ローマ字入力は効率が悪い、
カナ配列をやろう、というのはよく聞く合理的効率論だ。
でもJISカナ(日本語キーボードに印字がある、
キーボード全面を使って入力する配列)
を使うのはお勧めしない。どころか止める。
僕は配置が合理的とは全く思えないからだ。
一方、「合理的なカナ配列」というものがある。
どんな合理かを俯瞰しよう。
「ローマ字は効率が悪い」というのは、
子音+母音の2打を使うからだ。
統計による(ア行は1打だし拗音は3打なので、
打鍵数×出現頻度で出す)と、
「1カナを出すために必要な打鍵数」は、
ローマ字の場合1.7である。
これ打鍵効率とよぶ。
「ひとつの文字」を出すのに1.7は、ちょっと多いと僕は思う。
ローマ字よりもフリックのほうが楽なのは、
子音+母音の2打の代わりに、
スッと「一動作」で線を引いてるからだ。
つまりフリックは、
1打を「線を引く」まで含めれば打鍵効率は1。
これは極論だ。
仮に1.2と考えると、
フリックの打鍵効率は1.2である。
1.3でも1.5でもよい。僕の感覚的には1.5打より少ないね。
僕はフリックのほうが、
qwertyローマ字よりも合理的だと思っている。
打鍵効率の良さがひとつ。
動線の少なさが、もうひとつ。
フリックはqwertyに比べて指が暴れない。
狭い範囲で小さく動く。
qwertyは指があっちこっちに行くし、
あっちへ行ったと思ったら戻ってくる。
このバタバタを積分したら、
大変なエネルギーになってしまう。
qwertyはだから、
手数も多いし動き回る、
仕事のできないやつの仕事の仕方だ。
さて、カナ配列である。
JISカナは効率が悪い。
4段ブラインドタッチはしんどい。
4段どころか、右手小指は標準運指の4キーに加えて、
+7キー、計11キー担当して負担が大きい。
ちなみに打鍵効率は1.2だ。
一見1カナ1打に見えるのだが、
句読点を出すのに「シフトを押しながら」があり、
このシフトを数えている。
句読点、っ、を、ゃゅょ、ぁぃぅぇぉなどは、
シフトが必要だね。特に句読点がよく使うので、
これで打鍵効率を落としている。
僕は「カナ配列にしようぜ」というときに、
JISカナをお勧めしない。
効率が悪いからだ。
だったらフリックのほうがいいと思う。
なんでかというと、
打鍵効率が同程度で、
フリックのほうが動線がごちゃごちゃしてないからだ。
打鍵効率だけでなく、
動線効率を僕は重視している。
打鍵効率は簡単な割り算で可能だけど、
動線効率は計算で求められない。
イメージは、
「典型的な日本語100万字を書く時に、
指が動く動作の軌跡の積分値、
及びその指バランス」
のような感じ。
さて本題だ。
カナ配列にしようぜ、
と僕がすすめるのは、
新配列のうちの、カナ配列である。
お勧め順はなかなか難しいが、
薙刀式、新JIS、月配列、新下駄、飛鳥、シン蜂蜜小梅、
あたりかな。
打鍵効率はどれも1.2-1.3あたりで、
動線効率がとてもよいのが、
おすすめの理由だ。
指がスムーズに繋がるように、
よく使う言葉を優先して、
あまり使わない言葉を逆に繋がりの悪い運指に当てている。
だから統計的に、仕事量が少ない。
また、
JISカナのような広範囲かつ無茶な指使いを減らしている。
指バランスがとてもよい。
JISカナは、ブラインドタッチで使う前提ではなかった。
逆にカナ系新配列は、
ブラインドタッチでカナを打つための配列群である。
ブラインドタッチで打つには、
どういう効率がいいか?は、
カナ配列に関しては、
民間開発の新配列が生まれるまで、
研究されていなかったとすら言って良い。
どのカナ系新配列も、
標準運指の三段、30キーと少しにカナを収めている。
カナは50音あるのに?
そこで「シフト」という考え方が出てくる。
カナ系新配列では、
30キーをそのまま打つと一つのカナが出る。
これを単打カナという。
そしてシフトキーを押しながら30キーを押すと、
別のカナが出る。
これをシフトカナとよぶ。
単打カナをメジャーでよく使うものにして、
シフトカナをマイナーなものに当てること。
そしてよく使う言葉を指の流れを良くすること。
これがカナ系新配列の、
基礎になるアイデアだ。
あとは、どのカナをどこに置くか、
シフトキーをどのキーにするか、
またシフトの仕方(前置なのか同時なのかなど)の違いで、
各配列のコンセプトが変わる。
キーを打つ時に親指が遊んでるから、
親指のキーをシフトキーにしたらシフトしやすいのでは?
