ムトゥ踊るマハラジャ、
きっとうまくいく、PJ、ダンガル、
バーフバリ、RRRなど、
僕は傑作インド映画が大好きだ。
なんでだろうと考えて、
はたと全盛期の車田正美の勢いみたいなものを、
持ってるからじゃないかと気づいた。
車田正美の全盛期は僕の考えによれば、
「リングにかけろ」の影道編から、
「風魔の小次郎」の聖剣戦争前半までだ。
絵の素晴らしさ、繊細さ、豪快さ、
勢い、
ハッタリ、
ぶっ飛び方、
ツッコミどころは満載なのに、
なぜかそういうものだと納得してしまい、
むしろもっとやれと思ってしまう感覚。
そして熱くて勢いがあって、
男とはを問うもの。
それ、
めちゃくちゃインド映画の要素そのものやん。
僕は梶原一騎リアタイではないが、
梶原一騎の勢いとハッタリから、
70年代の泥臭さを抜いて、
繊細な味付けをしなおしたものが、
車田正美だと考えている。
なんで僕はこんなに、
毎度毎度インド映画に頭を殴られて、
何日も頭の中でリピートしてるのかを考えると、
ああ、
リンかけや風小次に夢中になってた、
あの感覚と近くね?
と気づいたんだよね。
なんかこう、バカなんだけどカッコいい感じで、
アホかと笑っているのに夢中になる熱さって、
ドラマ風小次と同じものがあるなあ、
予算は全然違うけど、
って思ってたら、
そうか、
RRRは、よく出来た車田ロマンを、
ものすごい予算とパワーで実写化したような突き抜け方なんだな、
と気づいたわけ。
(ちなみにRRRはインド映画最高額の予算だそうです)
女関係がイマイチ上手く描けていない、
本宮ひろ志→車田正美の系譜の感じも、
むしろよく似ている。
アジア全般にこういう文化があるのかもね。
日本はこうした熱さ、
馬鹿らしいけどぶっ飛ぶものを、
21世紀の向こうに置いてきてしまったように思う。
聖闘士星矢は洗練されすぎた。
僕の好きなリンかけ前半部(ロクさんとかいた頃)の、
泥臭さも味のうちだったのに、
そんな昭和を置いてきてしまったのが、
僕は好きじゃないところ。
これからインドが世界の覇権を取る、
と言われてもそうだろうな、
と思うよ。
だって明らかにハリウッド映画より勢いあるもの。
ポリコレでがんじがらめになり、
行き止まりが見えたハリウッド映画よりも、
知るかボケと突っ走るインド映画のほうが、
圧倒的に棍棒でぶん殴る感じで気持ち良い。
マーケティングと計算で、
採算が合うようになってしまった映像業界よりも、
信じたもので突っ走る方が、
面白くてスリリングに決まってるじゃんね。
そうした、
死んでも構わんみたいなエッジに立ってる感じが、
一瞬のきらめきで最高なのだ。
日本にも、こんな野蛮で原始的で、
でも本物は、現れうるのだろうか?
僕は「トップガン・マーヴェリック」で、
ハリウッド映画は完成してしまった、
と思った。
70年代から見てきたハリウッド映画は、
ここを頂点に終わったかもなあ、とすら思った。
映画の勢いに対して、
背負うもの(ネットのコントロールとか、
タイアップとか、ポリコレとか)が多すぎる。
インド映画はまだ伸びると思う。
背負ってない。
それくらい勢いがある。
ハリウッドにも、インドにも、
日本映画が勝てる要素が見つからず、
僕はこの2本のことを考えるだけで、
絶望的になってしまう。
もし可能ならば、
RRR並みの予算で、
風魔の小次郎聖剣戦争編をつくりたい。
だったら勝負できる。
もちろん、風魔以外でもいいよ。
今書いてるてんぐ探偵の最終章なら、
勝負できるだけのクオリティがあると思っている。
だけど、
今日本のどこで、
トップガン越えようぜ、
RRR越えようぜ、
と熱く燃えてるやつがいる?
漫画業界なら可能かもしれない。
コストがかからないからね。
じゃあ漫画家になればいいのかなあ。
ちょっと邦画には今期待できない。
誰か「行けるかも」と思わせてくれ。
シンウルトラマンで絶望してから、
邦画には何も期待できない。
「なるべく安く作ってください」しか言ってない。
「なるべく客が読めるものをつくってください」しか言ってない。
「なんでもいいから熱いやつもってこい」じゃないんだよなあ。
それでも俺は何かを書く。
どこで発表できるかはしらんが、
車田ロマンで頭を殴られた男が、
RRRを越えようとしてどこかでトンチキを書くだろう。
2023年01月08日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック