今僕が執心しているもろもろの高級な打鍵感への改造は、
いったい何が目的なのだろうか。
単なる自己満足ではないことをやっていると考えている。
それは何かというと、
「打鍵の解像度を上げる」ということだ。
打鍵の解像度を上げるということはどういうことかでいうと、
「より精密な指の感覚が、
フィードバックでわかるようになること」といえるか。
今指がどこにいるのか、どれくらいの力で、
どれくらいの速度で打っているのか、
どこに力がかかって、今スイッチはどのへんにいるのか、
という感覚を、より触れながらわかるようにしたい、
という欲望だと思っている。
底打ちが、単なるpearlioのものではなく、
下に真鍮を敷くことで、
打鍵の感覚が鋭くなってくることが分かった。
石を下に敷いているような感覚で、
こつんと叩いたときに、どれくらい強く叩いたか、
どこまでおしこんで叩いたか、
みたいなことが感覚で検知できるようになるんだよね。
ということは、アクチュエーションをどれくらい過ぎて、
どれくらいオーバーランして底打ちしたか、
という感覚が、触覚で分かりやすくなっているということだ。
プラスチックであるキースイッチの底だと、
マイルドすぎて、
正確に感じ取れない。
ところが真鍮にすることで、
その感覚が分るようになるんだよね。
そこが面白い。
現在まだレシピが固定できていないが、
トップハウジングのセミサイレント化も、
色々な素材で試している。
結局、柔らかくすると感覚が鈍くなって、
固くすると感覚が鋭くなるが、
柔らかいほうが静音化できて、
固いほうが静音化できない、
というトレードオフと闘っている。
あるいは、バネの感覚も同様で、
3ステージは感触が柔らかいが、
2ステージは感触が固い感覚がある。
じゃあ2ステージがいいかというと、
軽くすることが不安定なバネ切しかないので、
3ステージのやわやわな感覚のまま、
どうにか2ステージ的な鋭い感覚にできないかを、
今実験中。
(まとまったらまとめます)
で、なにに取り憑かれているのかなあ、
と自分の感覚を見ていると、
「なるべく精度よく自分の指の感覚を得たい」
というところに尽きるのではないかと思ったんだよね。
ペンで字を書いたり、
筆で絵を描くときはそうだ。
僕はいまだにペンなら1ミリに4〜5本の線を引けるけど、
それは「今どこにいるか」という感覚が鋭敏じゃないと出来ないことだ。
字を書くときにその感覚を使っていないかどうかはわからない。
そんなに精度のよい字を書いている感覚はない。
しかし、
「ここでなければならない」というときには、
たぶんその精度で書いていると思う。
ひょっとしたら、物理的な字よりも、
「言葉」の選び方かもしれない。
とにかく、
文字を書くという手の感覚は、
それくらい敏感だということ。
だから、
それに直接触れているはずの、
キーボードの精度が、
それに追い付いていないなんて意味が分らない、
と僕は思ってしまう。
つまり、ほとんどのキーボードは、
感覚的にぼんやりしすぎだと思っている。
HHKBやリアルフォースのキースイッチとキーキャップによる打鍵感は、
凡百の精度よりも細かく、
最初打ったときは感動したものだ。
でも僕の感覚はそれより鋭敏で、
もっと繊細なのだと思う。
だから、自作キーボードでしかできない、
鋭敏な感覚のキーボードにしたいのだと考えている。
たとえば、
静音スイッチは僕はだめなんだよね。
思想はとても好きなんだけど、
ステムのゴム部分が、
横のレールにこすれる感覚が、
もうだめなんだよね。
「音が気になる」という人はいるんだけど、
僕は触覚が気になる。
こすれていることで、場所や速度の感覚が、
鈍るからだね。
でもほとんどの人はその感覚を感じていないらしい。
ということは、
その粒度の手のセンサーしか持っていないのだと思う。
センサーの優劣が文章の優劣とは限らないが、
センサーの敏感な人に、
鈍い道具を渡すことは、それこそ鈍いと思うのさ。
鈍感な人に繊細な道具を渡しても、壊されるだろうね。
つまり、
感覚と道具の粒度があっていないと、
悲劇が起こると思われる。
今物理の話をしているが、
論理でも同じことだと思っている。
「これをこうしたらこうなる」という部分が、手の動きとの連動だから、
同じことだと思うがね。
これまで親指キーだけは、シリコンシートを中敷きにしていて打鍵力を吸収してきたが、
これが打鍵感覚の精度を下げているのでは?
と思い直し、
真鍮を叩く方式に変えている。
こうすると、シフトの感覚がより鋭敏になり、
無駄な力の入り方が減っているような気がするんだよね。
だからこそ、角度が気になり始めたのかもしれないが。
結局、手の感覚の粒度にあう道具を、
自分はつくっているのだな、
という気がしてきた。
そうそう、はじめてiPadとペンを触ったとき、
僕の感覚よりも精度が低かったんだよね。
これならまだペンタブのほうがいいか、
って判断して、購入を見送った。
最新バージョンはしらないが、
たぶん精度は上がったと予測するが。
つまり、自分の扱う粒度にたいして、
荒い道具に、僕はむかつき続けてきたのかもしれない。
2022年12月13日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック