2023年01月31日

立ち止まると、闇がやってくる

調子良く書いているときは、
まったく挫折の匂いなどない。
挫折の危機は、ふと立ち止まったときだろう。


いけいけどんどん、進めや進め、
という状況のときは、
書いてて楽しいときだ。
全能感に満たされ、
書いても書いても思いつきが湧いてくるときだ。
それはストーリー的にも快進撃を続けているときで、
それを書くことだけがストーリーを書くことだと勘違いしてしまうくらい、
気持ちよいものである。

で、それが鉄が冷めるように、
急速に冷えてしまうときがある。
どんどん進んでいた展開が、
一度落ちて、
どう展開していいか見えなくなった、
井戸の底のようなときである。

あれだけいけいけどんどんだったものが、
次に何を書いていいか分らなくなり、
ストーリーの行方がまったくわからなくなる。
何をしても面白くなくて、
いつか挫折が見えてくる。

立ち止まったときに、
ふとそこが熱がなく、
冷えていることに気づくわけだ。

熱に熱を足して、
勢いを保ってきたものは、
熱がいったん冷めると、
次にどうやって熱を起こしていいかわからなくなる。
だから、そこで、
詰まらなくなって挫折してしまう。


そういうときはどうしたらいいか。
まずその冷えた状態から離れることだ。
物理的にだ。
そして遠くからその状態を観察することである。
その中心の外には何があるか?だね。

たぶん、伏線その他準備したものは、
大体使い尽くしたから、勢いは止まったのだと思う。
燃料切れを起こした飛行機と同じで、
墜落するしかなくなったのだろう。

脱出するには二つある。
その場に燃料を生み出すことと、
その場所以外から燃料を持ってくることだ。

前者はたいていうまくいかない。
まだ残っている要素や伏線があればうまくいくかもしれないが、
それも使い果たしている状態だと、
そこだけからは復活しにくい。

ということは、もっと外を見るとよい。

外には何があり、それとどういう関係のものがあるか、
考えるとよい。
客観的になることだ。

今まで主人公たちがいた所の、
設定が全部できていなくても、
今ここの外にはこういうものがあるのでは?
と想像することはとても役に立つ。

井戸の底で困ったら、
井戸の外には何があるか、誰がいるかを考えるとよい。
それはこれまで出てきたものかもしれないし、
出てきていなくて、新しくつくる必要があるものかもしれない。
どっちでも構わない。

それらを使わないと、
冷めたコーヒーは勝手に温まることがない。
時計が勝手に部品に組みあがることがないように、
ストーリーというのは常にカオスへ向かって行くものだ。
それが勝手に秩序だつことはまずない。
大概カオスになってゆく。
だからよそからのエネルギーを入れないと、
熱的な死しかないと思う。


どことどう接続すると、次に熱くなるか?
については、経験則、としかいいようがない。
こうしたらよくなる、は、
どうしてその井戸の底に来たか、ということと関係あるので、
一概に正解があるともいえない。
なので、
「こういう感じのことがあると、ここから脱出できる」
という経験則を積むしかないと僕は考えている。


今一通りの準備してた展開がひと段落して、
次に何をするべきか分らなくなった。
そういう時は、いったん「休む」という描写をしてもいいんだぜ。
そのときに何かを仕込めるかもしれないからね。

そこで隠されていた何かに気づいたり、
よそから来訪者が来たり、
これまでつながっていなかったところとつながったりして、
展開は息を吹き返すだろう。

そしてそれが「困ってしばらく書いているうちに出口を見つけた」から、
「一休みしたらまた怒涛の展開」に書き直すと、
そこで作者が困っていたことすらわからなくなるだろうね。


まあ作者はつねに困っている。
すぐに勢いというのはなくなる。
だから、
どう次の勢いをつくるべきか、
つねに考えているといってもよい。
ヒントは名作にもあるし、
日常にもあるかもしれない。

一休みしたあとに、
冷えたあとに、
どうやって再び熱くなったか?
おそらく、展開の尽きたものからは生まれず、
別の何かが合流することで次の熱がうまれたはずだ。
何を足せば次の展開ができるのか、
考えるといいかもしれない。
あるいは、何かを引くことで次の展開ができるかもね。


必ず立ち止まる。
必ず冷えはやってくる。
それを前提としたほうがいい。
闇にとらわれないように、
ただ逃げ切るだけでは闇につかまったときに、
なす術がなくなるからだ。

そうではなく、そこで一休みして落ち着いて、
次の展開があるほうが、
ストーリーとしてもリズムがよくなるし、
面白くなると思うよ。
posted by おおおかとしひこ at 07:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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