昔360度型の映像企画を出したときに、
改めて映画とはなんぞやと思ったこと。
360度映像は、編集点が入らない。
入るものもあるが、
それはシーンチェンジのときで、
アップとロングが切り替わったり、
切り返しで人物のアップを抜くわけではない。
つまり映画的なモンタージュを捨てることになる。
ということは、
演劇的になるということだ。
さらに、
360度だから、
前方性がなくなる。
つまり、
椅子に座って前だけ注視していれば良いのではなく、
360度自由に見ることがウリだから、
どこで何が起こってるかが自由になる。
あるストーリーが移動して、
強制的に全員を同じ方向に動かすこともあろうが、
それだとスクリーンがデカくなっただけだから、
「みんなが同じものを見る」ことも捨てることになる。
つまり、360度いろんな所に、同時に見るべきものがあり、
その全てを一度に見ることはできない、
ということになるわけだ。
それは人生と同じようなものだ。
人は世界で起きていること全てを見ることができない。
よそ見してることもあれば、背後で起こっていることもある、
事件や進行は同時多発的で、
何に関わるかは自分で選んでいく。
ここまで考えて、
僕は360度映像は円形劇場だと思った。
円形劇場で同時多発的に何かがあり、
同時多発的に人が関わったり別れたりすればいいんだなと。
ただ喋りが同時に聞こえてるとうるせえなと思い、
パントマイム的な物語にすればいいのではと考えた。
音楽はどうだろう?
たまたま楽隊がそこにいれば音楽は奏でられるし、
街にスピーカーがあれば音楽は流せるが、
物語にあった、感情を増幅する、
劇伴は使えないと思った。
カメラワークはない。フィックスだろう。
外だろうが室内だろうが、360度の視点を確保するためには、
真ん中にカメラがいるべきだろう。
あとは、列車の運行表のように、
各キャラクターの進行表をつくれば、
各々の人生を表現できるはず。
とここまで考えて、
映画とはフォーカスするものである、
ということに気づくわけだよね。
つまり、
360度で起こっている全部ではなく、
一人の人(=主人公)をずっと追いかけるわけ。
もちろんそれに関連する重要人物にフォーカスすることもあるけど、
主人公メイン、主要登場人物サブ、
のようなフォーカスを当てることが、
人生から物語を切り離すことだと気づく。
無限にある空間、無限にある時間、
同時進行する絡んだ無限の因果の糸たちから、
主人公に関するものだけを切除したネットワークが、
ひとつの物語なんだよな。
で、カメラワーク、編集、音楽によって、
そのフォーカスをさらにフォーカスしたものが、
映画なんだな、
という、
ごく当たり前の本質にきづくわけ。
結局、この360度映像は、
「ストーリーものは難しい」として断った。
箱庭的な小さな話の同時進行で、
ちょいちょいストーリーラインが絡み、
なんてことを創作することは可能だけど、
だったら太い一本の物語の方が、
トータルで面白いと感じたからだ。
群像劇よりも一本の太い話が面白いことと、
僕は同じだと思う。
グループアイドルよりも、
ピンでやってる方が可愛い子が多いことと、
同じだと思う。
もちろん、グループアイドルならではの魅力はあるが、
じゃあ360度映像ならではって、
物語じゃないんじゃない?
って僕は思ったんだよね。
それこそグループアイドルの控え室の一時間みたいな、
時間を共有するドキドキみたいなことでいいんじゃない?
って言った記憶がある。
ピンマイクはつけておいて、
自分の見た方向だけ音が聞こえるようにすれば、
ひそひそ話も聞き取れていいんじゃない、的な。
それと映画とどっちが面白い?って思って、
僕はそれより面白い映画は死ぬほどあると思ったわけ。
映画的な物語は、
つまりはフォーカスである。
全ての人生を描かない。
ある一つのまとまりにフォーカスする。
つまり、その他を99%捨てる。
そのことによって、
芳醇さを確保するんだな。
初めて3Dの本格劇映画「アバター」を見た時も、
同じことを思った。
横向けないんだこれ、
前でやってるだけなんだ、って思ったんだよね。
3Dじゃないじゃんと。
前面性があるんだと。
これらが解決するのはオープンワールドまで待たなければならなかった。
しかしオープンワールドが出て思ったことは、
何をしていいか分からないってこと。
公園に放り出されて、色々あるけど、何すればいいの?
って途方に暮れる感じ。
何かを見つけて遊ぶけど、それが遊んだことになるのかなあという不安。
もっと面白いことがあって、自分はそれを見逃してるのでは?
という不安。
アナウンスしてくれよ、今これがアツいって、
と思う不安。
物語はその中で一番アツくて面白いものに、
徹底的にフォーカスしたものだ。
オープンワールドの99%は捨ててね。
逆に、そんだけフォーカスして、
オープンワールドに負けてるのは、
シナリオが悪いぜ。
2023年03月05日
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