2023年01月08日

インド映画は車田正美である

ムトゥ踊るマハラジャ、
きっとうまくいく、PJ、ダンガル、
バーフバリ、RRRなど、
僕は傑作インド映画が大好きだ。

なんでだろうと考えて、
はたと全盛期の車田正美の勢いみたいなものを、
持ってるからじゃないかと気づいた。



車田正美の全盛期は僕の考えによれば、
「リングにかけろ」の影道編から、
「風魔の小次郎」の聖剣戦争前半までだ。

絵の素晴らしさ、繊細さ、豪快さ、
勢い、
ハッタリ、
ぶっ飛び方、
ツッコミどころは満載なのに、
なぜかそういうものだと納得してしまい、
むしろもっとやれと思ってしまう感覚。
そして熱くて勢いがあって、
男とはを問うもの。

それ、
めちゃくちゃインド映画の要素そのものやん。


僕は梶原一騎リアタイではないが、
梶原一騎の勢いとハッタリから、
70年代の泥臭さを抜いて、
繊細な味付けをしなおしたものが、
車田正美だと考えている。


なんで僕はこんなに、
毎度毎度インド映画に頭を殴られて、
何日も頭の中でリピートしてるのかを考えると、
ああ、
リンかけや風小次に夢中になってた、
あの感覚と近くね?
と気づいたんだよね。

なんかこう、バカなんだけどカッコいい感じで、
アホかと笑っているのに夢中になる熱さって、
ドラマ風小次と同じものがあるなあ、
予算は全然違うけど、
って思ってたら、
そうか、
RRRは、よく出来た車田ロマンを、
ものすごい予算とパワーで実写化したような突き抜け方なんだな、
と気づいたわけ。
(ちなみにRRRはインド映画最高額の予算だそうです)

女関係がイマイチ上手く描けていない、
本宮ひろ志→車田正美の系譜の感じも、
むしろよく似ている。

アジア全般にこういう文化があるのかもね。

日本はこうした熱さ、
馬鹿らしいけどぶっ飛ぶものを、
21世紀の向こうに置いてきてしまったように思う。

聖闘士星矢は洗練されすぎた。
僕の好きなリンかけ前半部(ロクさんとかいた頃)の、
泥臭さも味のうちだったのに、
そんな昭和を置いてきてしまったのが、
僕は好きじゃないところ。


これからインドが世界の覇権を取る、
と言われてもそうだろうな、
と思うよ。
だって明らかにハリウッド映画より勢いあるもの。

ポリコレでがんじがらめになり、
行き止まりが見えたハリウッド映画よりも、
知るかボケと突っ走るインド映画のほうが、
圧倒的に棍棒でぶん殴る感じで気持ち良い。

マーケティングと計算で、
採算が合うようになってしまった映像業界よりも、
信じたもので突っ走る方が、
面白くてスリリングに決まってるじゃんね。
そうした、
死んでも構わんみたいなエッジに立ってる感じが、
一瞬のきらめきで最高なのだ。


日本にも、こんな野蛮で原始的で、
でも本物は、現れうるのだろうか?

僕は「トップガン・マーヴェリック」で、
ハリウッド映画は完成してしまった、
と思った。
70年代から見てきたハリウッド映画は、
ここを頂点に終わったかもなあ、とすら思った。
映画の勢いに対して、
背負うもの(ネットのコントロールとか、
タイアップとか、ポリコレとか)が多すぎる。

インド映画はまだ伸びると思う。
背負ってない。
それくらい勢いがある。

ハリウッドにも、インドにも、
日本映画が勝てる要素が見つからず、
僕はこの2本のことを考えるだけで、
絶望的になってしまう。



もし可能ならば、
RRR並みの予算で、
風魔の小次郎聖剣戦争編をつくりたい。
だったら勝負できる。

もちろん、風魔以外でもいいよ。
今書いてるてんぐ探偵の最終章なら、
勝負できるだけのクオリティがあると思っている。

だけど、
今日本のどこで、
トップガン越えようぜ、
RRR越えようぜ、
と熱く燃えてるやつがいる?

漫画業界なら可能かもしれない。
コストがかからないからね。
じゃあ漫画家になればいいのかなあ。


ちょっと邦画には今期待できない。
誰か「行けるかも」と思わせてくれ。
シンウルトラマンで絶望してから、
邦画には何も期待できない。

「なるべく安く作ってください」しか言ってない。
「なるべく客が読めるものをつくってください」しか言ってない。
「なんでもいいから熱いやつもってこい」じゃないんだよなあ。


それでも俺は何かを書く。
どこで発表できるかはしらんが、
車田ロマンで頭を殴られた男が、
RRRを越えようとしてどこかでトンチキを書くだろう。
posted by おおおかとしひこ at 16:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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