2023年05月20日

【薙刀式】突き刺し打ちか、撫で打ちか

指を垂直に下ろし、指先で打つ突き刺し打ちと、
指を寝かせて、指の腹で打つ撫で打ち。

大きく分けて二つの流派がある。
出身によって異なる気がする。 


もともとのピアノの伝統は、
突き刺し打ちだ。

こうしないと打鍵力が足りないからだ。
ある程度体重を預けないと、
フォルテなど打てない。

なので打鍵力を強くするには、
腕の力を使うため、
それを伝えやすい手の形として、
突き刺し打ちに特化した。

タイプライターの伝統でも、
基本的にこれを踏襲した。
ハンマーで印字する力を物理的に伝えるには、
腕の力を伝えやすいフォームでないと、
無理だったと思われる。

これを踏襲した、
PCキーボードは、
メカニカルの次代(アルプス軸など)の、
Windows以前だと、
同様に突き刺し打ちフォームが主流であったろう。

メンブレンキーボードが出来る前までは、
突き刺し打ちしか存在しなかった、
と言ってもいいのかもね。
だから、「伝統的方法」を遵守する派閥は、
これが「ただしい」と指導すると思う。

(僕は間違ってると思う。
とくにそれを強制することはないと考える)


メンブレンキーボードが生まれてからは、
底打ちしないとオンにならないため、
メカニカルの、オン以降のフォロースルーが失われた。
つまりここで、
キーボードは、アナログ機構から、
完全なるデジタル機構に移行した。

底打ちに押下圧55〜65gで到達しさえすれば、
どのような方法論でもよくなったのだ。


ピアノ: 力加減で音が変わる
タイプライター: 力加減で印字の濃さが変わる
メカニカル: 力加減をフォロースルー部分で吸収
メンブレン: 底打ちするかしないか

メンブレンキーボードの誕生が、
実は打鍵をアナログからデジタルに、
根本的に変えた、
ということは実はあまり議論されていないのでは?

そもそもコストダウンが目的のメンブレンであったが、
その実、打鍵法を完全に変えてしまう代物だったんだな。

メカニカルはストロークこそ4mmだが、
アクチュエーションは2mmで、
底打ちを100%しなくても打っていける。
(この底打ちしない打鍵法を撫で打ちという言い方もあるが、
混同するので以下半ば打ちと呼ぶ)
半ば打ちと底打ちの間を、
アナログで調整して打鍵できたメカニカルが、
4mm底打ちしか選択肢がなくなったわけだ。

メンブレンの一種である、
パンタグラフが生まれてからはさらにだ。
ストロークを4mmから2mmにしたことで、
何もかも2mm底打ちにデジタル化した。

僕はMacのパンタグラフ出身なので、
突き刺し打ちをする必要のない、
撫で打ちスタートだった。

そもそも絵を描くとき、ペンで字を書くとき、
指の腹が筆に触れる。
指先のコントロールではなく、
指の腹のコントロールが、
最も鋭敏な感覚を持つ。
そこでキーに触れるMacのパンタグラフは、
絵描き出身の人が好むのは当然だったともいえる。

絵を描くようにキーボードを打てるのは、
パンタグラフだったわけだ。


さて、
メンブレンキーボードは、
だから、
「伝統的」突き刺し打ちと、
新興派の撫で打ちの、
二大流派が混在している。

静電容量やメカニカルではどうだろう。
伝統派が強いのかな。
新興派は少ない印象だ。
動画でほとんど見たことがない。

僕は自作キーボードが、
伝統派でなければならないという理由はないと思うので、
メカニカルでも撫で打ちしやすい仕組みを、
作り続けているといっても過言ではない。

それが、
「4mmストロークを一気になめらかに打てる、
滑るスイッチ+軽いバネ+底打ちを固くして反射させる金属塊」
と、
「オールコンベックス+球型ドームのキーキャップ」
に結実されていると思う。


昨日遊舎工房で、
suzuriのキーキャップを触ったが、
MDAプロファイル使いやすいと思ったのは、
撫で打ち派閥が使いやすい指の曲面をしてるな、
と感じたからだ。
なので、撫で打ち派は、
僕のオールコンベックスキーキャップか、
ドーム型キーキャップ(近日発売)か、
MDAプロファイルのキーキャップを使えばいいと思うよ。


パンタグラフの2mmストロークで、
突き刺し打ちはほとんど不可能だ。
突き指しちゃう。
だからパンタグラフを使えば、
自然と撫で打ちになっていくと思われる。



どちらが正しいのか?は、
まだ分かっていない。

突き刺し打ちのほうが、力を乗せやすく、
大きな力が出る。
手首の縦回転を併用することがある。
だから押下圧もアクチュエーション50g以上を好む傾向がある。
突き指しちゃうからね。

撫で打ちは力が弱いが、
繊細な指使いが出来て小回りが効く。
手首の横回転も併用する。
アルペジオなんかは高速だと思われる。
押下圧は低いものを好む。
アクチュエーション45g以下だろうね。


ピアノでも、
伝統的突き刺し以外に、
撫で打ち打法があるのだそうだ。

撫で打ちは繊細な打鍵ができるが、
長時間は持たないらしい。

だから、強く弾くべきところは突き刺しで、
繊細なところは撫で打ちで、
などのように使い分ける方法があるらしい。

デジタルはもはやそんなことは関係ない。
だから、
新しい打鍵法でいいはずだ。

伝統的な突き刺し打ちは、
変革を拒否して、今までの蓄積で打っている。
新興派の撫で打ちは、
伝統以外の文脈の蓄積を持ってきている。



僕がキーボードの打ち方で色々調べたことをまとめると、
以上のような感じ。

みんな、自分の獲得した打鍵法が唯一と勘違いしてる可能性があり、
異なる流派に異なる指導や意見をしている可能性がある。
テキストだけじゃわからなくて、
動画で見ないと判別できないのが厄介なところ。
生ならすぐにわかる話なのになあ。
ネットの限界だな。


キートップの凹んでいるキーキャップは、
伝統的突き刺し派用のものだと思う。
撫で打ち派は、
僕の作ったオールコンベックスキーキャップを、
使うのが合理的だと思うよ。
指の腹で触れやすい形をしてるべきでしょ。
ゲーセンのボタンだってコンベックスだぜ。

posted by おおおかとしひこ at 08:29| Comment(0) | TrackBack(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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