ストーリーとは事件の解決である。
なぜそれを解決しようと思うのだろうか?
大変だからか? それをやらないといけないからか?
それをすることが正義だからだろうか?
色々な理由はあると思う。
僕は、その事件を解決せざるをえない、
「事情」をつくればいいと思っている。
たとえば、
宇宙人の侵略があったとしよう。
それに対抗して、戦争を起こして兵隊になることは、
正義だけど、今の人がやる勇気があるかな?
たぶんないと思う。
正義は正義だろうし、
このまま放っておくと宇宙人に侵略されてしまうから、
闘わないといけないのだが、
もし前線に出ない理由があれば、
それを選択してしまうのではないかな。
そういうときに、
「はい! 戦います!」というキャラには、
感情移入が難しいということだ。
もちろん、正義感が強く、
自己犠牲精神に富んでいるキャラクターだったとしても、
「うーん、その人はするかもしれないが、
俺はやらないな」と思った段階で、
感情移入は途切れるんだよね。
「いや、俺がこの人だったとしたら、
そうするだろう」と思わないかぎり、
感情移入というのはうまくいかない。
それをうまくする方法が、「事情」だと思うのだ。
つまり、その人は何かしらの事情を抱えており、
それを解消するために、
その事件に関与して解決に行動する、
のようにすればよい。
たとえば。
中学生が主人公で、
ずっと好きだったヒロインがいて、
彼女に告白しようとしたその朝、
彼女が宇宙人にさらわれたとしよう。
だとしたら、彼に闘う理由が出来る。
兵隊に志願して、戦闘機に乗り、
真っ先に敵陣に侵入する役を買って出ることの意味が分るわけだ。
そのうえで、彼女のつかまっている場所がわかり、
作戦を無視して暴走する、
というようなサブストーリーへ発展することもあろう。
事件とはこの場合宇宙人侵略で、
事情とは彼女を取り戻すことだ。
これは連関していてもいいし、
まったく関係ないことでもよい。
この場合は関係している。
関係ない場合では、
たとえば借金がとてつもなく膨れ上がり、
もう死ぬしかない男が、
兵隊に志願すると金がもらえることがわかって応募する、
というような事情を創作することができる。
よくあるやつだけど、
その金を何に使いたいのか、
などに共感できる理由があると、
感情移入はうまく進む場合があるわけだね。
単に遊ぶ金欲しさでは感情移入できないが、
離婚した女に親権があるために、
娘と会えない。
十分な金があれば、娘と暮らせる、
みたいな感じだ。
「それならばしょうがない」と誰もが思うことを創作することで、
「その事情ならばその事件に出会えば、
そのように行動するだろう」
と思わせることが、感情移入の入口なのだ。
キャラクターを好きにならせたり
(外見や特殊能力やセリフなどで)、
スピード感で巻きこんだり、
あるあるで距離感を詰めたりすることは、
感情移入にはあまり寄与しない。
感情移入したあとに、好きになることには寄与するが、
感情移入そのものには関係がない。
感情移入とは、自分とは関係ないんだけど、
自分がその人と同じ立場だったら、
そう行動するだろう、
と思うことで生まれると僕は考えている。
だから、事件と事情なのだ。
事件解決をする動機はなんだろう?
それをしなければならないとか、
正義だったりしても、
いまいち感情移入とは関係がないと思う。
それが、その人なりの事情があって、
それはしょうがない、そうするのはわかる、
となったときに感情移入がはじまり、
彼または彼女の、事件解決を望むようになるのだ。
だから、事件と事情は、まったく関係なくても構わない。
事情を抱えた主人公が、
事件解決を動機になるようにするだけでよい。
言葉を変えると、
事件解決は公のストーリー、
事情の解消は私のストーリーである。
このふたつのストーリーが重なっていないと、
主人公は大きなことをしないだろう。
私的な何かを解決するだけで終わってしまうから、
とても小さな話しか書けないと思うよ。
たとえ公的には地球を救う偉大なる話であったとしても、
個人的にはトイレに行きたかっただけかもしれないのだ。
その、事件と事情のペアこそが、
そのストーリーのメインを決める。
容易に想像できるように、
これは主人公だけでなく、
サブの登場人物にも応用できる。
彼または彼女の事情がそれなりにあり、
事件解決(もしくは敵対)は、
その事情で行われているとわかると、
人間同士のもつれあいになるだろう。
それがストーリーである。
2023年01月08日
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