2022年12月11日

動詞を100個並べてみる

ストーリーとは行動で記述される。
行動とは動詞のことである。
じゃあ、なんでもいいから動詞を100並べてみよう。


ストーリーの主たる動詞が何かをひとつ選んで、
それについて考えるとよい。

具体的にやってみようか。
まず動詞を100並べるぞ。

走る、殴る、捨てる、見る、聞く、言う、
怒鳴る、座る、寝る、吸う、食べる、飲む、
立つ、破る、建設する、書く、叩く、
作る、壊す、閉める、開ける、占う、
望む、試みる、押す、引く、
嘘をつく、騙す、死ぬ、殺す、生きる
泳ぐ、溺れる………………

まあなんでもいいよ。適当でよい。
これのうち、「主たる動詞」を何か選ぼうか。
「走る」が分りやすいのでこれにしてみる。

で、「走ることで解決する物語」を考えるのだ。


どういうことだろう。
走れメロスがあったね。
伝令の話だろうか。
何かを運ぶ話でもよさそうだ。
なぜ走るのか。
走ることに対するどういう障害があるのか。
妨害されるのか。もっと速いライバルがいるのか。
何かを運ぶだけでなく、レースかもしれない。

よし、じゃあ、国境をまたぐキャノンボールレース内で、
麻薬を大量に運ぶマフィアの仕事を受ける話とか、
どうだろう?
走ることがメインになるんじゃない?

でも注意したいのは、
「走ることで解決する物語」にしないといけないことだ。
走るビジュアルがメインなんじゃないんだよ。

じゃあ、ラブストーリーでもいいんだよ。
最後引っ越していく女の子に、
走りながら告白する話でもいいんだ。

なんでもいい。
「走る」ということだけをルールにして、
妄想を豊かにしてみよう。
できれば複数考えておくと、
あとあとストックになるし、
落ちまでかんがえなくても、ネタさえ面白そうならば、
メモっておいてもよい。
キャノンボールで麻薬を国境越えで運ぶ、
というアイデアは面白そうだから、メモっておくべきだな。
(事件とか落ちとかはどうでもよくて、
アイデアだけのメモだけどね)
で、麻薬より人身売買がいいんじゃないかとか、
楽器のケースに入れたゴーンがいいんじゃないかとか、
そんな妄想をしたっていいのだ。

さて、ここから「変形」してみるぞ。

否定形や、受動態、他動詞などにしてみるのだ。

走らないことが解決になる話。
走らされることが解決になる話。
走らせることが解決になる話。

ふむ。いろいろありそうだね。
死せる孔明、生ける仲達を走らす、
なんて三国志にあったよね。
走ったら負けみたいな競歩を舞台にした話もできそうだ。
速度計がついてて、一定以上の速度が出たら爆発する爆弾を運ばされる話、
とかもすぐに思いつく。

動詞は、
たいていは主体的な能動態ではあるが、
自動詞と他動詞、能動態と受動態みたいに、
変化をする。
その変化形を考えることだってできるのだ。
他の変化ってあるかな。
未来形、過去形もあるよね。

いつか走ることで解決する話。?
走ったことが解決になる話。?
タイムスリップものだろうか。
あるいはミステリーなのか。
がむしゃらなことをやっていたことが、
いつか生きるみたいな、人生訓みたいな話だろうか。

単純な「走る」だけだとベタな話になってしまい、
あんまり面白いものを思いつくことがないので、
こうした変形ものを考えたほうが、
意外で面白くなることがあるんだよね。
毎回のバリエーションは考えなくてもいいけど、
無理やり考えることで、
頭を柔軟にするトレーニングを積むこともできるよ。
勿論、能動的で自動詞で、現在形の、
面白い物語を思いつくことは、
やぶさかではない。きっとそれは王道で面白い話になるだろう。
ただし、よほどちゃんとしたものじゃないと、
これまでの名作に匹敵するものにはならないと思うけどね。

ということは、わざと変な動詞を思いつけば、
ヘンテコな話をつくれるのでは?
と思うよね。

前戯をする、粘着する、空中浮遊する、
出家する、爆発する、布団に入る、
狼煙を上げる、マウスを左手に持つ

なんて適当に考えてみたが、
どういうショートストーリーなのか、
まったく想像が出来ない。
二時間の話にもなるかな? 分らんね。
ということは、「だれもまだ思いついていない話」の可能性はなくもないということだ。


これらを、100の動詞で考えてみると、
それだけで100や500くらい、
プロットのアイデアがでるんじゃないかな?

アイデア出しだけでもだいぶたまると思うけどね。
勿論、アイデア出しだから、
あなたの詳しくないジャンルの話を考えてもいいんだよ。
馬のことを全く知らなくても、
「走らされる話」が、馬の世話役の話でもいいんだぜ。
無責任に、プロットだけを考えるだけでいいんだ。
僕はよくキャバ嬢をプロットに出すことが多いが、
キャバクラはずっといっていない。
でもストーリーがそこに転がってそうで、
妄想すること自体はすぐにできる。
もし面白そうになってきたら、
あとは取材すればいいのさ。


ということで、暇なときでいいから、
動詞100から妄想して、
いろいろなネタを貯めておくとよい。
いつかそれは落ちのあるストーリーになるかもしれないし、
落ちまでいかなくても、
流用することが出来るかもしれない。
三題噺にして、もっと広げてもいい。

二つの動詞を含むようにする、とか変形してもよい。
そのへんのシチュエーションと組み合わせれば、
もう三題噺になるだろうしね。



ストーリーはどこから生まれるのだろうか?
たいていは最初のシチュエーションや、
世界観やキャラクターや、
テーマから生まれるんじゃないかな?

でもそこからは二幕の面白さって、
なかなか生まれないじゃない?
てことは、この中心的な動詞からつくると、
二幕からつくれることになるかもしれないわけだ。

こういう「二幕のネタ」をたくさん集めておいて、
シチュエーションやキャラクターを、
以前のストックと組み合わせてみると、
ただのショートストーリーや三題噺ではなくて、
ちゃんとしたストーリーにまとまるかも知れないんだよね。

そういう風に、ストックは使っていく。
そうだ、二幕のネタがあんまりないなあ、
なんてことを思うならば、
動詞から考えるストーリーというメソッドはおすすめ。
posted by おおおかとしひこ at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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