ZealPC Pearlioは最高のエンドゲームスイッチのひとつだ。
これをセミサイレント
(底打ちの気持ちよさはそのままで、戻りの部分だけ静音化)
化したい。
それに成功したので、
そのレシピ、ミルフィーユサイレントMODを書いておく。
なぜPearlioかはこれまでも散々書いている。
摩擦係数が異常に少ない、
しかし造形精度が悪くて高価になってしまう、
ウムピエ素材を100%配合の、
ウムピエステムを使っているからである。
他にもウムピエステムを名乗るスイッチはいくつかあるが、
造形を安定させるために混ぜ物を入れているらしい。
形は安定して歩留まりがよく精度はあがるが、
そのかわり摩擦係数が上がってしまう。
このへんはイタチゴッコだね。
Pearlioは一個330円の、現時点で最高額のスイッチ。
Gateron Redが49.5円なのを考えると、いかに高いか。
でも現状、これを超える滑らかなスイッチはない。
なぜ滑らかなのがいいかというと、
「自分の意思に対してノイズがない」からだと思う。
澄んだ打鍵こそが、
もっとも道具を扱ってて、
精度良く扱えるものではないか。
で、底打ちに関しては、
スイッチ下とボトムプレートの間に真鍮の塊を挟むことで、
とても澄んだ感覚になることがわかった。
こうなると、戻り音のカチャカチャが、
すごく気になってくるんだよね。
セミサイレント化の目的はつまり、
戻りを静音化して、底打ちのみの打鍵感になるような、
澄んだスイッチにすることである。
つまり、「おれと底打ちしか今世の中にいない」
という感覚を作るためにある。
【レシピ】
用意するもの
・シリコンシート0.5mm厚
・シリコン接着剤
(カワグチシリコンゴム用ボンド:
https://www.monotaro.com/p/5814/8152/?utm_id=g_pla&utm_medium=cpc&utm_source=google&utm_campaign=246-833-4061_6466659573_shopping&utm_content=77481174876&utm_term=_380604224319_x_pla-876575642827&gbraid=0AAAAADNqOHBa_44gJxWPHlXc7Z7l7hz2Z&gclid=CjwKCAiAheacBhB8EiwAItVO202KVDM-7ESQyT2J8eZR9W0cEVXsi8Sgwd7WVkZSgjs32wuAYdY-LRoC9YkQAvD_BwE
)
・ダクトテープ
工具
・カッターマット、カッター
・ピンセット、つまようじ
・ティッシュやキムワイプ
【目標】
トップハウジングの、ステムの両肩が当たる部分がある。
上下逆だけど、凹になってる部分。
ここの、へこんでいる所をシリコンシートで埋める。
□■□
□□□
のようなイメージ。
ちなみに■は、厚み0.5mm、幅0.5mm、長さ1.5mmだ。
かなり精密で根気のいる作業が待ってるぞ。
さらに、これをダクトテープで覆い、ミルフィーユ構造にする。
△△△
□■□
□□□
のようなイメージ。
△△△は、幅1mm、長さ2.5mmだ。
これを二箇所やって、ようやくスイッチ1個。
なぜミルフィーユがいいか、などについては、
作業工程解説後に。
【作業工程】
まずpearlioを分解して、モノの小ささを確認する。
ここの凹に二つ貼るのだ。たいへんだね。
シリコンシート0.5mm厚を、
幅0.5mm、長さ1.5mmに、カッターで切る。
大きかったらはみ出るので、キッチリやること。
そんな正確に出来るわけがないので、
沢山切って、いいやつを採用する方が現実的かな。
ちなみにこんな感じ。
右上のやつは失敗だね。幅が広すぎて、
ステムの通り道にはみ出して、摩擦になってしまうだろう。
つまようじの先と比べて、いかに小さいか実感されたい。
シリコン接着剤
(乾くとシリコンゴムのようにぷよぷよになる、
手芸用の接着剤)を、つまようじの先っちょに取る。
分量はこれくらいで二箇所分程度。
取りすぎたらティッシュなどで拭う。
ガムテをカッターマットの上に貼り、
そこに少量接着剤を出してつまようじですくうとやりやすい。
終わったらガムテごと剥がして捨てられるし。
この接着剤を凹の中に塗布。
この接着剤は糸を引きやすい。
右側は失敗している。
ステムの通り道にヒゲがはみ出している。
必ず裏からチェックして、このようなものがないように。
はみ出した分はつまようじの腹でぬぐえる。
ピンセットでシリコンシートをつかみ、凹の中へ貼り付ける。
掴み方にコツがある。
●をピンセットの先として、□をシート断面とすると、
●□●
のように掴まないこと。
ピンセットを離すことが難しくなる。
●
□●
のように、隣接した2面をピンセットでつまむとよい。
シリコンシートを所定の位置にセットしたあと、
「ピンセットを離す」がやりやすくなるからだ。
シリコンシートは自己粘着性があるし、
今凹の内側は接着剤でヌルヌルなので、
変にくっついたり、ピンセットにくっついたり、
変にくっついたまま滑ると面倒だからだ。
すっと所定の位置に置き、ピンセットが何物にも触れずに、
そっと離せるのが理想。
無意識に息を止めてやることになるので、
失敗したら大変イライラする。
酸素不足なのだと思って、必ず深呼吸してから復旧に挑もう。
酸素不足でイライラしながらやっても傷口が広がるだけだ。
シリコン接着剤が固まるには10分くらいかかる
(完全硬化は24時間)ので、
ゆっくり二箇所できればヨシとしよう。
ちなみに成功した状態。
