2023年01月26日

三題噺がなぜ有効か

三題噺は、初心者のときによくやる課題だと思う。
なぜそれが有効なのか?

単なる練習と思ってはいけない。
実は、一番実戦で役に立つ、
あなたを守ってくれる技能だと思うのだ。


実戦の執筆では、
プロットはできているが、
詳細なところまで決まっていないことがとてもある。

たとえば、
「〇〇が味方につく」とか、
「〇〇と仲良くなる」とか、
「〇〇を突破する」とかだ。
具体的なことを何も決まっていない状態のまま、
プロットには書かれていることが多い。

「くそう、未来の俺に託しやがったな、
何も考えていない過去の俺め」と恨んでもしょうがない。
今、それを考えないといけないわけである。

そこで三題噺の技術が役に立つのだ。

たとえば、
「〇〇が味方につく」という三題噺をつくればいいんだよ。

たとえば、
〇〇が味方につく、
眼鏡、
うどん、
の三題でやってみようか、
と適当に思うわけ。

じゃあ、うどんを食べようとして眼鏡が曇り、
腹が立つために敵を倒すことを誓って、
味方につくことにする、
というようなエピソードはすぐに思いつくよね。

こんな感じで、
自分への何も考えていない無茶ぶりを、
三題噺の一題に加えてしまえばいいわけ。

もちろん、その他二題は適当に選んでもいいし、
ストーリーに関係ある何かでもよい。

たとえば、
ストーリー上ハイウェイが重要な場合、
〇〇が味方につく、
ハイウェイ、
あと何か、
で三題噺をつくればいいわけだね。
その何かは「できるまでいろいろ選んでみる」
のがいいと思う。

三題噺は強制的に三題でつくらないといけないが、
今回は二題で作っていいわけ。
もちろん、三題あったほうがつくれることもあるので、
適当に、思いつきやすい三題目をもってくるといいだろう。

もちろん、ハイウェイ、マウス、
新聞紙、売春宿、締め切り、
などたくさんの要素が重要なこともある。
じゃあ、その中から三題を選んで、
三題噺に仕立て上げればいいわけだ。

観客は三題噺を書いていることには気づくまい。
良くできた展開だと思うだけのことである。

「〇〇が味方につく」という落ちさえできれば、
なんでもいいわけだ。
ただ、
「よし、味方になってやるぜ」だと、
「なんでやねん」だけど、
「うどんで眼鏡が曇らせないためには、
お前らに味方するしかないな」
という風になると、
それがエピソードになるわけだね。
その味方は未来永劫「うどん眼鏡野郎」というキャラの立ち方になるに違いない。

三題はだから、
記憶に残せるようなものを選ぶといいだろうね。



三題噺は、
無茶な要求にこたえるだけの、
自分のアドリブ力を鍛えるためにある。

あるいは、
「こういう感じなら自分ならこうできそう」
「ちょっとこういうタイプの組み合わせはできなさそう」
という感覚をつくるためにもある。

で、出来るならその範囲を広げておくとよいだろう。
どんな球でも拾うぜバッチコイになっているほうが、
自分への無茶ぶりはしやすいというものだ。


で、
実際過去の自分から無茶ぶりされたときに、
「こういうものとこういうものが揃っていると、
たぶんうまいこと三題噺が書けそう」
というところまでは把握して、
「じゃあ、三題に、
〇〇と〇〇をつかおう」というアイデアが、
逆算で出るようになる。

そのようにして、
適宜三題噺をつくって、
自分にお題を出して、
執筆というのは乗り越えていくものだ。


また、プロになってからよくあるのは、
○○を△△に書き換えたいのだが、とか、
この部分をクレーム対応版に差し替えたいとか、
ストーリーと関係ないところでガンガン削られることだ。
それで痩せてしまうのは勿体ない。
なので、それすらも三題噺だと思って、
新しく見事にクリアした方が、
結果的に幸せになる。


三題噺は、このようにして実戦で使う。
初心者のうちからやっておくべき、
とても大事な基礎トレーニングだと思う。

三題噺はプロットを最終出力としてもよいが、
出来るなら原稿として書いてしまうのがいいだろう。

一日一本、三日で三本、
百日やれば百本たまるぜ。
それを何かの際に再利用してもいいし、
それだけの実力が鍛えられていれば、
大体切り抜けられるような気もする。


百人組手をやる意味は、そういうことだ。
三題噺をたくさんやっておくと、
「切り抜けられる力」「予測する力」がつくね。
posted by おおおかとしひこ at 07:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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