2023年02月10日

オープニングで100点取ってしまったとき

すごく書きたい話を書いて、
100点のオープニングが書けてしまうとき。

「ああ、ここから落ちるしかないんだな」と予感して、
その先を書くことが怖くなることがとてもある。


100点のオープニングを書いてしまったら、
あとは下がるしかない。

90点を取った第二シーン、
80点を取った第三シーン、
など、どんどん点数が下がっていくことを想像してしまう。

それを書いて100点のオープニングが台無しになるくらいなら、
これ以上書かずに途中でやめてしまい、
「俺は天才だが、途中でやめた」という安心を得ようとすることは、
人間の本能的な心理かも知れない。
最高の状態から下がるのは、だれでもいやだろうからね。


まずアドバイスできることは、
100点のオープニングを書いてしまったら、
出来るだけ100点を続けることだ。
100点の第二シーン、
100点の第三シーン……
となるべく続けるように書くことだ。

それでもすぐに90、80……60と落ちていくのは、
もうあきらめることだね。

じゃあ下がりっぱなしであることを、
どう受け止めればいいのか?
アドリブで書いてなくて、
プロットを用意している意味がここにあるんだよね。

次の大事な場面はどこか?
外せない大事なポイントになる場面が、
このあとに控えているはずだ。

それは感情移入する場面かも知れないし、
事件に巻き込まれるポイントかも知れないし、
第一ターニングポイントやミッドポイントや、
第二ターニングポイントかも知れない。

それを、120点取ることを目標にするんだよ。

せっかく100点のオープニングを書けたんだ。
これを超えるすごい場面は、
何も連続する必要はない。
ポイントポイントで120点越えがあれば、
全体が100点に見えるぜ。

ただし100点じゃだめだ。
これは期待を超えた十分以上の出来である、
というものを目指そう。

100点だと80や60のところが目立ってしまう。
120越えを目指せば、
まあ80や60があってもいいか、
120があるしな、
と安心できるんだよね。

それで、最終的にぼこぼこの出来を、
うまく修正してよくしていけばいいわけ。

少なくとも、100点や120点をとっている部分は、
そのまま残る。
だから、これ以上よくなるリライトしか待っていないぜ。
これは楽しいじゃないか。


100点、
90点、
80点、
と書き進める執筆は、苦しいだけだ。
不安とともに進むからだ。

プレッシャーのある状態のほうが好きなドМを除いて、
「さあ次は最初より面白いことを書けよ」なんて言われたら、
誰だって委縮してうまくいかない。

そうじゃなくて、
「もうちょいあとに120点があるから、
今その仕込みをやってしまうことが出来るぞ」
と思えばいいんだよ。

その仕込みで60点になってしまったが、
まあ待て、あそこで爆発するのだから、
今は導火線である、という風に、
今と過去と未来を、
使い分けられるようになってくるんだよね。


今何点だ、と判定することは、
点でシナリオを見ていることになる。

もちろんオール100点が望ましいが、
それは理想でしかない。
現実は50点あれば御の字で、
30点とか10点のシーンを書いてしまうことだって全然ある。
それで挫折するのはもったいない。
100点取ってるんだから、
どこかで120点取って挽回しよう。

これがアドリブで書いてたら、
相当プレッシャーがつらいと思うよ。
だから、プロットを書くんだよね。

自分のシナリオがいつどこで爆発するか知ってるから、
仕込みも十分できるし、
準備があり、備えられるわけ。
さあ、やるぞ、ってシーンまで、
ためを作るわけだね。

そうすると、ここは抜きどころ、ここは力を入れるところ、
などと今どうしたらいいか、
なんとなく力点が分ってくるはず。
となると、
アップダウンがある、グルーヴのあるシナリオになるわけだ。

100点とった、
90点、80点……と下がっていくシナリオよりも、
よほど面白そうになるじゃない?



もっとも、120点取れないならば、
辞めてしまうかもしれない。

でも、120点を計画的に取るために、
前のシーンを犠牲にしてまで準備できるんだぜ?
計画的にやろうじゃないか。
伏線を仕込んだり、
一発で決めるためにいろいろな仕込みをしておけば、
ズバッとポイントで決められるはずだ。

そんな気持ちいいポイントがあれば、
「またそれが来る?」と思って、
しばらくは見られるものになるだろう。

ずっと100点を取る必要はない。
30分に一回ぐらい120点があって、
15分に一回くらい100近くがあれば、
全然名作になると思うがね。

ファーストシーンで100点取って、
以降一回も上がらないシナリオだってあり得る。
それは、
非計画的に、だらだら書いていたものだろう。


書いている人間だってバカじゃないから、
今書いたシーンの点数なんて大体わかる。
だから落ち込むんだよね。

そんな近視眼的な点数付けはしないことだ。
映画は1分置きに視聴率が出るものではない。
全体でよければよいのだ。

ストーリーが動く、
最重要ポイントはどこ?
それが何か所あるんだ?
10以下5以上はあるだろう。

そこで120点取ればいいんだぜ。
そのために、他のシーンがあるといっても過言ではない。

え? 一回も100点とか120点取れないって?
じゃあやめることだな。

書き続ける原動力は、
「俺は少なくとも一回は120点を書いたことがある」
だと思うんだよ。
うぬぼれといってもいい。
それはワンシーンでいい。
オール120点だと言うならそれはちょっと客観性が足りない。
でもどこかで燃えるような120点をワンシーン書いたことがないやつは、
どうやっても続かないと思うけどね。


100点を取れ。
そして120点を取れ。
何回も120点を取れ。
そしてラストシーンで100点を取れ。

間はその仕込みだと思うとよい。
posted by おおおかとしひこ at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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