ベタだなあ、と思える要素を抽出したまえ。
まずは100だ。
なんでもいいぞ。
死んでたと思ったが、生きていた
生涯のライバルと決勝戦で
花の舞い散る場所で運命の恋人と出会う
上司がラスボスだった
そんなにミュージシャンになりたいなら親に出ていけと言われる
結婚式の前日、親と飲む
手紙で「ありがとう」と書いてあるのを発見する
まあどこかで見たなにかだろう。
こんなものを100用意せよ。
得意なジャンルだけでなく、
なるべく満遍なく集めよう。
いくらでもパッと思いつくだろう。
よくある場面、見たことのある場面がよい。
そして、
「あまりにもベタすぎて、これまで避けてきた場面」
であることが望ましい。
二つ、訓練方法がある。
一つ目は、そのベタすぎて避けてきた場面を、
ちゃんと脚本として書いてみることだ。
「結婚式の前夜、ウェディングドレスを前に、
娘と父が酒を飲む」
なんてのは小津以来ずっとやられてきたことだ。
意外と書いたことがないだろうから、
まずそれを書いてみるのだ。
ベタの力はそれなりにあり、
ああ、なんか収まったなあ、
ということもあるだろう。
これはまずストレートを投げる練習に近い。
160キロでなくてもいいから、
普通に書けるようになっておこう、
ということだ。
書いたこともなくて避けるよりは、
すでにやっておく、ということが重要。
なぜなら、つぎの二つ目の練習をより充実させるからである。
二つ目の練習は、
「見たこともないやり方で、そのベタを書き直してみる」
というのがいい。
「結婚式の前に娘と父が飲む」という状況だって、
結婚相手が天皇だったらどうなるか?
庶民のそれとはまったく違う何かになるだろう。
あるいは、戦国時代に人質に取られる、
まだ14の娘だったらどうか?
父が病気で酒を禁止されていて、
たとえばおしるこを持ってきたら?
ウェディングドレスだっていかようにもなる。
酒をこぼしてしまう、
というアクシデントをつくってもよい。
徹夜で酒の染みを抜く、なんてことを二人でやれば、
たぶん一生の思い出になるだろう。
どっちかがクリーニング屋でバイト経験があり、
染み抜きが得意ならば、また話は変わってくるに違いない。
セリフのいい方だっていろいろやり方はある。
まったく無言に書き換える、というのもあるだろう。
じゃあ、手話でやったらどうか、
というのも面白い。
これまで恥ずかしくて使ったことのない手話、
「私はあなたが大好きだ」
というのを初めて使う場面にしたって良いよね。
こうして、ベタを新しくすることは、
いくらでもできるわけだ。
「花びら舞い散る素敵な場所で、運命の恋人と出会う」
だったら、
たとえば演劇部に入った二人が、
桜吹雪の小道具を準備していて、
どちらかが誤って上で箱を開けてしまい、
冬なのに桜舞い散る中での二人をつくることだって出来るわけだね。
オフィスの二階のシュレッダーが壊れて、
ふたを開けたら中身が舞い散り、
一階にいる二人に、とかでもいいし、
パチンコ屋で大当たりした人が抱えてきたパチンコ玉が、
滑って転んで二人に降り注いでもよい。
偶然を起こすならば、それまでの伏線が前にあれば、
「降り注ぐ」という場面はいかようにでも作れるだろう。
二階で水道が壊れて、
水が降り注いでもいいのだ。
単に花びらにしないで、このようにアレンジすれば、
なるほどね、と皆が思ってくれるアレンジになるよね。
つまり、
ベタを利用して、新しい場面を考えることが出来るようになるわけ。
いきなりアレンジから入ると、
うまくいかないことが多いので、
最初にベタを書いて、
ストレートを一回投げておこうぜ、
というのが第一の練習だったわけ。
こうして、
ベタな場面と、
それをうまくアレンジした場面の、
二つを練習することが出来るわけだ。
こうなると、
どういうベタでも、
アレンジさえうまくいけば、
なんとかなるだろうということになる。
つまり、
「なんとなく避けてたベタ」を、
使いこなせるようになるし、
なんならベタの強さを利用できることになるわけ。
「死んでたと思ってたら生きてた」なんて、
とてもベタで使う気がしないが、
アレンジ次第では、
とても面白い場面にすることが出来るかもしれないよね。
ベタを避けるべきではない。
まずは正面からぶつかってみる。
そして次に、
自分がやるとしたらこう利用する、
をやってみる。
両方使いこなせるのが最強。逆張りだけしていたら、
こうした順張りをつかえなくなる。
2022年12月01日
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