綾木さんのコメントによって、
僕の知らない大昔の日本語入力法、
DOS時代のものが明らかになった。これは興味深い。
http://radioc.web.fc2.com/column/pc98bas/pc98dos3necai.htm
まとめておく。
まずpc98のキーボードを画像検索する。
これがその方式で打っていたかは不明だが、
おおむね共通点があった。
NFERが無変換位置、XFERが変換の位置。
でもかなり長い(8Uくらい)スペースキーだな。
無変換/変換というよりはAltかな。
NFERがないものもあった。
現在のCapsの位置に、
CtrlとCapsが1Uずつの大きさで並んでいる。
(じゃあCapsいらないよね、という議論はなかったのだろうか……)
また、最下段の左にカナロックキーがある。
これは物理的にロックできるキーのようで、
qwertyローマ字とJISカナを切り替えられる仕組みであったようだ。
Tabは現在と同じQの隣。
以下やりたいこととキーバインドのまとめ。
IMEオンオフ Ctrl-XFERのトグル方式
変換 スペースまたはXFER、句読点変換も標準
一段階戻し ESC
注目文節移動 ↑↓
注目文節を次へ NFER
文節伸縮 Ctrl-←→
候補選択 スペースまたはXFER
二回以上?押すと候補群が表示され、
候補選択は←→
次候補群はXFER、前候補群はShift+XFER
確定 エンター
(次の文字を打つと自動確定する機能はなかった模様)
無変換確定 Tab
ひらがな変換 F6
カタカナ変換 F7
全角英数 F8
半角変換 F9
拡張機能 F10(単語登録など)
入力文字種選択 Shift+F6-10
なるほど、F6-F10は整理されている感覚がある。
F10を欠いている現在では意味が分らなかったが、
この並びならば理解できる感じ。
NFERの役割が、注目文節の次移動のみだが、
大丈夫なのかしら。
このときからNFERの役割がもう曖昧になっていたのかしらね。
全体的には多少の異同があるものの、
ほぼほぼ現在のMS-IMEの日本語入力法が、
NECによって出来上がっていたということになる。
逆にいうと、
日本語入力法はここで止まっているんだな。
せいぜい、
候補選択の左右カーソルが上下カーソルになったくらいで、
本質的な操作法は変わっていない。
つまり、
親指キーがあんまり意味がなくて、
親指で操作するわけではなく、
左端や右端のキーを使うような動線の無駄がある、
という点で同じだ。
NECが策定した、
この最初?の日本語入力法の設計が、
まったく動線を重視していない、
ブラインドタッチのための方法論ではなかったために、
現在の109キーボードで、
ホームポジションのまま入力から編集までできる方法論がなかったというわけだな。
やっと犯人までたどり着いた感じがあり、
感慨深い。
JISカナをつくったのは電電公社だし、
日本語入力操作法の基礎をつくったのはナショナル企業のNECだし、
「日本人は個々人では優秀なのに、
オフィシャルになると無能」説は、
ここでも真であったか!
そもそも長いスペースのはるか左右にNFERとXFERがあったものが、
三分割スペースキーくらいにいっときでもなったのは、
まあ功績とも言えるだろうか。
(現在はAltなみに外に出されているが…)
でもせっかく親指で操作することが可能になっているのに、
IMEオンオフ NFER、XFER単打
変換 XFER
前候補、次候補 NFER、XFER
文節伸縮 スペースを押しながらNFER、XFER
前候補群、次候補群 XFERを押しながらNFER、NFERを押しながらXFER
確定 スペース(エンターは改行のみ)
にすれば、まったく3キーですべての操作が出来たのでは?
シフト、カーソル、エンター不要の仕組みになるのではないかと思った。
(ついでに、
NFERを押しながら文字キーで何かしらのショートカット、
XFERを押しながら文字キーで何かしらのショートカットと、二面仕込めるね。
ここにひらがな変換、カタカナ変換、
カーソルやHome Endなどを入れてもいいのでは)
誰かこういうIMEつくってくれないかな。
俺にプログラミングの能力はないので……
これができてれば、
親指キーでシフトする親指シフトや新JISや、
薙刀式も生まれなかったかもしれないね。
操作にがんがん親指使うものね。
なるほど、現在の仕組みがおかしなことになっているのは、
NECのレガシーシステムのロックインということなんだな。
じゃあ、そろそろ老人会に入る人たちばかりなんだから、
新しい操作法に整理してもいいんじゃないか?
tkenさんがハッカソンでIME設計しようぜ、
なんて言っていたが、先にやってしまった?
