2022年11月29日

将棋盤をひっくり返すタイプ

小学生のころ、将棋とかやっただろう。
途中で負けそうになって、
盤をひっくり返した人もいるかもしれない。
そういう人は、シナリオを書くのに向いていない。


あることを計画する。
一個ずつ綿密に考える。
そして成功に導く。
無理や矛盾といったものを注意深く取り除き、
しかも感動や笑いや感心や涙を誘うものにする。
人間を深く理解した、なるほどというものに仕上げる。
シナリオとは一種のパズルである。
将棋のような緻密な過程を踏む。

シナリオがうまくまとまらない人は、
将棋盤を途中でひっくり返す人に似ている。
たいてい放り出す。

話の途中で、
めちゃくちゃになって終わるパターンも同様だ。
ああぶん投げたな、というやつだ。
せっかく作ってきた綿密な計画を、
盤をひっくり返してしまったのだろう。

最近だとなんだろう。
ちょっと前だが、ガンツはひどかった。
ファイアパンチもひどかったが、
チェンソーマンでも似たようなことがあったらしい。
もう興味がないので追っかけてないけどね。

長期連載ではそういうこともあるだろう。


最後の一手まで計算されつくした、極上の体験。
それこそがシナリオが提供するべきことだ。

逆に、他のパートがどれだけ頑張ってもこれは出来ない。
撮影や照明でどれだけ頑張っても、
ワンカットワンカットはきれいだけどそれだけだ。
美術がどれだけ頑張っても装置は可能だが、それだけだ。
俳優がどれだけ頑張っても同様。
衣装や音楽や、同様。
名監督がどんなに演出しようが、
シナリオが将棋盤をひっくり返していたら、
何もできなくなるだろう。

シナリオだけが、
最後まで将棋をする必要がある。

詰みまでもっていかなければならない。
「チェックメイトだぜ」になるまで、
綿密な計画をもって、自然に無理なく、
しかもエンターテイメントにしないといけない。

それを途中で放り投げるやつは、
脚本家に向いていない。
必要とあらば、一手目から全部やりなおすことすら、
脚本構築にはある。
イライラするやつには、脚本は向いていないのだろうね。

結局、頭から湯気を出しながら、
冷静に考えるしかないのだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック