2023年03月29日

【自キ】はんだ付けという入門障壁

自キ入門で、はんだ付けが(心理的)障壁になってるのは、
とてもわかる。何せやったことないし、知らないものだからね。

でもそれが、
「部品同士を金属経由で電気的に接続すること」
と理解できれば、
電気接着剤、くらいに考えられると思う。


もちろん、専門的な知識はある程度いるんだが、
誤解をおそれて「詳しくは調べて」という記事よりも、
いや、はんだなんて、
新しい種類の電気的接着剤なんです、
という方が、「やれそう」と思えると思う。

そこは言葉の魔術師がフォローしてやるべき部分だ。

もちろん、300度に加熱することの危険は、
注意しすぎてしすぎることはないし、
部品同士をそこまで加熱することの、
手先の器用さ的な難しさはあるものの、
一旦「両方の部品を300度まで加熱、
そこに300度の液体金属を渡して酸化被膜を張り、
自然冷却して固体化する」
という原理さえわかれば、
あとは自力理解できると思うんだよ。

それよりももっと大事なことは、
はんだ付けは電気的接着と脳の領域を開けることで、
「電子回路というものは、
部品を接続した電気で動くネットワークである」
という理解ができることかな。

だから、部品として、
キースイッチ、ダイオード、マイコン、
TSSR端子などがあり、
電気的に接続すれば回路として完成する、
ということが理解しやすいのではないかと思う。

はんだ付けスキルそのものはたいして重要ではなくて、
部品同士の電気的ネットワークが、
キーボードを形成している、
という理解こそが、
自作キーボードの基礎になる考え方だろう。

それはつまり、部品を変えたり、
ネットワークを変えれば、
キーボードの挙動が変わることを意味するわけだ。

じゃあこれをこうしたらこうなるだろう、
あれは動いてるから、その部分だけこっちに組み込もう
(つまりコピペしよう)、
なんてことが可能になる、
と理解できるはずである。


自作キーボードのおもしろいところは、
これまで「ひとつのもの+せいぜい有線コード」
だったキーボードが、
「部品の集合体」に分解する、
その瞬間ではないかと思う。

キーボードいじりを始めれば、
キーキャップは交換できるし、
(対応してれば)キースイッチも交換できる。
なんなら基盤ごと別のケースに移植することだって、
可能であることが理解できるはずだ。

じゃあさらに基盤の中までいじろうぜ、
ということが出来るのが、
自作キーボードというわけ。


そんな風にして、
「ひとつのものだったものが、
実はパーツごとに分かれてて、
それらの機能の集合体であった」
と理解することが、
大袈裟にいえば自然科学がやってきたことだ。

分解と部品とシステムの理解、とでもいえるかな。

これまではキーボードというひとつのものだったが、
それらはオカルトではなく、
理解できる分解可能で再構成可能なものとして、
キーボードを捉えることが可能になるわけ。


その、認識の変化、
パラダイム転換こそが、
自作キーボードの一番のエキサイティングなことだ。

それを、はんだ付けを怖がることで、
見逃してることが実に勿体無いと思うんだよね。


はんだ付けはあくまで電気的な接着剤。
そう考えれば、
あとは「ある狙いを持ってパーツを組むこと」こそが、
自作キーボードの醍醐味であることがわかるだろう。

もちろん、それには設計の知識や、
どのパーツがどのように機能してるのか、
という詳しい知識が必要になるのは当然で、
でもキーボードのことを理解したいなら、
どのキーボードでもそういう原理で動いてるんだからね。



僕らは理系だから、
世の中のあらゆるメカがそうやって動いてることは、
日常レベルで意識している。
でも文系はそうじゃないらしい。
ひとつのものはひとつのものとしてしか認識してなくて、
それらがパーツで組まれてるシステムだと理解していない。

パソコンが壊れたらパソコンを買い替え、
車が壊れたら車を買い替え、
服がダメになったら服を買い替えるみたい。
パソコンのうちモニタだけ直せば全とっかえの必要はなく、
車のバッテリーを充電すれば全とっかえの必要はなく、
服のボタンを付け直せば全とっかえの必要はない、
かもしれないのに、
「ひとつ」と認識してるとそうなるっぽい。

人間だって骨や筋肉や内臓からできてるのに、
他人は「ひとつ」のものとして認識してるっぽいね。

見た目や機能はひとつなのに、
中身はパーツと回路の集合体であり、
それらは分解したり交換したり拡張可能である、
そういう風にキーボードを捉え直すこと自体が、
おもしろいと思うんだよな。


それが面白くない人は、
自作キーボードむいてない。
はんだ付けが障壁になり続けてくれて、
余計な阿呆が入ってこないのはとてもありがたい。
posted by おおおかとしひこ at 12:12| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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