と考えるのが、
「親指によるシフト」派閥だ(多数派)。
一方、親指部分は各キーボードで違うし、
変換や候補選択などの制御に使うから、
文字キー領域にシフトキーを置こう、
そのほうが運指しやすいでしょ、
と考えるのが、
「文字領域シフト」派閥だ(少数派)。
ついでに、
親指も文字領域も、使いやすいのを使ってミックスしよう、
というのが「ミックスシフト」派閥だ(あんまりいない)。
親指によるシフト派閥: 親指シフト、飛鳥、新JIS
文字領域シフト派閥: 月配列、新下駄
ミックスシフト派閥: 薙刀式、シン蜂蜜小梅
のように分かれている。
シフトキーは一つの場合(30×単打とシフト=60定義)もあるし、
二つの場合(30×単打とシフト2=90定義)もある。
次に、シフトの形式による違いを見てみよう。
ふつうのシフトキーのように、
シフトキーを先に押し、
押しっぱなしの状態のまま、別のキーを押すとシフトがかかるものを、
【通常シフト方式】と呼ぶ。
分かりやすいし、
押しっぱなしでさらに別のキーにもシフトがかけられる(連続シフト)。
ただし高速打鍵では、離しのタイミングが難しいと言われる。
【同時打鍵方式】は、
シフトキーとそのキーが前後ずれてもシフトと認識するので、
高速打鍵時に有利だ。
離しは関係ないので、押すだけに集中できる利点がある。
都度都度シフトを同時打鍵するものが多いが、
同時打鍵かつ押しっぱなしで連続シフトに対応する、
飛鳥のような方式もある。
これは通常シフトと同様、
扱いやすいが離しのタイミングが高速打鍵で難しい。
【前置シフト】は、
シフトキーを押したあと、
1キーだけシフトがかかる方式。
離しても離さなくてもどちらでもよいのが利点で、
つまりシフトキーからロールオーバーできる。
それをしやすいDKがシフトキーになることが多い。
便利だけど、シフト専用キーになるため、
そこに文字が置けない欠点がある。
これらの、
シフトキーがどこにあるか、
それがどのような形式かで、
マトリックスをつくれる。
通常シフト 同時 同時連続 前置シフト
親指2キー 親指シフト 飛鳥
シン蜂蜜小梅
親指1キー 新JIS
薙刀式
文字領域 新下駄 月配列
シン蜂蜜小梅
薙刀式
Shift JISカナ
ミックス派閥は複数の箇所に登場させた。
カナ配列は、大体このマトリックスの中におさまると思う。
それは、
手をどのように利用してどうシフトするか、
という感覚の違いになってくる。
それは「好み」で選べばいいんじゃないかなあ。
(ためしにいくつか触ってみて、感触のいいやつを深くやると、
好みがわかると思われる)
そもそも30より多いカナを、
シフトによってレイヤーに積んだカナ配列たち。
どのようにしてレイヤー分けするか、
レイヤーにどうやって到達するかで、
それぞれ個性が異なる。
たぶん正解はなくて、
個人の手の感覚の違いで、最適なものが変わると思う。
一つのシフト方式のほうがスッキリする人もいれば、
マルチ方式でも使える人もいる。
同時シフトが人気だが、同時が苦手な人もいる。
連続シフトが好きな人もいれば、
離しのタイミングが難しいから、
逐次打ち切りのタイプを好む人もいる。
それは、ある程度やってみないとわからない。
自作キーボードでは、
親指クラスタといって、
親指に機能キー(カーソル、エンター、BS、
シフト、ctrl、などなど)を集めるやり方が、
浸透し始めてきている。
これも一旦慣れたら手放したくない合理性だ。
この感覚が、カナ系新配列にとても近いんだよね。
どちらも共通するのは、
「ブラインドタッチ可能範囲30キーに、
30×nキーをレイヤーに積む」
という考え方。
子音+母音のような、
数打で一文字という考え方ではなく、
一つのキーに一つの文字が対応しているように考えるカナ配列は、
脳の中の考えと直結しやすいとよく言われる。
僕もそう思う。
だからたくさん書く人、
脳と手と文章を直結させたい人は、
カナ系新配列を使うといい。
そして僕的には薙刀式はいいぞ、
ということで本日の新配列の日とさせていただく。
カナ系新配列だけに限らず、
新配列は漢直や行段系など色々ある。
新配列の日は、新配列の良いところを語ろう。
2022年12月15日
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一日遅れてしまいましたが、かむ配列の説明の2022年バージョンが出来ましたので、紹介させて下さい。
https://kamu.mochachi.com/kamu2022/kamu2022.htm
説明文は、ほぼかむキーボードで書きました。
子音を右手にしてしばらく使っていたのですが、大岡さんの記事で子音を左手に戻す事にしました。戻したら、結構速く打てるようになりました。
よろしくお願いいたします。
qmkキーボード上での実装例は動画を拝見しましたが、
この図にあるような、プロポ型の物体は作られているんでしょうか。
いずれ3Dプリンタでつくるのだとしたら、
なかなかワクワクする話ですね。