指を垂直に下ろし、指先で打つ突き刺し打ちと、
指を寝かせて、指の腹で打つ撫で打ち。
大きく分けて二つの流派がある。
出身によって異なる気がする。
もともとのピアノの伝統は、
突き刺し打ちだ。
こうしないと打鍵力が足りないからだ。
ある程度体重を預けないと、
フォルテなど打てない。
なので打鍵力を強くするには、
腕の力を使うため、
それを伝えやすい手の形として、
突き刺し打ちに特化した。
タイプライターの伝統でも、
基本的にこれを踏襲した。
ハンマーで印字する力を物理的に伝えるには、
腕の力を伝えやすいフォームでないと、
無理だったと思われる。
これを踏襲した、
PCキーボードは、
メカニカルの次代(アルプス軸など)の、
Windows以前だと、
同様に突き刺し打ちフォームが主流であったろう。
メンブレンキーボードが出来る前までは、
突き刺し打ちしか存在しなかった、
と言ってもいいのかもね。
だから、「伝統的方法」を遵守する派閥は、
これが「ただしい」と指導すると思う。
(僕は間違ってると思う。
とくにそれを強制することはないと考える)
メンブレンキーボードが生まれてからは、
底打ちしないとオンにならないため、
メカニカルの、オン以降のフォロースルーが失われた。
つまりここで、
キーボードは、アナログ機構から、
完全なるデジタル機構に移行した。
底打ちに押下圧55〜65gで到達しさえすれば、
どのような方法論でもよくなったのだ。
ピアノ: 力加減で音が変わる
タイプライター: 力加減で印字の濃さが変わる
メカニカル: 力加減をフォロースルー部分で吸収
メンブレン: 底打ちするかしないか
メンブレンキーボードの誕生が、
実は打鍵をアナログからデジタルに、
根本的に変えた、
ということは実はあまり議論されていないのでは?
そもそもコストダウンが目的のメンブレンであったが、
その実、打鍵法を完全に変えてしまう代物だったんだな。
メカニカルはストロークこそ4mmだが、
アクチュエーションは2mmで、
底打ちを100%しなくても打っていける。
(この底打ちしない打鍵法を撫で打ちという言い方もあるが、
混同するので以下半ば打ちと呼ぶ)
半ば打ちと底打ちの間を、
アナログで調整して打鍵できたメカニカルが、
4mm底打ちしか選択肢がなくなったわけだ。
メンブレンの一種である、
パンタグラフが生まれてからはさらにだ。
ストロークを4mmから2mmにしたことで、
何もかも2mm底打ちにデジタル化した。
僕はMacのパンタグラフ出身なので、
突き刺し打ちをする必要のない、
撫で打ちスタートだった。
そもそも絵を描くとき、ペンで字を書くとき、
指の腹が筆に触れる。
指先のコントロールではなく、
指の腹のコントロールが、
最も鋭敏な感覚を持つ。
そこでキーに触れるMacのパンタグラフは、
絵描き出身の人が好むのは当然だったともいえる。
絵を描くようにキーボードを打てるのは、
パンタグラフだったわけだ。
さて、
メンブレンキーボードは、
だから、
「伝統的」突き刺し打ちと、
新興派の撫で打ちの、
二大流派が混在している。
静電容量やメカニカルではどうだろう。
伝統派が強いのかな。
新興派は少ない印象だ。
動画でほとんど見たことがない。
僕は自作キーボードが、
伝統派でなければならないという理由はないと思うので、
メカニカルでも撫で打ちしやすい仕組みを、
作り続けているといっても過言ではない。
それが、
「4mmストロークを一気になめらかに打てる、
滑るスイッチ+軽いバネ+底打ちを固くして反射させる金属塊」
と、
「オールコンベックス+球型ドームのキーキャップ」
に結実されていると思う。
昨日遊舎工房で、
suzuriのキーキャップを触ったが、
MDAプロファイル使いやすいと思ったのは、
撫で打ち派閥が使いやすい指の曲面をしてるな、
と感じたからだ。
なので、撫で打ち派は、
僕のオールコンベックスキーキャップか、
ドーム型キーキャップ(近日発売)か、
MDAプロファイルのキーキャップを使えばいいと思うよ。
パンタグラフの2mmストロークで、
突き刺し打ちはほとんど不可能だ。
突き指しちゃう。
だからパンタグラフを使えば、
自然と撫で打ちになっていくと思われる。
どちらが正しいのか?は、
まだ分かっていない。
突き刺し打ちのほうが、力を乗せやすく、
大きな力が出る。
手首の縦回転を併用することがある。
だから押下圧もアクチュエーション50g以上を好む傾向がある。
突き指しちゃうからね。
撫で打ちは力が弱いが、
繊細な指使いが出来て小回りが効く。
手首の横回転も併用する。
アルペジオなんかは高速だと思われる。
押下圧は低いものを好む。
アクチュエーション45g以下だろうね。
ピアノでも、
伝統的突き刺し以外に、
撫で打ち打法があるのだそうだ。
撫で打ちは繊細な打鍵ができるが、
長時間は持たないらしい。
だから、強く弾くべきところは突き刺しで、
繊細なところは撫で打ちで、
などのように使い分ける方法があるらしい。
デジタルはもはやそんなことは関係ない。
だから、
新しい打鍵法でいいはずだ。
伝統的な突き刺し打ちは、
変革を拒否して、今までの蓄積で打っている。
新興派の撫で打ちは、
伝統以外の文脈の蓄積を持ってきている。
僕がキーボードの打ち方で色々調べたことをまとめると、
以上のような感じ。
みんな、自分の獲得した打鍵法が唯一と勘違いしてる可能性があり、
異なる流派に異なる指導や意見をしている可能性がある。
テキストだけじゃわからなくて、
動画で見ないと判別できないのが厄介なところ。
生ならすぐにわかる話なのになあ。
ネットの限界だな。
キートップの凹んでいるキーキャップは、
伝統的突き刺し派用のものだと思う。
撫で打ち派は、
僕の作ったオールコンベックスキーキャップを、
使うのが合理的だと思うよ。
指の腹で触れやすい形をしてるべきでしょ。
ゲーセンのボタンだってコンベックスだぜ。
2023年05月20日
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