2023年02月26日

【薙刀式】デファクトスタンダードと合理性

現在スタンダードな何かは、
合理性の観点から最も良いものが広まっているとは限らない。

たまたまそれが先に広まったあと、
もっと合理的なものがあったとしても、移行コストのために、
非合理なものから動かせないものがある。

身近な例で、エスカレーターを思い出した。


関西人が東京に来てびっくりするのは、
エスカレーターの右開けだ。

関西では左開けだ。
新幹線に乗ると、
新大阪では左開けで乗ったはずなのに、
東京駅に来ると降りる時は右開けになる。

どこで人種が入れ替わったかは分からないし、
人間の中にフォッサマグナを超えたかどうかの磁場検知装置はあるまい。
なので、
「周りに合わせる」日本人の習性こそが、
その習慣をキープする。

で、関西人の僕は、
東京の右開けを非合理なアホのすることだと考えている。


関西の左開けは合理的だ。
なぜなら、多くの人は右利きで、
右手でエスカレーターの手すりを持ちたいからだ。
そして体の右側にカバンがある確率が高い。

だから左開けだと、急ぐ人がスムーズに動ける。
荷物のない側を行くことになるからだ。
なんなら関西人はイラチなので、
動いてるエスカレーターの上で走ったりする。
階段よりナンボか早いだろうとね。

関東を中心とする右開けは、
追越車線のアナロジーだろうか?
東京で右側を急ぐと、
デカい肩掛けカバンに当たったり、
トランクを避けることになりイライラする。

そのたびに、
東京人は合理性を尊ぶ人間ではなく、
もっと別の原理、
たとえば周りに合わせることで自我を殺すような、
そういうものに従う羊どもだな、
と思うことになる。

そういえば上京初日にそのことに気づいて、
全員が馬鹿に見えた。
これからこの馬鹿の中で戦わなければならないのか、
と思ってうんざりしたなあ。



エスカレーターの片側開けは、
いつ、どのように発生したか、
誰か調べてないのだろうか。

関西人はイラチなので、
エスカレーターで止まってるくらいなら階段を駆け上がる。
動いてる歩行用エスカレーターで走れるなら走る。
その時ぶつかって「邪魔やんけ」とバチバチがあっただろう。
それを避けるために合理的な動線が自然とできたような想像がつく。
つまり、
エスカレーターは基本加速装置で、
遅いやつが休むために右側寄せがある。

それとは別に同時発生したのが関東式だろうか。
関西人ほどイラチではなく、
我も強くなさそうだ。
誰かがポスターで啓発して、
それに盲目的に従ったようなイメージが勝手に僕の中にある。

そもそも関東では、
「急ぐ人のために右側をあけましょう」
的な啓発のような気がする。
関西だと、
「止まる人は右側で休んでください」
の意識が強いように思う。
デフォルトの意識の差かもしれない。

何せ大阪人は世界一歩くのが速い民族だ。
東京に来て皆の歩く速度が遅すぎてびっくりした。
いまだに僕は移動中何人も追い越す。
移動は速い方がいい。合理だ。


さて、
デファクトスタンダードである。

仮に関西に、関東方式に従えと命令したら、
「なんでやねん」と反発されるだろう。
「合理性を捨てる意味がわからん」と言われるに違いない。

仮に関東に、関西式にせよと合理性を説けば、
「そもそも皆が立ち止まるべき」と、
正論を振りかざして、
一地方の合理に従わないだろう。

そして今は「立ち止まるべき」推奨に流れが変わっている。
(定着はしていない)


関西で左側を駆け上がる者は、
烏合の衆には属さん、と我先に先頭に立ちたい者たちだ。
そのために最短距離を進みたい人たちが多いように思う。
関東にそういう人は少ない気がする。
衆に群れよ、という行動原理があるように思う。
人口密度の差が、
行動原理を作っているように思う。

qwertyは、だから関東では覆らない気がする。
烏合の衆どころか、
非合理だが権威の傘を着れることに喜びを感じる、
虎の威を借る狐が多い気がする。
あくまで関西の比だけど。

qwertyは、だから関西で覆せそうな気がする。
合理的な最短動線を好む人は、
関西に多そうだ。
勝手なイメージだが九州男児もかな。

薙刀式がどのへんで受けているかはなんともだけど、
関西人の方が好きそうな気がする。
関東で受けるのだとしたら、
「烏合の衆にはなりたくない逆張り民」に、
のような気がする。
あくまで肌感だ。
とはいえ、関西関東いうほど広まっているわけではないので、
1万人とかいかないと統計も取れないけどね。



デファクトスタンダードが定着するには、
デファクトスタンダードでなければならない、
という強い思い込みと、
デファクトスタンダードから外れた時の恐怖が、
一体となっているはずだ。
つまり求心力と、離れた時のペナルティね。

qwertyに求心力があるとは思えないが、
離れた時のペナルティがでかすぎる。

なんなら一生qwertyが使えなくなるリスクがある。
(物理的に使えなくなるわけではないが、
心理的にアホらしくて使う気がしないという意味)

この恐怖心を減らすには、
「私はオリジナリティがある」
ということに覚悟を持ってる人か、
「合理な方がマシ」という人か、
「腱鞘炎などで二度とqwertyやノーマルキーボードに触りたくない」と、
qwertyに恐怖を持つ人あたりでないと、
なかなか転向はしないと思う。

「なんでみんなとちがうの?」と聞かれて、
モゴモゴする人は、デファクトスタンダードから離れられまい。


仮に関東で、
誰もエスカレーターに乗っていない時に、
右側に乗って左側を開ける勇気があるか?
僕はあるね。
(混んでる時はトラブルを避けるためにやんないけどさ)
posted by おおおかとしひこ at 09:51| Comment(2) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
関西のエスカレータの左開けは、一説によると大阪万博のときに欧州で主流であった右側に立つルールを採用したそうですが、今では本当かどうかわかりません。

エスカレータでは歩くなという条例(埼玉県)により、そのうち右も左も開けなくなるのかもしれません。
Posted by Ken'ichiro Ayaki at 2023年02月26日 21:08
>Ken'ichiro Ayakiさん

ああ、万博かー。
新技術お披露目と同時に、
マナーも新開発みたいなことですね。
普及させたかったらそれごとやれ、的な。

埼玉には「どけやオラ」とガラの悪い関西人はいないので、
そのうち定着するかもですねえ。
なんという不合理。
最近の地下鉄、深すぎて階段は死ぬ。
Posted by おおおかとしひこ at 2023年02月26日 22:30
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