2022年12月18日

3時間越えは長すぎ(「アバター2」評)

大枠は南の島のモアバトル版といったところか。

家族の戦いと成長を真正面から描いてて、
近年珍しい子沢山ものになっていた。
たとえて言うなら大草原の小さな家的な。

CGは凄まじいの一言に尽きる。鯨がすごかった。
このゲームやりてえと思える出来。
アーマードコア実写版見てえなあって思っちゃう。

それとストーリーとの関連について。
以下ネタバレ。


キャメロンの作る話って、
実は毎回浅いんだよね。
今回の作戦も結局頭使ってなくて肉弾だし、
自然と戯れてバトルしてるだけだし。

だけど根源的な何かだから強いは強い。
でもなんか浅い、
というジレンマがあるように思う。

それをキャメロンは、
毎度毎度技術革新で誤魔化してきた感じがする。

アビスでは透明CGで。
T2は金属CGで。
エイリアン2はパワードスーツで。
タイタニックは大仕掛けとCGの進化で。
アリータはフルCGと、漫画的なCGで。
アバターでは3Dで。

毎度毎度度肝を抜かれるんだけど、
その度肝がないと仮定すると、
「その単純な話にその尺は長くない?」
って毎回思ってしまう。

ターミネーター1だけが例外で、
あれはストーリーが面白かった。
でも特別編の長いやつはやっぱり冗長で。

たぶんキャメロンって90分の映画とか出来ないんじゃない?

単純な話を、技術的に新しい手法でびっくりさせて、
両方楽しませる作家、といえるかもね。


結局アフリカのどこかの部族と白人がミートする話から、
全然変わってないと思うんだよね今回の話。

そして、
キャメロンの集大成的な演出が随所に見られた。

敵の造形はすばらしく、
T2000に背景設定が加わったようなキャラだ。
そして基本「そいつに追っかけられる」しか主軸がない。

子供たちの成長譚は面白かったが、
兄貴に一個いいところ欲しかったな。
魚とった場面だけじゃ弱くて、
現在の兄貴のドラマがあれば、
もっと死が辛かったと思う。
(たとえばやんちゃな弟を庇うために、毎回我慢してるとかね。
長男あるあるだ)

鉄と炎の感じはT2だったし、
おいおい転覆沈没水流入はタイタニックやんけと思ったり、
パワードスーツはエイリアン2だしなあ。

海の世界の全体は面白かったけど、
実はニモあたりから進化してないと感じた。
いや見比べれば全然違うんだけど、
ニモから新しい要素がほとんどないと思えた。
外洋に出て危険に晒されるのも、
他の何かで見た記憶がある。


脚本的に良いところは、
ラストバトルのパズルのような段取りくらいかな。
各キャラの良いところを全部使う感じがよかったね。

これ壮大な三部作(234)の一本め、
という事前情報がなかったら、
あの敵はなんやってん、で終わりそう。

スパイダーが助けるのは新しいパターンで良かったけど、
なくても成立したと感じる。
ここで敵を殺したら3と4やることなくなるしな、
とちょっと冷めちゃったね。

母鯨を捕まえるために子供を使うのが、
ナウシカっぽかったなあ。
でもそれと、敵親子を絡めきれなかったのが残念。



アバター1よりは面白かったのかもと思うものの、
なんか既視感あるものだらけで、
ひとつも新しい部分がなくてがっかりだ。
全部どこかのゲームで見たような感じだった。

CGも限界に来てて、
全く新しいのはできなくて、
何かしらレファレンスがあるんだろう。
既視感の正体はそれだと思う。


つまり、
これだけの技術と人的資源を投資しても
(とくにラストの夕日に鯨が飛ぶのは凄い絵だと思ったよ)、
もう「新しい映画」ってつくれないのでは?
と、
映画の限界がちょっと見えちゃった気がしたんだよね。

トップガン2も凄かったけど、
でもこれまでの映画技術の延長上にあって、
新しい絵なんだけど別に新しい絵じゃなかった。
ただしグースの息子の和解の部分と、
アイスマンのシーンがあまりにも良かったので、
ここで映画の面目を立てた気がする。

それに比べるとこの映画は、
すべてが既視感のあるものの組み合わせで、
それがアップデートされただけ、
という差がある。


新しいことをやる、とは、
ガワだけではなく、
中身のこともである。

どこかの漫画やアニメやゲームで見たものの組み合わせに見えてしまった。
シナリオもだ。

34はマトリックスのようにグダらないかな。
今から心配だ。



さて、今回も宣伝部くそだと言っておくか。

せめてこの物語の一番いいところを宣伝しなさいよ。
「家族は一番弱くて、一番強い。」
をキャッチコピーにするだけで十分だと思う。

「奪われるのは、目か、心か。」ってなんやねん。
下手くそすぎる。
ほんとに映画見て決めてんのかレベル。
20世紀フォックスの本国の人、さっさとこの日本人をクビにしろ。
posted by おおおかとしひこ at 02:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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