2023年06月10日

勝負シーンはどこか

全てのシーン、全ての台詞が名作であることはほぼない。
どんなものでも捨てる部分があり、
そこはつなぎになっていることが多い。


リライトで気を付けることはそこだ。

やるべきでないことは、
勝負シーンを改定してしまい、
勝負じゃないシーンを保存して改定しないこと、だ。

勝負シーンとは、
たとえば泣けるシーンでもいいし、
大爆笑でもいいし、
キュンとするシーンでもいい。
感心するところでもいいし、
驚くところでもいい。
とにかくその作品で、
ふつうじゃ書けない、滅多にない独特のシーンであることだ。

勝負シーンというと一回勝負を連想するから、
勝負シーンというより、
「良いシーン」というべきだろうか。
しかし、
単純に「良いシーン」じゃだめで、
その作品のアイデンティティーになるような、
独自に良いシーンのことを指そう。

それはいくつあるかな。
1じゃ足りないね。
2か3でよい。
10あってもいい。
100はないだろう。
仮に5としようか。


リライトとは、
その5を改定せずに、
残りを全部書き直してもいいくらいだ。

つまりその他は、
説明だったり、段取りだったり、
ストーリーを前に進めるためだけのシーンだったりするからだ。
とくにグッと来ないとか、
爆笑してしまうとか、ニヤニヤしてしまうとか、
感情がふれないような、
ふつうのシーンだったら、
どんどんリライトしてしまって構わない。
だって「良い」シーンじゃないんだもんね。

あるいは、いかに良いシーンであっても、
勝負シーンのためならば、
改定を辞さない、ということだってあり得る。
勿体無いが、ものすごく良いシーンのために、
まあまあ良いシーンを改定することは、
まれに良くあることだ。

つまり、重要の順をつけようということだ。

リライトはつい頭からやってしまうから、
全体を見ながらリライトすることは難しい。
だから、
このシーンとこのシーンと……を、そのまま保存して、
そこは勝負のために置いておき、
その他を改定して、
うまく勝負シーンにつなぐことを考える、
というのがリライトですること、
と考えてもよい。


もっとも、リライトにはいくつかの段階があり、
これは後半だろうかね。

リライトの前半では、
ストーリーそのものを改定して、
練り直すことがよくあるからね。
大体それらが決まってきてから、
表現、伝え方でそれをコントロールする、
という後半の段階が、
そのリライトの基準かもしれない。


にしても、
「このシーンがこのストーリーの勝負である」
「そこが成功すればこれは成功」というシーンが、
いくつか必ずあるはずだ。

なかったら、平凡なものでしかないだろうから、
そこはオリジナルないいシーンを書いてから考えろ、
としか言いようがないが。


そしていったんできたら、その良いシーンを変えてはいけない。
オリジナリティ、アイデンティティを捨てることになる。
それら以外をうまく書き直して、
それらに接続しなおす段取りを組みなおすといいだろう。

もっとも、それがそんなに良いか?
ということもあるので、
あるいは別のものがアイデンティティーだったか、
ということもあり、
見極め自体が難しいんだけどね。
posted by おおおかとしひこ at 01:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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