2023年01月29日

螺旋を上って行け

どうしたらうまくなるか?
下手なやつは数をこなすしかない。
どう数をこなすのがよいのか?
完結した回数だと思う。

だから僕は、うまくなりたかったら、
短編をたくさん書け、と良くいう。


物語は場面の組み合わせである。
物語は設定の組み合わせである。
物語は人物の組み合わせである。
物語は行動と結果の組み合わせである。

物語というのは、とてもたくさんの要素の組み合わせの、時計仕掛けのシステムだ。

何回も完結させていると、
それがなんとなくわかるようになってくる。
今回のオープニングは、
今までよりもうまくかけたぞ、とか、
今回のオープニングからの事件発生まではうまくかけたぞ、とか、
今回の第一ターニングポイントはうまくいったぞ、
とか、
今回の決着のつくシーンはうまくいったぞ、
とかだ。

螺旋階段を上るイメージだ。
一周が一回のストーリー完結だと思おう。

一回ストーリーを完結させていたら、
オープニングを書くのは二回目だし、
ミッドポイントを書くのも二回目だし、
エンディングを書くのも二回目だろう。

n回ストーリーを完結させていたら、
色々なパートを書くのはn+1回目だろう。

n回目の転生のようなものである。
ここは知ってるぞ、
だから前よりもうまく書けるはず、
前よりもうまくハラハラに、
前よりもうまく感情が揺れるように、
書けるはず、
と自覚できる。

これまでのどの作品よりも、
今回はうまく書こう、と思える。
それが向上心というものだ。

何回も完結させていればいるほど、
今までのどの作品よりも、
このパートはうまく書けた、
というところがあるはずだ。
前よりはうまく書けなかったが、
まあ平均点は取っているな、とか、
自分の平均よりはここは下手だな、
とか分るようになってくる。

そうやって、総合得点でいいものをつくろう、
となっていくと思う。

人生で何回オープニングを書くかはわからない。
人生で何回大逆転ポイントを書くかはわからない。
人生で何回大切な人の死と立ち直りを描くかはわからない。
だけど、何回も何回も、
あなたは他人のストーリーを、
はじまりから終わりまで書くことになる。


長編は魅力的だが、
それを完結させることは、
初心者には大変難しい。
不可能とは言ってない。
とてつもなく大変なだけで、
勢いと情熱さえあれば可能ではある。

だけど、高校生くらいまでの、世界はどうとでもなると思ってるだけの度胸がないと、
うまく完結まではいかないと思う。
どこかで冷静になってしまい、
「これって面白いんだっけ?」と疑心暗鬼が湧いてきて、
そこで自信喪失でおしまいになることがとても多い。

そうじゃない。
短編を書くとよい。
できれば一日で執筆が終わる程度の長さだ。
人によるが、
400字詰め原稿用紙3枚、5枚、15枚。
それくらいでいい。
1枚しか書けないがそれでも完結する、ならそれでもよい。
とにかく、
始まり、途中、終わりがあるものがよい。

事件、展開、解決があるものがよい。
主役とわき役がいるものがよい。
一人じゃなくて、複数の登場人物がいるのがよい。

打ち切りエンドではなくて、
きちんと完結するものがよい。
「おわり」を書いて満足する話であるものがよい。

その短編を、
一本、二本、三本……百本書くとよい。

短編は短いから、
評価もすぐできる。
ここはうまくいった、あそこは失敗した、など。

そしてまた短編を書く。
うまくいった、いかなかった、
そして書く。
こんどはここがうまくいった、など。

そうやって成長のPDCAを回す。

そうすると「感覚」がたまってくる。
うまくいった感覚がだ。

このオープニングは、これまでより一番うまく書けたやつだ、
このどんでん返しは、これまでより一番うまくかけたやつだ、
この感情移入は、今までで一番うまくいったやつだ、
この落ちの切れは今までで一番いいぞ、
などだ。

そうすると自分の最高到達点が分るよね。
トータルで全部最高のものは書けないかもしれないが、
各パートでの最高到達点を集めると、
ここまでは面白いものが書けるぞ、
という最高見積もりみたいなものが分るよね。

それと、プロの作品を比べるといいよ。
普段の平均では負けるかもしれない。
でも最高点を叩き出せれば、
プロに勝てるやつになるかもしれない。

そう思ったとき、はじめて長編にかかるとよい。

それもいきなり2時間は難しいだろう。
15分、30分、60分、90分と、
少しずつ伸ばしていくのがいいよ。
そしてやっと120分を書いてみることをお勧めする。

螺旋を上ってゆこう。
何度でも主人公は事件に遭い、
何度でも主人公は逃げ、
何度でも主人公は解決して成長するだろう。
あなたはあなたの世界の神だ。

その他人であるところの主人公の転生を、
何度でも見守り、
今度こそ最高の人生を描いてみようではないか。


チャップリンは、
代表作は何ですかと聞かれて、
次回作ですと言った。

それは、「次はもっとうまくやってやるぞ」
と、ずっとやってきたからじゃないかと思う。
(実際はめんどくさくてその場を逃げたかったらしいが)

いつも螺旋を上っている人ならば、
〇回目のあれはよかったなあとか、
〇回目のあそこは失敗したなあとか、
分っているはずだ。
どうやったら失敗を避けられるか、
どうしたら立ち直れるか、
どうしたらよくなるか、
などなど、自分なりに分析もしただろう。

だから、次書くものは、
もっとよくすることが出来るはずだ。

もしどこも前よりもよくなかったら、
引退だね。
やめておきなさい。
だってずっとそのままか下る、ってことだもんね。

つくるものつくるもの面白い。
それは才能もあるかもしれないが、
「前より面白くなるまで出さないぞ」
という螺旋の気持ちだと僕は思う。

人は勝手に成長しない。
上に上りたいやつしか、上に上らない。
posted by おおおかとしひこ at 00:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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