2022年12月30日

一本の話は複数の話から出来ている

1分とか5分のショートはおいといて、
普通の長い話の場合。


長い話を書くのはたいへんだ。
どう考えればいいかわからない。
自然に出来る部分もあるけど、
なんか全体的には虫食いで、
足りない感じがする。

そういうとき、
「全部を一本の筋を通す」と考えるから、
難しくなるのでは、という話。

一本の話は、
複数の話のより合わせで出来ている、
と考えると構造がわかりやすくなる。


たとえばそれぞれの抱えている事情だ。
ヒロインが抱えている事情ややりたいことがあり、
主人公が抱えている事情ややりたいことがある。
それらが合致すれば二人はつきあう、
みたいなことだ。

その後の交際の成功で、
お互いの目論みは着々とすすむ。
つまり、2本の話が同時進行するわけだ。
なんらかのトラブルにより、
一方のストーリーが停滞して、
これ以上そっちのストーリーを進められない、
とわかったら、別れを選択することもあろう。

男女で例えたが、人付き合いというのはこうした面がある。
好き嫌いだけでない、利害関係的なものだ。

これは側から見ると一本の話に見えるが、
2本の話の寄合わせとみることもできる。

つまり、
この一本の話をつくるときは、
2本の話をつくって合成すれば良い。

ただし、なんでもかんでも2本が合うとは限らないので、
アレンジして微調整する必要もあるだろう。

エクササイズとしては、
事情や目的を10本ずつ書き、
そのうちランダムで2本を選び、
そうした男女のラブストーリーを書く、
というトレーニングを考えられるよね。

なるべく事情が違う方が面白いだろうね。
こんなに違う二人が付き合うの?って面白いからね。

で、あとでそれに、好きとか嫌いとか外見とか内面の、
ガワを被せれば、おおむね面白いラブストーリーになるんじゃない?


今、登場人物一人に対して一本の話にしたが、
一人で二つ抱えている場合もある。
恋と仕事は典型的なパターンだ。
かけもちは、コンプレックス化(話の複雑化)をする、
基本ですらある。

部活を二つでもいいし、三角関係でもいいし、
会社と家でもいいし、趣味と仕事でもいいよね。
5人くらい愛人を抱えていてもいい。

また、
「この仕事の成功は、社内の立場と関係ある」みたいな、
一つのことでも複数の文脈を持っていることもある。
単なる一プロジェクトの成功ではなく、
成功の仕方で今後の社内の立場が変わってくる、
みたいなことはよくあることだ。

これは、一つのラインでありながら、
2つの話がよりあっていることになるわけ。



つまり、
一本の大きな話を書こうとするから、
うまくいかない。
一本の大きな話は、複数の話がよりあったものである。
直列繋ぎではなく、並列繋ぎなのだ。

ただ、うまく接点を作って、絡ませていかないと、
ただの独立した話が複数同時進行しているだけになり、
じゃあバラバラに見せろやとなってしまう。
これらがうまく絡んでいくから、
もうそれは(分離できない)一本の話になるわけ。


そのエクササイズは上に示した。
男女の例だけではなく、
「俺と組もうぜ」という男同士の話でも、
作れるかもしれないね。

複数の話がよりあうには、
その話たちに共通点が必要で、
その部分がメインプロットになる。

家族に会いにいくために軍隊を脱走した軍人と、
自分の放射能説を証明したい科学者は、
ゴジラの出現で共闘するはずだよね。

このような関係をつくることが、
うまいよりあわせをつくることである。


メインプロット(この場合ゴジラ)
から逆算して部分を作ってもいいし、
部分をよりあわせて、全体の統合(ゴジラ)を思いついても良い。
でも後者はウルトラCになりがちだから、
前者のほうがやりやすいとは思う。


ストーリーは一本線ではない。
複数の糸のよりあわせ。
そう考えるとこれまでと視点が変えられる。
posted by おおおかとしひこ at 00:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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