2023年05月10日

【薙刀式】新配列が出来なくなってること2

打鍵技術的な問題に深入りしてみよう。
実際に打った感覚がないと、
その是非は判断しづらいと思う。


結局、全てはトレードオフだ。
AにしたらBが減る。
Bを増やしたらAが出来なくなる。

その天秤が完全にトレードオフだと見るか、
少しでも天秤が傾いて感じるか、
という主観的な感覚で、いろいろな要素は決められていると感じる。

1 シフトにしたことによって、単打ロールオーバーを捨てたこと
2 左右交互を重視してアルペジオを捨てるか、
  アルペジオを重視して左右交互を捨てるか

あたりがよくあることだろうか。



1 シフトにしたことによって、単打ロールオーバーを捨てたこと

なぜカナ配列は同時シフトやら前置シフトがあるのだろう。
それは30範囲、手の届くところにカナを収めるためである。
そうでなければ、原理上50キーのキーボードが必要だからだ。

これらを全てブラインドタッチすることは不可能だと思う。
だから近くのキーに、シフト機構を使って重ねるのだ。

問題は、そのシフト機構にしたせいで、
単打のロールオーバーを捨てたことだ。

シフト機構がなく、単打だけで打てる配列、
たとえばQWERTYローマ字や、
無拡張のローマ字系は、
原理上いくらでもロールオーバーで打鍵間隔を詰められる。
秒20打まで詰めるトップタイパーもいる。

順番さえあっていればよいから、
前のキーを離さずに次のキーを打ってもよく、
何キー同時に押されたまま離さなくてもよい。
(nキーロールオーバーのキーボードなら)

ところが、同時シフトならば、
同時に打ったのか、ロールオーバーしたのかの、
区別をつけなればならない。
そしてそもそも人間にそれは可能か?ということだ。

たとえば秒10打で、
単打ロールオーバーと同時押しとを区別できるだろうか?

単純なロジック「〇ミリ秒以内に二つを押せば同時とみなす」
で考えたとしても、
平均100ミリ秒で打つとして、
50ミリ秒以内に二つを押せばOK、
と設定したとしても、
同時なのかロールオーバーなのかを分けることは難しい。
ということは、30ミリ秒以内に、
とかに短く設定しないといけなくなる。
それは人間には毎回不可能な数字だ。

(親指シフトの判定時間は100ミリ秒。
つまり、最低でも101ミリ秒、
ロールオーバーは離さないといけない)

「同時打鍵は高速打鍵になると判定が困難になる」
という根拠がここだ。
もちろん、これを避けるために、
単純でないロジックを研究しているエミュレーターもあり、
エミュレーター側の工夫で乗り切る手もある。

だが原理上、
同時と単打ロールオーバーを区別することは、
速度が上がるにつれて難しくなる。

もっとも、
親指シフトの想定打鍵スピード、
「指が喋る」は秒3〜5カナで、
秒10などは設計想定外だから、
100ミリ秒でもなんら問題ない。

あるいは薙刀式も、
日常スピードは秒5〜7くらいだろう、
という読みでつくられている。
新下駄のkouyさんが、
秒8やそれ以上に挑戦していると思うが、
かなり難易度は高くなるだろうな。


そもそも、同時打鍵はじめ、
新配列のシフト機構は、
競技タイピングを想定していない。
いや、むしろ、競技タイピングの速度が、
日常をはるかに超越していて、
現実的ではない速度であるとすら言える。

ちゃんと計っていないけど、
先日のKIHでの動画で、
タイパーだとしても日常文を、
秒10打で打つことはないだろう。
人間には考える時間があり、
変換などの時間がある。
そこらへんの手間暇があるぶん、
いかにタイパーが秒15打で打ったとしても、
日常文という実用では、
意味がなくなるはずだ。

新配列でタイパー専用はあまりないが、
競技タイピング専用(だけではないが)のいろは坂では、
そうしたシフト機構は、
原理上打鍵感覚をいくらでも詰められる、
前置や後置シフトが採用されている。

しかし打鍵数は増えて、うっとうしくなる。
日常では、じゃらんと打つよりも同時に打ったほうが気持ちよい。

だから、新配列では、
打鍵の気持ちよさ、便利さをとって、
競技に必要な(異常な)スピードを捨てている、
ともいえるね。



2 左右交互を重視してアルペジオを捨てるか、
  アルペジオを重視して左右交互を捨てるか

たとえば、
右に母音、左手に子音を置いたローマ字配列
(行段系と呼ばれる)では、
左右交互打鍵がメインになり、
片手アルペジオの機会が減る。
右手アルペジオは二重母音しかなく、
左手アルペジオはほぼ0になる。
(thiなどの特殊なマイナーケースしかなくなるだろう)

打ちやすいアルペジオは左右交互より速い。
左右交互は、打ちにくく遅いアルペジオよりは速い。

だからアルペジオと左右交互では、
どちらが速いとは言えないが、
左右分離型は、
これらの議論を捨てて、左右交互のみになる、
ということだ。

もちろん、それぞれの配列の考え方がある。
新JISや月配列は左右交互重視だし、
飛鳥や薙刀式ではアルペジオ重視だ。

打ちやすい片手アルペジオは高速だが、
打ちにくい段越えや同手連続が発生する可能性がある。
それを避けるためには、
連続しにくい組み合わせを同じ手に集めるやり方がある。
新JISはまさにこうしてつくられ、
左右交互配列になったわけだ。
だから左右交互の限界までしか打てなくなるだろう。
(それがどれくらいかは分っていないが、
経験上、右が左を追い越したりする事故がよくある)


ざっと思いつくのは、
この二つかな。

他にもいろいろあるだろうけど、
大体使っている本人は、
「気づいていない」ことが多い。
他人の配列をつかって初めて発見することのほうが多い気がするなあ。



最近の薙刀式でいうと、
弱点の左薬指の負荷を下げていることで、
Bの頻度が上がっている。
Bをあまり使わない配列に比べたら使いにくいが、
薬指を多用して疲れるよりましだ。
その辺の天秤のバランスを調整中だったりする。
何を取り、何を捨てるか、
それぞれの配列で変わってくるんだよね。
posted by おおおかとしひこ at 10:52| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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