Twitterから。
> 一時間で6000字書ける作家、ブラインドタッチとショートカットキーと親指シフトを習得したら一時間に12000字書けるようになりそうで怖い
そうはならないんだよな。
頭の中に1万2000もないからね。
1時間に6000字書ける作家は、
2時間に1万2000字書けて、
3時間に1万8000字書けるか?
否である。
工場や農場の単純労働ならこれはあてはまる。
1時間に部品の組み立てを10個できるひとは、
3時間で30個できる。
1時間に1エーカー耕せる人は、
3時間に3エーカー耕せる。
しかし、たとえば漁業はそうではない。
1時間に10kgの魚が釣れたら、
3時間で30kgの魚が釣れるか?
釣りをしたことのある人なら、
「そううまく行かないよ」と思うだろう。
魚は、海の中に均等にいないからだ。
部品や畑は、一様分布を持っている。
だから速度×時間=仕事量が成り立つ。
だけど魚は海の中に一様分布していない。
魚の群れに当たればデカいし、
ボウズの日もあるわけだ。
創作文は、
工場や農業と、漁業の、
どっちに近いだろう?
僕は後者だと思う。
オイシイネタから始めても、
すぐにネタ切れになることは、
百万回は経験している。
ネタは一様分布していない。
1時間に6000時書ける作家が、
すでに頭の中のストックを使い尽くして、
次の1時間で0文字しか書けず、
さらにうんうん唸って400字だけ捻り出して、
3時間で6400字しか進まない、
なんてことは日常茶飯事だ。
経験上、
時を追うごとに速度はさがってゆく。
僕は1600字/10分だけど、
それは最初の10〜15分くらいで、
1600×6=9600字を1時間で書けるかというと微妙で、
1時間なら5000字くらいがいいところだ。
10000書くのは、トータルで3〜4時間かかる。
調子いい時はね。
悪い時はそこから一文字も進まないことだってある。
頭の中のストックは何文字あるだろう?
僕は5000前後だと考えている。
1万ある時もあるが、それは余程のときだ。
それを一気に書く時は、
数週間溜めないとうまく行かない。
一日のストックが大体5000前後で、
寝て起きたらまた溜まってる感じがある。
これは人によるかも知れない。
だから、
速くなったとしても、
仕事が速く終わり、
頭の中のものをなるべく純粋に出せるだけで、
生産量とは関係がない。
タイピングが遅いことで、
5000が日産2000しか書けず、
内容が濁っていくことはあるかもだけど、
1000字(変換後)/10分の速度があれば、
その現象はなくなる。
そもそも「書く」ということは、
頭の中にすでにある5000字の文章を、
芋づるのように引き出してコピー打鍵することではない。
概ねあるアイデアを、
その場でアドリブで論じ始めて、
反論や破綻を検討しながら進めることだ。
だから、書くよりも、
「これでただしいのか?」を多角的に検討する時間の方がかかる。
これは純粋な頭脳労働であり、
原稿そのものには現れない行為で、
そこに時間が一番かかるのだ。
文字を書くのは、
その検討の結果を引き継ぐにすぎない。
だから、
一時間で6000字書く作家は、
一時間で6000字分の検討をできる、
というだけにすぎない。
頭のクロックが倍になっても、
1万2000にはいかない。
内容の複雑さは、O(n)じゃなくて、
O(n^2)だからだ。
2かどうかは微妙だが、
線形関係でないことはたしかだ。
おそらく、1万2000字には4時間かかるだろう。
これは経験的数値に合致する。
つまり、
手を速くすることは、
一定(700〜1500)までは、
とても効率的になる。
そこからは頭の世界になり、
工場や農場のような、単純労働ではなくなる。
もし、速度と生産量と効率のような、
単純な算数でしか書くことを考えていないのだとしたら、
そいつは書いたことのないやつだ。
つまり、バカなんだな。
おれは薙刀式によって、
かつてから3倍速く書けるようになった。
それで生産量はあがらない。
頭の中の情報を取りこぼさないようになっただけで、
量ではなく質があがった。
文章というのは量で決まるのではない。
質で決まる。
お前は「今日はゴミを○万字読んだぞ!」
って文章を読んでいるのか?
140字ですら、17文字ですら、
人の真実を抉った文章を読むべきではないのか?
書くことも同じだろう。
月産○枚や○文字でいくら、
なんて計算をしてる人の文章は、
そのレベルなんじゃない?
2022年11月17日
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