そういえば昔生徒会ものってやたら多かったなあ、
ということを思い出した。
今はどうか知らない。
その深層心理について。
おそらく、「何者にもなるのが怖い」からじゃなかったかと思う。
特定のサークルだと、
特定の色がつく。
政治に興味があります、という程度ならいいが、
〇〇党の活動を応援しています、
になると途端に政治色が強くなってしまうやつ。
日本人の無宗教というのもそれに近くて、
初詣はいくし、クリスマスイヴはやるし、墓には入るし、
手を合わせることはするが、
特定宗教の色がつくのは避けたい、
みたいなやつ。
野球部でもサッカー部でも、ダンベル部でも、
その色がつく。
色のない運動部というのはないから、
文化部で、なるべく色のないやつにする。
濃いやつ、将棋部や天文部は色がついてしまう。
かつてはヲタクの居場所として、
SF研やアニメ研というのが80年代にはあったが、
今はそんなのなさそうだしなあ。
だから、
集まって孤独を避けたいが、
とくに集まる理由がなく、
何者かになるために何かを目指す人々ではない、
みたいな、繭のような機能として、
「何もないサークル」が必要だったんじゃないか、
って思ったんだよね。
生徒会ならばまあ決まってすることはないし、
予算を決めることを本気でやっている人はいない。
それは学校で与えられた役割だからやっている、
という程度のことだろう。
(掃除をするとかと同じ程度のもの)
何かのプロを目指すような、大会を目指すような、
「何者かになる」という夢や目標を、
まだ見つけられていない、
行き場所のない若者の行き場所としての、
生徒会があったんじゃないか、ってこと。
おっさんの、いわばスナックかもしれないね。
おっさんは別にビールが飲みたかったり、
つまみを食べたり、ママを口説くためにスナックに行くんじゃないんだよね。
何物にもなっていないサラリーマン、
という抽象的な存在になりたいときに、
スナックに行くんじゃないかと思う。
モブ(エキストラ)になりたいとき、みたいなことだ。
生徒会ものは、そういう若者の心理の反映だったんじゃないかなあ、
ってちょっと思った。
時代が下って現代、
生徒会ものはあまり聞かない気がする。
なくなってはいないと思うが、
まあいい加減ネタ切れというのもあるだろう。
だから、ゆるサークルみたいな考え方、
必死で何者かになろうとするのではなく、
ゆるい感じで集まる感覚のものが出来たのではないか。
ゆるキャンとか、ぼっちざろっくとか。
趣味がなく、何物にもなっていない若者は、
ただ何もないです、というのが恥ずかしくなっているような社会になってきた。
だから何かをゆるくやっている、
というようなところでアイデンティティーをとりあえず確保して、
でも本気じゃないんですよ、
的なことにしようとしている感じかな。
中学でバレー部だったけど、
別にいまバレーをやっているわけじゃない、
くらいの、いい加減なアイデンティティー、
という感じか。
大学のテニスサークルは、
まじめにテニスをやるために集まるのではなく、
とりあえず集まって彼氏彼女を探すためにある。
テニサーはそういう前向きの目的があるが、
生徒会は、そういうものもない感じ。
バンドものは面倒な人間関係もあるし、
そもそもそんな才能もないし、
という、
「それをみたらコンプレックスを感じてしまうもの」
が、どんどん毒抜きをされていって、
ゆるいからいいよね、
的なものへと進化している気がする。
つまり、生徒会ものは、
そういうゆるいサークルものになっている感じがあるんだよね。
今僕は自作キーボードをゆるくやっている。
別に設計したりコミケでブースをつくっているわけじゃないが、
色々改造したりキーキャップをつくったりはしている。
キーボード界で何者かになり、成り上がたいわけじゃないが、
なんとなくそこでゆるゆると色んな人と喋っていたい感じ?
ああ、これは中学や高校のときの、
部活の部室でだらだらしている感じだなあ、
と思って、
その空気に僕は浸っている。
(かつて弊社演出部がそうだったのだが、
コロナで新しい働き方になってしまったので、
すっかりその影がなくなった)
今秋葉原でこれを書いているのだが、
秋葉原には、そんな若者たちがふらふらしていることが多いような気がする。
まあ渋谷もそうか。
何者かになろうとすると、
コンプレックスを刺激するから、
何者でもない話をつくるのがいいのか?
それはまあ日常系としては正しいだろう。
変化がない、だらだらとやっていく系だ。
映画はそうではない。
劇的な変化を描くものだ。
だから映画には、生徒会ものはほとんどないんじゃないかなあ。
つまり、映画には目的のある部活が選ばれる。
日常系には、目的が強くないものが選ばれるのではないか。
何者かになるのが怖い若者たち、ヲタクたちは、
だから日常系と生徒会ものを好むのだろう。
2023年02月15日
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