最難関のミルフィーユ二層目だ。
二箇所鬼門があり、
所定の大きさに切ること、
一発で着床させること、
が難しい。
まずダクトテープをカッターマットに貼り、
幅1mm、長さ2.5mmに切る。
これが難しい。
ダクトテープの構造を考えるとわかる。
粘着側には糸が編んであり、
それが粘着物で固めてある構造だ。
糸方向に切ると、糸がはみ出たりする。
あるいは糸の垂直方向に切ると、
中途半端にしか切れてなくてこうなったりする。
これはNG。
糸が引っかかるだろう。
カッターマットにカッターの刃がめり込む程度に刃を入れること。
垂直に入れないとうまく切れない。
それでも歩留まりが悪い。
成功率40%くらいかな。
これをカッターですくい取り、
ピンセットでつかむ。
このつかみ方にもコツがあり、
裏から見て、
□□
□●
□□
□□
みたいに幅の半分だけピンセットで持つようにすると、
あとでピンセット離しがうまくいく。
ここから貼るのが最難関。
ダクトテープの粘着力が強すぎて、
シリコンごと破壊してしまうことがある。
これを防ぐために一回手の甲とかに貼って粘着力を弱めてから貼ると良い。
側面に貼り付けてはいけない。
ステムとトップハウジングに挟まれて、
最初の動きが固くなる。
前後にずれてもいけない。
はみ出したところが挟まれて以下同。
正確に貼るのにかなり神経を使う。
そもそも寸法がきちんと切れていなかったり、
粘着物が銀色の部分からはみ出していては、
どう貼ってもうまくいかないので注意。
綺麗にできた見本がこちら。
【バネ】
pearlioは63gのロングスプリングだけど、
僕はちょっと重いと思う。
こういうときはバネ交換したいが、
注意が必要だ。
pearlioはいわゆるCAPSハウジングといって、
ステムとボトムハウジングが、
いつものMXスイッチと違う構造をしている。
(Gateron Caps Yellowで初めて採用された形)
ボトムハウジング側にポールが立っていて、
ステム側に穴(円柱状の)があるという、
逆の構造になってるんだよね。
これが打鍵フィールを直接感じられる原因だと思う。
で、このステム部分はいつものステムよりやや太く、
直径の太いものでないとハマらない。
僕が確認したバネは以下の通り。
Tecsee 2 stage 37g
Wuque 3 stage WSTL530(を2ステージにバネ切りしたもの)
Sprit designs MX 35s
Sprit designs MX 30s
色々やった結果、最後のものがよかった。
ただ微妙にキツイので、
ステムに対して押し込みながら捻り、
底まで入ったことを確認すると良い。
またSprit designsのバネはきしみやすいので、
Kritox 205でバネルブしてある。
(本体はウムピエで滑らかなのでノールブ)
ミルフィーユ構造のせいで、
初動からアクチュエーションまでの距離が1mm近く縮み、
ロングスプリングと似た挙動になる。
したがって、スペックより初動を重く感じる傾向があることに注意。
なので手持ちの一番軽いやつが気持ちよかった。
(追記
人差し指と中指は35sにした。30sだと底打ちのダメージがあるため。
これもバネルブすると軋みが取れて、
純粋なリニア感覚になる)
【解説: なぜ二層構造か?】
とくに理論立てて考えたわけではなくて、
試行錯誤の末にたどりついた感じ。
貼り付ける物体は、
シリコン接着剤のみ、スーパーX、木工ボンド、
シリコンシート、マスキングテープ1〜4枚重ね、
サージカルテープ1〜4枚重ね、
ダクトテープ1〜2枚重ね、
などを試した。
その中でわかったことは、
「柔らかいものほど静音力が高いが、
粘着してしまい、初動にニチャっとする」
「硬いものほどステムの離れはよくスムーズだが、
戻った時の静音性は効果が薄く、コトコトいう」
ということであった。
中でもダクトテープは、
粘着性のある柔らかい部分と、
表面(銀のほう)がツルツルという二面性がよかった。
だけど一枚だとダクトテープ自体が凹型に変形してしまい、
ステムの肩がポコっとハマってしまい、
初動の離れが鈍くなる。
二枚重ねは工作難易度が高すぎるし、
側面にはみ出した粘着物が、ステムに擦れる弊害もある。
ということで、ダクトテープ一枚の下に、
何か敷けばよいのでは?
ということに気づく。
これ以前は、
シリコン接着剤をただ塗布するだけにしていた。
ところが量が不安定だからバラツキがあり、
しかも柔らかいのでニチニチする、
という欠点があった。
なので、シリコンシートで厚みを統一して柔らかい物体として、
その上にダクトテープという二層のミルフィーユを思いついた次第。
耐久性は分からないが、
まあしばらくは持つだろう。
直射日光にさらさなければ、
ガム部分の劣化もそれほどあるまい。
ということで、
めっちゃイライラする工作ですが、
おすすめです。
これやるくらいだったら、
ふつうのスイッチをルブしてればいいのかもね。
でもpearlioを知ってしまったからには、
戻れないんだよなあ…
ということで、
この世に俺と底打ちしかいない、
純な状況をつくれます。
静音スイッチのゴム擦れ感もなく、
スムーススイッチのステム擦れ感もなく、
タクタイル感のよつな底打ち暴れもなく、
戻りのビビり感もなく、
バネビビりによる押し込み挙動の不安定感もなく、
底打ちのプラスチック感もなく、
ただ純粋に指が真鍮に触る感覚が味わえます。
2022年12月16日
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