何をするかで映画はものを描く。
それをどうやってするかの、
具体がテーマになってくる。
ものを届けるとしようか。
バイク便を手配しようとしたら無理だとわかり、
誰かに頼もうにもいないから、
自分で行こうとしたと。
でも雨が降ってきて嵐になり、
それでも自分一人で届けたとしよう。
なぜ他人に頼まないのか、ということよりも、
「どのようにしたか」でそれはわかる。
「届ける責任があるから」ということだ。
これがテーマになってくるよ、
ということである。
何をするか、だけならば、
敵を倒すとか、儲かるとか、告白するとか、
色んな事があると思う。
ただ、それをどういう具体で実現するのか、
でテーマは全然変わってくる。
敵を倒すのも、
正々堂々と倒すのと、
人質を取り弱みを握り、八百長に仕立てあげることでは、
まったくテーマは変わってくるだろう。
たとえば「喧嘩商売」という漫画では、
いかに汚い手段で盤外戦で勝つか、ということを、
延々とやっている。
それはスポーツ的な勝利ではなく、
武術的な、なんでもありで勝つことが、
ほんとうの(リアルな)勝負である、
ということを描こうとしているからだ。
ずっと前振りをしている、
「最強の格闘技は何か? まだ決まっていない」
というやつは、
テーマの逆で、
「格闘技ごときのスポーツに、
最強があるわけがない」ということを含めている気がするんだよね。
「格闘技」といっているからね。武術や戦略とは言っていない。
つまり現場の技術よりももっと大きなものが最強を決めるし、
測定可能な「最強」という概念に、
縛られないものが勝つ、
みたいなことを言おうとしていると僕は予想している。
何をするかは、プロットでもよく考えることだ。
どのようにして?は、
プロット段階では適当にしておいて、
現実の執筆段階で思いつくこともよくある。
ディテールはあとで考えることにして、
骨格だけ考えよう、というプロット段階においては、
具体的手段は邪魔だな、と思うこともあるからね。
だけど、
実際は、その細かい具体的な手段が、
テーマを雄弁に語ることもあるわけだ。
「告白して成功する」
というWhatをやるときに、
たとえば金で買うというHowでいいのか、ということさ。
もちろん、「心は金で買える」というテーマならば、
それはよい。
しかし普通は「誠実さが重要」とかになるから、
じゃあその誠実さってどういうこと?
というHowを具体的に描いていくことになる。
それですごく素敵な告白をつくりあげ、
「その方法ということは、こういう意味だな」
ということを暗示できるわけだ。
もしこれまでの二人のストーリーを圧縮して、
それを二人の運命の根拠にするとかならば、
「ずっといたことこそが愛の証」みたいなテーマに結実するわけだし、
複数の男が求愛するとき、
突き抜けたやつが選ばれるならば、
「愛で突き抜けることが必要」というテーマになるだろう。
どのようにして?そのものが、
テーマを雄弁に語るわけだ。
この具体は、プロットのときにつくるべきか?
僕は、「テーマに関することは、具体的につくるべきである」と考える。
「ずっといたことが愛の証になる」というテーマに落とすならば、
それを具体的にどのようにして示すかが、
その作品が成立するかどうかの勝負ポイントになるわけだからね。
その勝負ポイントだと思ったことは、
具体的にやったほうが強くなると思うよ。
そうでないところ、
たとえば「転校してくる」とかは、
具体的な描写がなくてもいいと思う。
もちろん、それがテーマに関することに直接使われるならば、
具体を詰めていったほうが、
執筆では迷わなくて済むだろう。
ていうか、執筆段階でそれを考えるのは、
未来の自分への無茶ぶりもいいところだ。
その具体が、
そのストーリーの素敵さとか、
強さとか、ありようをきめることがある。
何をどうする、まで決めておくべきだろう。
後ろを振り向いた敵を切って終わる話は、
「正々堂々と戦う」というテーマには落ちない。
テーマが変ってしまうだろうね。
相手が汚い技を使ってきても、
正々堂々と相手を切ることができたとき、
はじめて「正々堂々と戦う」がテーマになる。
How doを考えよう。
それがテーマになる。
具体的に敵をどう倒すのか?
具体的にどういう告白をするのか?
具体的にどういう勝ち方をするのか?
勝ち方そのものがテーマにならないならば、
勝つ場面はそれほど重要じゃないだろう。
じゃあ、テーマに落ちる瞬間はどこかを考えればいい。
勝負する話でないほうが、
テーマを的確に示せる、とわかったら、
勝負するプロットは、それがいかに面白くても却下することだってある。
プロット段階というのは、
そのように、
テーマとHowを詰めることをしておくべきだろう。
2022年11月10日
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