2023年02月02日

最初にガツンと設定するか、小出しにするか

難しい選択だ。


理想は、最初にガツンと大きく設定しておいて、
あとは一度も設定なしに、
最初のものを全部使い切ることだろう。

そのガツンの量が多かったら嫌になるかもしれないが、
それがうまいこと見れるもので、
ちゃんと分るものになっているならば、
あとは楽しむだけになるので、
設定部がそこに全部あることは、
欠点にはならないと思う。


「さすがに量が多いから、小出しにして行こう」
と考える人がいるが、
これはあまり推奨ではないと思う。
なぜなら、
「聞いてなかったぞそんな設定、後出しやんけ」
「解決するためのご都合やんけ」
と思われがちだからだ。

つまり、
設定の量が多すぎるのでは?
と僕は思うわけ。

そんなこといっても、
設定の量が多いんだよ、
という人に、いくつかのコツを書いておく。


ひとつには、
「あとで使わない設定はしない」という原則だ。
「ここは共通通貨があって、
いくつもの国が連合している」
という設定を、あとで使わないならば、
とくにその設定をする必要はないのだ。

しかも、もし「いくつもの国」が出てこないならば、
設定する必要すらない。
「通貨がある」という設定だけしか生き残らず、
そんなものをわざわざ設定しなくても、
通貨くらいあるやろ、という前提で人は見ているだろう。
「通貨がないと思ったにあったのかよ」だと不自然になるだろうが、
デフォであると思ってれば、その設定はいらないわけだ。

このようにして、
作者が納得したり、設定するための設定は、
どんどんそぎ落としていくことが出来る。
ただ金を出して何かを買うシーンだけで、
通貨の設定は不要になるわけだからね。

たしかに「ここはどこか」「ここはどのようにして動いているか」を設定することは重要だが、
物語を楽しむのに必要とは限らない。
その設定は、
あなたがストーリーの基盤を理解するためだけの設定かもしれない。
あとで使っていない設定は、
たいていそのような場合が多い。


設定部を減らすもう一つのコツは、
類推できるものは省略することだ。
「通貨がある」ことは省略しても大丈夫だろう。
「この一族は通貨という概念を持たない」は、
省略するべきではないだろう。
(あとで使わないなら意味がないけどね)

「この男は男が好きである」
ことは、「女が嫌い」を類推させるから、
わざわざ設定する必要はないかもしれない。
だとしたらゲイの設定をするだけでよいわけだ。

このことによって、
「まあそれはいわんでも分るやろ」
という範囲があることが分る。

それを省略していくことで、
どんどんと設定部は小さくできるのだ。

あるいは、ちょっとした追加で、
設定を類推させることもできる。
「この男は男が好き」と設定したとき、
「バイかも知れない」という疑惑を払拭させるために、
女に「だから女って嫌い」みたいに言う場面を付け加えるだけで、
その可能性を棄却できるわけだ。

このようにして、
設定とは、
「ここからここまでを扱う」のように、
イメージできればそれでOKなわけ。
枠組み全体をいちいち説明しなくてもいいのだよ。


だから、それを序盤で、
うまくがっつり設定できたら、
後出しをしなくて済むわけ。
すでに遊園地の範囲が分っているから、
そこで目いっぱい遊べるわけだ。


あとあと小出しにするのは、
それがへたくそだった証拠だ。
遊園地の解説が下手なのか、
適切な範囲の遊園地を用意できなかったのかは、
分らない。
よくできた設定部を観察することで、
全体との比較をして理解するとよいだろう。

よく言われるのは、T2の設定部だ。
「良いターミネーターと悪いターミネーターがいて、
悪い方から逃げなければならない」
という設定だけして、
あとはストーリーに持って行くのは、
とても良い設定の省略だ。
審判の日とか、中に骸骨みたいな骨格が入っていることとかは、
なくても話が分るようになっている。
そこが秀逸なんだよね。
posted by おおおかとしひこ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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