2023年05月30日

小さなエピソードを立たせよう

前記事の続き。

ストーリー全体を立たせることはとても難しい。
現実的なところから着手しよう。
小エピソードを工夫することからだ。


小エピソードなんていくらでもある。
仲直りする、
恋する、
決定的な亀裂が生じる、
喧嘩して勝つ、
中庸の策を出す、
一手先んじる、
などなどだ。
そういうときに、
平凡な、ベタなやつを出しても印象に残らない。

たとえば、
「女子新入社員が、先輩に優しくされてキュンときちゃう」
という小エピソードが必要なとき、
どうする?

高いところのものを取ってくれた?
パソコンの分らないところを教えてくれた?
書類の不備を教えてくれた?
この程度じゃつまらないよね。
どこかで見たような、ベタというか、平凡なものだからだ。

じゃあ一端シンキングタイムを入れようか。






仕事のあとに飲みに行った時に、
愚痴を言い出した、って所で描くかな。
つまり、会社ではカッコイイ先輩なんだけど、
実は人間だった、というギャップで描こうとすると思う。
このときにどういう愚痴によるかなんだけど、
それが今後の展開にかかわっていることだと、
意味が出てきていいと思うがね。

そして飲みですらなくてもいいかもしれないね。
全然違う印象的な場所でもいい。
立ち食い蕎麦屋とか、駐車場でもいいくらいだ。
これも屋上で缶コーヒーなんてベタにしなければ、
立っているエピソードに近づく。


ふつうに会社でキュンとするような、
新しいエピソードがあれば別だけど、
それで勝負できるならばそれがベスト。
そうじゃないときは、搦め手という作戦もあるよ。

そのときに、
グッとくる言葉とかを思い付けば、
それだけで普通じゃないエピソードになるので、
それを思い付けば勝ちになるだろうね。

どんなラブストーリーでも、
好きになるきっかけに、印象的で、
立っているエピソードを持ってくるものである。
それは、それがラブの第一印象になるからだね。
そこさえうまく流れれば、
そのあとは多少ベタな話があっても構わない。
すでに立っているストーリーだから、
立っていることを脅かすわけではない。
立っていないベタなストーリーの途中に、
いきなり立っているエピソードを入れてもあまり効果的ではない。
まあ全部立っていないストーリーよりなんぼかましだけど。

小エピソードの切れのよさで、
そのストーリーの質が決まることもある。
単なる回想話が切れがよくなるだけで、
とても面白くなることはよくあることだ。


現実では、
女子が男子を好きになるときは、
徐々に好きになるものだ。
立っているエピソードだから好きになるのではなく、
ちょっと好きなところがあり、
また好きなところを見つけて、
などのように、気づいたら近くにいたいと思うようになっている、
という感じが多い。

しかしそれはドラマティックではない。
ドラマティックというのは、
一撃で決着をつけることである。
(拳の決着でも同様)

だから、切れの良い、立っているエピソードで、
切って落とすのがいいと思うよ。


プロットに書いてある、
具体的なエピソードがない、
抽象的なものを書くときに、
小エピソードが必要になるときがある。

それを単なるベタな、
先輩が高いものを取ってくれた、キュン、
にしないほうがいい、ということ。
他にない、
そういう好きになり方があるよなあ、
という発見が、
創作そのものだと思うよ。
posted by おおおかとしひこ at 07:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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