2022年12月30日

最高の最終回(「THE FIRST SLAM DUNK 」評)

正直期待してなかったが、評判に背中を押されて見てみた。

最高だ。
スラムダンクに対する不満のすべてが、成仏した。
次はバカボンドよろしく。

以下ネタバレで。
ラストシーンこそが映画だという話をしたい。


漫画スラムダンクのテーマはなんだろう。
主人公桜木花道は、
何を語るために出てきたんだろう。
キャラクター祭りのスポーツ漫画にしては、
出来の良さにずっと読んでたけど、
なんか詰まらなくて、
でもそこそこ面白いので読んでた。

ガワは面白いのに中身がなにか分からない、
という不安さのある漫画だった。

無音の山王戦最終回も意味不明だ。
ああ打ち切られたのか、と尻切れトンボだった。

その、
本当の最終回を見た気がした。
宮城リョータ主役というのが解せなかったが、
設定の乏しい彼の設定を新しくつくることで、
スラムダンクはきちんと中身をつくってきた。

ファーストシーンとラストシーンの呼応で、
山王戦の試合の意味、
バスケをやる意味が完成する。
この映画のテーマは、
「人生色々あるけど、やってやるぜ」
ということだと思う。

「諦めたらそこで試合終了ですよ」
でもいいんだけどさ、
最後のリョータの表情が全てだろう。
もっとギラギラした何かだ。

山王のエースが負けてプロになった後日談を装いながら、
相手にリョータがいて、
あの試合のリベンジになるというラストシーンに驚く。

そう、彼ら湘北のバスケはなんだったのかを、
リョータがプロになり、
まだまだライバルと闘ってるぜ、で示すのだ。

まだ諦めてない。やってやるぜ。

それこそがスラムダンクの意味、テーマだ。
だからゴリも三井も流川も花道も、
あんなに汗をかいて、飛んだり跳ねたりするのである。

ずっとドリブルしてるリョータは、
だからずっとドリブルしている。
ファーストシーンとラストシーンが、
見事にブックエンドをなし、
中に挟まれたものの意味を鮮やかに結論づけた。

エンドロールのギターがかっこよくてね。
ああ、こういう男の作った映画を久しぶりに見たなあと思った。
女相手のマーケティングなんか知るか、
というロック魂を吸収できて満足だ。
男は闘うために生まれてきたのだ。
マーケティングのために生まれてきたのではない。



山王戦のラスト、
まさか無音でやるのかとハラハラしたけど、
ちゃんと演出入ってて安心したわ。
演奏シーンを無音でやり切った、
伝説のうんこBECKにならなくてよかったね。

CGによるモデリングは、
聖闘士星矢みたいな惨さになるのではと不安だった。
ハーロックで東映はやらかしてるしな。
でも井上画風になっててものすごくよかったよ。
二時間井上漫画を堪能してる気分だった。
CGはバスケのモーションキャプチャのためだったんだな。
あれは流石にセルの作画じゃ無理だわ。

(でもこの試合までの回想編、
リーゼント時代の花道パートは普通のセルだったよね?
そのアニメ版もわかってますよ的な感じはよかったなあ)


あれだけのブームを巻き起こしながら、
とても中途半端に終わってしまったスラムダンク。
その、真の最終回が見れて満足。
やっとあの頃のジャンプから卒業できるかな。


しかし井上雄彦は、
リアルをどうするつもりだろう?
もうこの先書けなくなるんじゃない?
結論でちゃったもんね。

バカボンドも対決の入り方が分かってない状態のままだしなあ。

リアルもバカボンドも完結しなくても、
まともにきちんとスラムダンクを完結させた、
今回の勝利に拍手を送りたい。

三浦健太郎よ、聖悠紀よ、天国で羨め。
名作は、完結してなんぼなんだ。
あと美内すずえがんばれ。



リョータの物語は完結させられたから、
あとは桜木花道の最終回を見たいよな。
ゴリ卒業後、エースになる流川と花道の、
続きを見たいよなあ。

俺実は流川単独主役の「楓パープル」も、
桜木花道の不良漫画「赤が好き」もリアタイで読んでるんだよね。
だから思い入れがあるんだよね。
posted by おおおかとしひこ at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック