づくはずだ。
俯瞰というのは、そうした見方のことである。


逆にいうと、
同じところでぐるぐる直して悩んでいるのは、
俯瞰的になっていない証拠だ。
視野が狭くなっているのでは?って気づき、
落ち着いて見てみることだ。

深呼吸したり、物理的に紙から遠ざかって見たり、
(地面にばらまいて2階の窓から見てもいいぞ)
たっぷり寝るのも俯瞰的になれるやり方だ。
posted by おおおかとしひこ at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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