2023年02月13日

【薙刀式】タイピングコンテスト

RTCの予選が凄いことになっている。
タイパーの猛者たちが荒ぶっている。
予選のe-typingが900越えって何事や。
腕を競う場が復活してよかったね。

で、そもそもタイピングコンテストって何だっけ、
と薙刀式の立場から眺めてみる。


もともとの、
タイピングコンテストの成り立ちは、
清書をする秘書の立場のコンテストである。

ある判読が難しい手書きの文章があり、
それを誤読を防ぐために綺麗にタイプする、
というのが秘書の役割だ。

その、タイピング技能だけを取り出したものが、
タイピングコンテストだ。

つまり、
タイピングコンテストは、
現代の、
「各自が文章を書くための道具としての、
タイピングの技能コンテスト」ではない。
「清書コンテスト」である。

ここが少し混同されていると思う。

もちろん、
ある程度までは、
創作のためのタイピング技能と、
清書のためのタイピング技能は、
かなりの相関がある。
秒5カナくらいまでは、同一能力といえよう。

しかしそれを超えたあたりから、
まったく別の技能になると思う。

指の運動能力や連絡機能や、
ある言葉を認識して即時に運動を組み立てる能力などの、
文章作成とは別の異能が、
幅を利かせるようになると思う。

qwertyでは15打鍵/秒。
JISカナでは10打鍵/秒。
これはトップスピードの話ではない。
平均スピードの話だ。

わかりやすさのためにカナで議論すると、
575の俳句を2秒で書ける能力である。
それも一首を捻り出せばいいのではなく、
競技中このペースで打つということ。
仮に10秒で終わる競技だとしても、
5首を10秒で書くわけだ。

これは、文章を書く力とはまるで異なる、
「写し力」という別の力だ。

テストのノートを写す力を想像しよう。
百人一首を200秒、3分ちょいで写せるわけ。
それは創作したり、鑑賞している時間ではなく、
「写すという労働に特化した技能」の時間である。

もちろん、内容の理解や記憶をしている場合ではない。
単なる右から左へ処理する技能だけでないと、
これはうまく働かないだろう。


「この技能が何の役に立つか?」
を議論している場合ではない。
これはスポーツである。

棒高跳びがかつては城塞越えの能力を競っていたが、
現代ではただの競技となり、
城塞越え自体をしなくなったのと、
僕は同じだと思う。
まさか、
秘書技能検定コンテストではあるまい。
この優勝者がもっとも雇い主の汚い手書きを、
きれいにタイプする技能が優れているわけではあるまい。

競技は、競技化した時点で、
その意味を失う。
棒高跳びは初期の頃は城塞越えコンテストだったが、
競技として長くやっているうちに、
元の意味を失ったことに似ている。


ちなみに歴史を鑑みると、
初期のタイピングコンテストは、
タイプライターのレミントンが主催である。

2本指タイピストと10本指タイピストがいて、
サイトメソッドとブラインドタッチがいて、
10本指ブラインドタッチこそが、
スピードコンテストを制した歴史があり、
つまりは技術開発において、
歴史的意義のあったコンテストだ。

だが数年経つと記録の伸びが鈍化して、
コンテストはそのうち行われなくなった。
技術開発が一通り終わり、その技術が浸透して、
競技者の力が平均化したからだ。

タイプライターの普及が目的だったコンテストは、
その一定の目的を果たして終わっただろう。
wpmという単位が出来たのもそのときで、
1 word = 5 charactersの単位が出来たのもこの時だ。


RTCが何のために行われるのかは知らない。
もしリアルフォースというキーボードの宣伝をしたいならば、
なぜこのキーボードがタイピングにむくのか、
そして競技者の技術は普通の人と何が違うのかを、
解説して啓蒙するべきだと思う。
その啓蒙こそがコンテストの意味だと思うが、
まだただの花火でしかないのが、
僕は勿体無いと思う。



さて、
薙刀式は、タイピングを効率化する配列である。

このタイピングは、秒5カナ程度を基準にしていて、
競技レベル秒10カナ程度を基準にしていない。
普通の人の指の技能を基準にしていて、
競技者の身体能力を前提にしていない。

だから薙刀式は大会に出ない。
競技者向けの配列ではないと思うからだ。

その代わり、1500字/10分、5000字/hで創作する能力がある。
百人一首を3分で写す能力はない。

「一ヶ月かけてなるべく多く創作文を書く」
コンテストがあるならば、
薙刀式はいいところに行くと思う。
数分で猛烈に写す能力はないだけの話だ。

薙刀式は秘書のための配列ではない。
作者のための配列である。



もちろん、薙刀式を使う競技者が出れば応援したいが、
いや使う道具が間違ってるやろと僕は突っ込むだろう。
(そんなことはないと思うが、
もしかしたら秒10カナで最速かも知れない。
なにせまだそこは試されてもいない)
新配列解禁されたら、お祭り参加で記念出場するけどさ。

リアルフォースは秘書のためのキーボードを目指しているのか?
その辺の立ち位置を明確にしたほうがいいと思うけど、
まだ祭りレベルなんだろうな。


秘書のためのタイピングコンテストは、
秘書とレミントンタイプライターをセットで購入させ、
レミントンタイプライターの普及となった。

RTCは、リアルフォースとタイパーをセット売りして、
清書業務を売るつもりだろうか?
そうではないよね。みんな今自分で打つもんね。

この、時代の差異を議論せずに、
闇雲にイベント化することは、
競技の空疎化を生むと僕は思う。

僕はコピー打鍵部門のほかに、
創作打鍵部門をつくるべきだと考えている。



まあコロナ明けのイベントが欲しい気持ちはわかる。
来年以降を考えて、行動した方がいい。
posted by おおおかとしひこ at 09:11| Comment(2) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>qwertyでは15打鍵/秒。
>JISカナでは10打鍵/秒。
>これはトップスピードの話ではない。
>平均スピードの話だ。

彼らの瞬間的なトップスピードははるかに速いはず。
とすると、ルールで薙刀式やほかの新配列が使えたとしても配列エミュレータがついてこれるかは疑問です。

たとえば、Hachikuは入力がたまると一時的にキー押しを受けつけなくなります。
間に合ったとしても、変換にかかる数ミリ秒の遅延が勝負を分けるかもしれません。
Posted by とる at 2023年02月13日 22:00
>とるさん

F1みたいに、エミュレータチームとタイパーとが、
事前にチューニングテストしないといけないかもですね。笑

リアルフォースのNキーロールオーバーは、
内部のマイコンにスタックしてからPCに送ってるはずで、
じゃあ自作キーボードでその仕組みをつくって、
何が反則なのかという気がしないでもないですね。

競技用のガリガリのチューニングの自作キーボードも見てみたいですね。
マイコンのクロック周波数からして違ったり、
アクチュエーションをギリギリまで攻めたりしてるはず。
Posted by おおおかとしひこ at 2023年02月13日 22:30
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