あるいは、もっとシンプルなものに整理できるかもしれないから、
それを議論する場にしてもいいけどね。
なんでこんなにややこしくなってしまったのか。
そしてなぜ整理されなかったのか。
Macのシンプルな方法で学んだ僕は、
いまだにこのごちゃごちゃがよくわかっていない。
ざっくりいうと、みんなバカだったんじゃないだろうか?
qwertyのロックインと同じ愚をやったんだぜ。
反論求む。
2022年12月20日
この記事へのトラックバック
何かと思えば、NECAI(NEC AI変換)の解説を拾ってきたんですねと。PC-98全盛期でもNECAI常用者はほぼ皆無ではないかと言えるぐらいに、泡沫なFEPでしたよ。
MS-DOSの時代、アプリケーションと日本語FEPはセットで使ってなんぼ。切り離して使うことは困難と言っても過言ではなく、
・一太郎や花子にはATOK
・松や桐、Lotus 123には松茸
・EGwordにはEGBRIDGE
・ARUGAにはDFJ2
・単体FEPとしてVJEシリーズ、WXシリーズなど
と数多のFEPがあって、操作体系は各社の自主性にお任せ=自由度が高い=見事にバラバラでした。
百花繚乱の競争を生き抜いて、今日まで残っている単体IMEは、ご存じの通りATOKだけです。
MS-IME⇒Microsoft IME を語る場合は前身となったWXシリーズを、ことえりを語る場合は同じくEGBRIDGEをお調べになった方が適切ではないかと存じます。
情報ありがとうございます。
挙げられた各FEPの操作法をググっても、
操作法を一覧できる情報は出てこないようですね。
少なくともネット時代に対応していないものは、
古書を当たるしかないようです。
・VJE‐β Ver.2 活用マニュアル
・THE GUIDE(ザ・ガイド)日本語FEP―かな漢字変換システムのすべて
はamazonの古本で見つけたので来週届く予定です。
引用したものがものすごくまとまっていたので分かりやすかったのですが、
ああいった情報はネットにはないんだろうなあ。
なにせ僕か141FさんのブログがGoogle検索の数個目に出てくる始末。
誰もネットで検索してない→万が一どこかにまとまっていても、
辿り着けない状態なのかなと思いました。
しかもその名前で検索した結果だと、
そこから見た個別の世界しか分からないので、
俯瞰して当時どうだったかを語る人がいないと、
面で進んでいるはずの歴史が、点や線になってしまうんだなということがよく分かりました。
後世の僕らは当時のことなんて何一つわからんので、
こうやって歴史は埋もれていくんだなあ。
古本が期待したものならば、
操作法をまとめてインターネットに放流したいと思います。
逆に、「しらべる」がGoogle検索に今限定されてるんだな。
近所の古本屋も潰れたし、そもそも本屋も今後わからないし。
足を使って調べるとすると、神保町なのかしら。
かな漢字変換日本語入力システムの現状と今後に望むこと
青木恒夫
(131Pに松茸V2とATOK6の操作キー解説あり)
https://www.nakanihon.ac.jp/nacinfo/common/doc/college/ronso/nac_ronso_019-13.pdf
第2章 日本語入力編(Atok6と松茸v2による日本語入力の解説)
https://www.tetras.uitec.jeed.go.jp/files/kankoubutu/i-004-2-04.pdf
日本語入力フロントエンド・プロセッサの 操作性評価
窪田悟(成蹊大学)
(ATOK6, FIXER4, 松茸V2, VJE-βV2)
https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=117776&file_id=1&file_no=1
日本語入力フロントエンド・プロセッサの 操作性の比較
窪田悟(成蹊大学・工) 大久保堯夫(日本大学・生産工)
(ATOK6とFIXER)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje1965/25/Supplement/25_Supplement_302/_pdf
ありがとうございます。
ひょっとすると、
これらのものをリアルタイムで過ごしていてそれが当たり前だった世代と、
いやそんなもん見たことないし知らんがな、
そして調べようにもネットにはないし、
という世代には、恐ろしいほどの断絶があるかもですね。
上げていただいた古文書はテキスト化されていない生pdfだから、
これらのものに直接リーチすることも不可能で、
専門用語(当時の常識だけど今使わなくて誰も知らない言葉)知らないとたどり着けないものたちだと思います。
あと当時の専門用語は、
「ググって被りがあったら避ける」という考え方がないので、
平気で同じ名前の別物に当たるのも厄介ですね。
仮に個人的にまとめたページがあったとしても、
リンク先が404になっているものはかなりありますね。
ひょっとすると「親指シフトはよかった」という人たちの中には、
ATOK(またはJapanist)は使いやすかったのに、
MS-IMEは使いにくいという誤認が混じってるかも、
などと想像してみました。