2022年12月16日

コール&アンサー

音楽ライブのコール&レスポンスの真似をして、
とりあえずコール&アンサーと名付けてみる。
タイトルとラストシーンの関係だ。


タイトルは引きである。
こういうものが期待できるぞ、
という呼びかけであるべきだ。
あるいは謎かけでも良い。
なんだかミステリーチックな感じで、
それがどういうことなのか知りたくなるような、
そういうものでも良い。

とにかく、
タイトルというのは、作者によるコールである。
観客へのコールというよりは、
ラストシーンへのコールといってもよい。

レスポンスするのは観客ではなく、
ラストシーンだ。
タイトルのコールに対して、
アンサーとして、
こういう結論を出すぞ、
という風にラストシーンはあるべきだ、
という話。


あるプロットが出来たとしようか。
まだ完全体ではないし、
長編になるかもわからないが、
まあ、なんとなく出来た気がする。
そういうプロットを考え付いたときに、
タイトルを決められるだろうか?
という話。

適切なタイトルになっているか?
というチェックに、
コール&アンサーが成立しているか、
ということを考えるとよい。

そのつけたタイトルに対して、
ラストシーンが答えているか?
をチェックするといいわけだ。

そもそもタイトルがコールしていないのは、
なにもやりようがない。
何かしらの呼びをやるべきだ。
呼びというのはつまり答えを求める何かである。

僕はよく「記号だけのタイトルはやめろ」という。
たとえば「es」とか「THX-1138」とか「ガタカ」だ。
それだけではなんのことかよくわからないものが、
劇中の何かの名詞だったりするのはよくわかるし、
謎めいたタイトルであることは分るが、
ラストシーンはどれもこれに答えていない映画群である。
つまり、タイトルがラストシーンの伏線になっていないのだ。

我々が最初にその物語に触れる、
ファーストコンタクトポイントは、
ファーストシーンではない。
タイトルである。
それが何もコールしていないなら、
観客は呼ばれないのだと僕は思う。
観客を呼びつつ、
こんなに面白そうですよ、
と誘いつつ、
最後にそれがラストシーンの伏線であったと、
種明かしするべきが、
いいタイトルだ。

「君の名は。」は、
ラストにタイトルが叫ばれるが、
タイトルに対してアンサーとして答えているわけではない。
タイトルコールすることで、
伏線を回収した気になっているだけだ。
つまり、テーマではないからだ。
あのストーリーのテーマはなんだろうね。
それもよくわからない。
時を超えたラブストーリーで、助けにいくこと、
と仮にした場合、
「君の名は。」とそのことと関係ないことになってしまう。

つまり、ラストシーンで決まるアンサーとは、
テーマのことだ。
タイトルは呼びかけである。
その答えがテーマになっているべきだ、という話である。


今いくつかの話をつくっているのだが、
それが「出来た」と思う瞬間は、
問題が劇的に解決した瞬間ではなく、
ラストシーンが決まり、テーマが定着したときに、
いいタイトルが出来るか、だと感じている。
そのいいタイトルの条件が、
ラストシーンでアンサーできるような、
コールになっているか、ということなんだよね。
前振りでもいいし、
全体をまとめる感じでもいい。
伏線として機能していても構わない。

いいタイトルというのは、
もちろん見ていない状態で引きが強い、
ということもあるが、
見終えたときに、
うまくタイトルが振ったことに対して、
ラストシーンがアンサーになっているか、
という構造があるかないかだと思う。
もちろん、構造があるうえで、
その出来の良さを競っていると思う。

「トップガンマーヴェリック」はいいタイトルではない。
ヒーローネームだけで期待をあおっているが、
それがテーマに落ちているわけではない。
男同士のわだかまりの解消というメインプロットのアンサーに対して、
タイトルが前振りになっていないからだ。
まったくいいタイトルではないが、
「トップガン〜世代を超えた友情」
だったら、コールになっているということだ。
あとは、この関係が成立するように、
もっと期待できて、かっちょいいタイトルにするべきだ、
という話だ。
まず、その構造があるか、が第一関門で、
それが適格か、ぐっとくるか、
というのが第二喚問というわけだね。

「es」とか「THX-1138」は、
なんだか面白そうという記号ではあるが、
だからといってラストシーンに対して何もしていない。
だからタイトルとしては適切ではない。
ただ「謎めいたタイトルは売れる」という法則でつくられて、
内容よりは稼いでいる、タイトル詐欺の可能性もなくもない程度だ。
つまり、本編より大きく見せる、
ハッタリタイトルなわけだね。

ただしいタイトルをつけよう。
キャッチーで、
新しい感覚で、
引きが強くて、
なんだろうこれは、と全貌を知りたくなり、
あとあと語り継がれるほどその作品のイコンになっている文句で、
ラストシーンへのコールになっていて、
テーマがアンサーになっているタイプのものだ。

そんな難しい条件を出されても、
と戸惑うだろうが、
いいタイトルとは、そういうものだと思うよ。

タイトルが出来た、
そしてラストシーンとの呼応がうまくいっている。
しかも事件から解決、ラストシーンまでの(少なくとも)一本線がうまくいっている。
そこまでできて、
「話が出来た」と言えると思う。

タイトルはもっとも客観的な、
外側のラベルである。
そのラベルがうまくできていないと、
そのストーリーは他人にとってどういうものか、
ポジショニングが出来ていないと僕は思う。
すなわち、客観的になっていないのだと。
posted by おおおかとしひこ at 01:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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