かつて映画にしかなかった名場面や、
名画の名シャシンと言われたものは、
スマホのカメラの発達によって、
すべて映え写真へと変わったように思う。
今や、
すごい写真、珍しい瞬間、
絶景、おかしな写真、
かわいい子、動物、うまそうな料理、エモい絵、
など、
「絵になる瞬間」は、
数々のインスタやSNSにアップされ続けている。
写真雑誌や映画にしかなかった、
「いい絵」というものが、
民主化されということだ。
逆にいうと、
「いい絵」の価値は下がり、
バエの価値まで暴落したということである。
絵師のほうがむしろ「いい絵」を担っている感がある。
ただ写真を撮るならだれでもできるが、
絵を描く、という苦労と才能が必要だからだ。
だから神絵師は重宝である。
(今後AIに抜かれる人も出てくるだろうが)
シャシンによる「いい絵」は、
プロ並みの機材や現像ソフトをそろえることで、
簡単にはできるようになった。
もちろんある程度の才能や知識は必要だけど、
プロカメラマンにとって一番重要なのは、
場数である。
場数さえ踏めば、
ある程度力があれば、
どんどんいい絵を撮れるようになってくる。
つまり、
日々上がるSNSのバエシャシンと、
あなたの書く物語中の「いい絵」は勝負の土俵に上らされるということだ。
で、実のところ、
僕はそんなにもはや「いい絵」の差がないと思っているわけ。
よほど金をかけたセットとか、照明とかじゃない限り、
そんなに差がなくなっている。
むしろプロはその一日で撮らないといけない制限があり、
しかも現場の金がなくなり続けているから、
無限に時間を使って、プロとたいして金額が変わらないコストで撮れる素人たちの、
偶然撮れた映える絵のほうが、
プロを上回りつつあるようにすら思う。
そんな偶然、一年の撮影に一回くらいしかないよ、
というような天気や光線でも、
たくさんいる素人の、だれかは必ずものにしているからね。
つまり「いい絵」は民主化されてしまって、
解体された。
プロの専売特許じゃないものになってしまったように思う。
じゃあ、我々が撮れるいい絵というのはなんだろう?
「トップガンマーヴェリック」のひとつの答えは、
素人が決して撮れないものを撮る、
ということであった。
戦闘機のコックピットでまじで飛んでる絵なんだから、
素人には無理なものだ。
金とプロのスタンバイがないとできないことである。
そうじゃない、
金のない邦画はどうすればいいだろう?
美形芸能人が出る、
というのをひとつの担保にしていた感はある。
だけどそれも飽きてきている。
飽きたら次の芸能人が出てくるのかもしれないが、
順列組み合わせが終わったら飽きられるだけだ。
しかも、そういう人が出るだけだったら、
無料のYouTubeにゲストとして出ることすらあるからね。
チャンネルが増えるほど、絵の価値は下がるわけだ。
さて本題だ。
我々プロが提供できる、いい絵とはなんだろう?
僕は、文脈がある絵だと思っている。
そのストーリーの名場面だから意味がある、
いい絵が、プロしかつくれないものであると。
ただのシャシンじゃない。
そのストーリーのその場面を象徴する、
イコンになっているから意味がある。
それは平凡な絵ではなく、
少なくとも映える程度の絵になっている。
それだけで、凡百の映える絵に対して、
ストーリーという無限の力で勝てるわけだ。
もちろん、
それは素人の自主映画でもできることだとは思う。
だから、あとはストーリーの出来次第だということになる。
シャシンの民主化というほど、
ストーリーの民主化は起きないだろう。
何せカメラや現像といったものは、
機材の発達だけでクリアしてしまったのだ。
しかしストーリーの機材は、
紙とペンさえあればよいから、
「機材がないからできない」という一党独裁は難しい。
つまり、
ストーリーというのは中世くらいから民主化自体はされている。
誰でも書く権利やチャンスがあるのだ。
しかるに、
誰でもカメラでいい絵が撮れるようには、
誰でもいいストーリーが書けるわけではない。
おそらく、
ストーリーのほうが、カメラよりも才能がいる。
さて。
カメラの才能は、
場数でもある程度稼げるのであった。
じゃあ、あなたたちがやることは、
同様に場数を踏むことだろうね。
何もやってなくて、なんでいいストーリーが書けるというのかね。
神絵師のように、普段から書いている人だけが、
いつでも素人よりもいいストーリーを出せるわけだ。
ただのいい絵は、それだけで終わりだ。
インスタやツイッターで流れまくって、
消費されるだろう。
しかしいい絵でかつ素晴らしいストーリーを象徴する、
イコンという名のいい絵ならば、
それは永遠に残ると思う。
なにせ、それができる人は少ないのだから。
2022年11月18日
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