イマイチだった短編を書き直した。
書き直す方針として、タイトルを変えるとうまくいった。
最初は、
「憧れのクリーニング屋さん」だった。
若い頃クリーニング屋さんを覗き見して、
美人に惚れていた男が、
出世してスーツを着る仕事になり、
初クリーニングをその店に出しに行く。
それを「二周目」というタイトルに変えただけで、
構成が全然変わり、より面白くなった。
前者のタイトルだと、
ヒロインへの片想い、
つまり過去にフォーカスされたタイトルだったが、
後者のタイトルだと、
「人生は二周目からが勝負です」
というラストに落とせる、
未来へ向けたタイトルになった。
「何を描いた話か?」
という問いに答えることはなかなか難しい。
作者すら、本当のところは把握してないこともある。
特にイマイチな話の場合、
背骨がぐにゃぐにゃになってることが多いわけで。
そもそもこのストーリーは、
憧れのクリーニング屋さんという、
シチュエーションやキャラクターありきで思いついた。
つまり点なんよね。
まあまあキャッチーなタイトルだから、
いいかと思ったんだけど、
そこでヒキのある部分は、
テーマと関係ねえな、と思ったわけ。
で、
「これは何を描いた話か?」を問い直すわけ。
ぐにゃぐにゃの背骨だけど、
オチはなんだっけ、
ハッピーエンドなんだっけ、バッドエンドなんだっけ、
と考えて、
「人生は周回遅れかも知れないが、
一周目で事故ることもある、
二周目からが勝負だ」
というビターエンドながら希望のある話なので、
そこにフォーカスするタイトルに変えると、
構成が全く変わったんだよね。
最初のタイトルだと、
時系列通りに描いていた。
ところが「二周目」にすると、
冒頭のシーンは、
二人が飲みに行く店を探してさまよい、
繁華街を一周してしまった場面からスタートになった。
スーツ仕事に転職する男と、
旦那を亡くした未亡人、
二人の人生後半戦に入った男女は、
繁華街を二周目に入る、
というラストシーン直前から、
話を始めたら、
「二周目」に落ちる構成となった。
あとは回想として時系列にするかなあ、
と思ったが、
回想の入れ子にすると構造的に面白いや、
と思い、
時系列を入れ子にすると、
より引き締まった話になった。
タイトルを変えただけで、
全体の構成が大きく変わり、
テーマを表現しやすい構造に、
勝手にストーリーがうねうね動いた感じ。
タイトルの付け方には2通りある。
面白そうなコンセプトからつける方法と、
結論(テーマ)からつける方法だ。
前者は点であり、面白ポイントからつくられる。
後者は線ないしテーゼ。
タイトルは、
その線からヒントを得た点でも良い。
前者は派手でキャッチーなものを作りやすく、
後者は地味なものになりやすい。
キャッチーなのはキャッチーな名詞であることが多く、
地味なのは動詞であることが多い。
「二周目」はとても地味なタイトルだから、
もうちょい派手にしたくなる。
「チェッカーフラッグ」くらいキャッチーな、
周回遅れを示す何かがあれば良かったが、
そんなものはなかったので、まあいいやと覚悟した。
間違うくらいなら、
本質に忠実なタイトルにしよう。
地味で目立たないからヤバいと焦らないことだ。
その地味な話はその地味なタイトルが、
一番相応しいのだ。
「憧れのクリーニング屋さん」では、
ヒキはいいものの、
結論の落ち方がぐにゃぐにゃで、
典型的な入口詐欺で終わっていた。
だからそれを立て直すために、
「この話の本質は何だろう?
この話は何について描いたものだろう?
この話の結論、テーマはなんだろう?」
と問い直し、
全体に背骨を通したわけだ。
そのことで、
そのタイトルに相応しくなるように、
ストーリーが勝手に形を変え、
それに応じてエピソードが並び替えられる。
こういう時は、
白紙から書き直した方が早く書ける。
前の原稿を気にしてたら良くならない。
構成が丸ごと変わるからね。
こんな風にして、
タイトル変更は全体に大きな影響を与える。
「チェッカーフラッグ」だったら、
ゴールシーンが結論になるから、
また全然違うストーリーになるだろうね。
じゃあ地味なタイトルより、
派手なタイトルにしたいのは何故かというと、
派手な話じゃないときに、
不安になってるだけだと思う。
派手な話が書けてればいいが、
地味な話は地味なタイトルなんだよ。
それでいいと思うしかない。
もし派手なタイトルの話が書きたかったら、
派手な話にしなければならない。
嘘をつかずに誠実にやることだ。
「憧れのクリーニング屋さん」にするんだったら、
憧れのクリーニング屋さんは実は店の裏で売春してて、
ついにセックスできる日が来るのだが、
実際やってみたらたいしたことなくて、
クリーニングに出した染みが、
微妙に落ちてなくて、
なんて話にしたほうがいいかも知れない。
でもそれは、派手だけどテーマがないなあ、
なんてことまで考えて、
地味目の話にすることにした。
ローキックみたいだけど効く話にね。
そこは覚悟みたいなもんだね。
その代わり、鋼鉄のローキックにすればいいよ。
一発で立てなくなるような、
深い話にすればいい。
最後まで書けない、イマイチな話はないか?
最後まで書いても、なんだか来ない話はないか?
タイトルを変えてみると、
うまく行くこともある。
目の前の原稿を忘れて問うのだ。
これは結局何をしたかった話なのか?と。
あなたの意思ではなく、
話が持つ本質まで潜ってみることだ。
今奇形として生まれているのだから、
正しく生まれたかったのは、
どのような形か?を本質から問うと良い。
そして、形を変形しやすいように、
一回蛹の中で液体に戻してやる。
あとは本質さえ掴めていれば、
勝手に組み変わって生まれ変わるよ。
前の原稿を見たら、
本質から外れた変形を起こすので、
見ない方がいいぞ。
だってそれは奇形なんだからさ。
世の中には、派手な話と地味な話がある。
半々くらい産んでいけばよい。
2023年05月26日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック