2023年01月09日

タイトル=コンセプト=誘引

であるべきだ。

本のタイトルなのだが、
すごいのを見たので。


「アザラシ語入門 水中のふしぎな音に耳を澄ませて」
京都大学学術出版会

え?マジでアザラシ語があって、
それを観察して解読したやつがいるの?
そのコンセプトに度肝を抜かれ、
ちょっと読んでみたくなるじゃない。

アザラシが簡易的な言語を持ってそうなのは想像できるが、
どれくらいのボキャブラリーがあり、
どういう文法を持ってるのか、
かなり気になるよね。

そしてその期待に応えてくれそうな、
京大出版会。
これはすごいタイトルだ。

本の内容の説明もすばらしい。

「アザラシたちは氷の下でどんなやりとりをしてるのか?
水族館に通い詰め、流氷の海に繰り出し、
『アザラシ語』の解明に挑んだ奮闘記。」
だぜ?
どんなログラインよりも面白そうじゃん。


「作品」の一つの単位は、
「そのことで楽しめることの単位」だと思う。
この場合で言えば、「アザラシ語の解明」だよね。
ストーリーで言えば、
非日常の面白さのことである。

それが見事にタイトルになっている。
「アザラシ語の解明」ではなくて、
「アザラシ語入門」と、
まるでフランス語入門の隣にしれっと置かれててもOKなところが、
いいタイトルだ。
え、そこまで解明できてんの?
って驚きがあるからだ。


驚かないタイトルはつまらない。
なぜなら、
「え、そんな面白そうなコンセプトが?」
って驚くべきコンセプトがない、
ってことがバレているからだ。

この驚き、「えっそんなことが世の中にあるの?」
こそが、誘引である。

「それは学術的興味がある!」と思わせれば、
学術書として誘引は成功だし、
「それは楽しみな物語だ!」と思わせれば、
物語としての誘引は成功なわけ。


新鮮なる驚きこそが、
誘引、コンセプト、タイトルであるわけだ。

そもそもそのように一気通貫してなければ、
ログラインやタイトルで嘘をつくことになる。
それが詐欺になるわけだね。


逆に内容とコンセプトがうまく出来てれば、
どんなヘボでもいいタイトルになるはずだ。



ちなみにこの新動物記シリーズは、
いいタイトルだらけで楽しい。

白黒つけないベニガオザル  やられたらやり返すサルの「平和」の秘訣
アザラシ語入門  水中のふしぎな音に耳を澄ませて
カニの歌を聴け  ハクセンシオマネキの恋の駆け引き
夜のイチジクの木の上で  フルーツ好きの食肉類シベット
隣のボノボ  集団どうしが出会うとき
武器を持たないチョウの戦い方  ライバルの見えない世界で
キリンの保育園  タンザニアでみつめた彼らの仔育て
https://www.kyoto-up.or.jp/series.php?id=157


カニの歌を聴け、とかすごいよな。
隣のボノボ、武器を持たないチョウの戦い方とかも、
めっちゃ気になる。

新刊予定の、
土の塔に木が生えて シロアリ塚からはじまる小さな森の話
も、これはたまらんかんじがする。

凄まじいシリーズだ。
きっといい編集者がいる。
そもそも変態京都大学、最高である。


あなたの物語のタイトルは、
これに勝てるだろうか?
posted by おおおかとしひこ at 12:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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