「面白い」というのは主観的感覚であり、
なかなか分析しづらいものである。
だけどこれを解剖していかないかぎり、
面白い/面白くないは、なかなか言葉にできないものだ。
で、大枠2方向あるよ、という話。
砂被り席での面白さと、引いた面白さだ。
砂被りの面白さとは、
感情移入の面白さである。
主人公やその他の登場人物と、
感情を共にし、一緒に「生きる」ことをたのしむ。
驚いたり、喜んだり、悲しんだり、怒ったり。
彼らの感情と同じ感情になることで、
夢中になる。
対照的なのが、引いた、巨視的面白さである。
登場人物の感情とは別の、
巨視的な構造が面白い時だ。
たとえばどんでん返しや伏線の面白さとは、
感情移入とは別次元にある。
引いた目線で、面白いなあと思うわけ。
ある一方を描きながら、
もう一方を描くなども、引いた構造の面白さだ。
劇的アイロニー、
たとえば、登場人物が知り得ないことを、
観客は引いた目線で知っていることがある。
通りの向こうから暴走トラックが来ているが、
親子は気づいていない場合などだ。
「志村うしろー!」だよね。
これは、登場人物の感情ではなく、
その場に意識がいないことで起こる。
全体として見た場合の面白さである。
「この芸能人かわいいー」とか、
「服オシャレー」とか、
「音楽カッコいい、あとで買おう」とかも、
引いた目線でおもしろいと思っているものの一種である。
あるいは、テーマに落ちたときの、
深い感動というのは、
感情移入で夢中だったのに、
その人の人生を俯瞰したときに、
人生とはこういうことか、
というように起こると思う。
砂被りと巨視的構造、両方が必要である。
あなたのシナリオが面白くないとき、
どちらが面白くないか?
どちらかは面白いか?
両方面白くないか?
などを分析しよう。
面白い要素を逆に取り出そう。
それはもっと面白くなるだろうか?
どっち方向に面白くするべきだろう?
感情移入が激しく出来ているとしても、
もっと感情移入を激しくするべきか、
巨視的な面白さを足すべきか、
判断を間違うと本質はずれていくぞ。
微視的に面白いのか?微視的にはつまらないのか?
巨視的に面白いのか?巨視的にはどうでもいいのか?
僕は、両方面白いべきだと思う。
そこに至るために、
正しく分析するべきだ。
2023年06月24日
この記事へのトラックバック
平素よりご指導いただき、深く感謝しております。
仰るとおり「面白い」は
主観的で分析・解剖がしにくいわけですが、
「面白い/面白くない」は
どのように見積もったり評価したりするのがいいのでしょう?
いい作品をいっぱい観て、
面白さを言語化し、
センスを磨くしかないのでしょうか。
AパターンBパターンなどを書き出して比較してみる?
「面白い」はどのように判断するのがよいのでしょう?
自分の中の「面白い/面白くない」は、
そのようにするしかないですね。
物語に浸る喜びを思い切り感じて、
クソ作品に出会って烈火の如く怒ってください。
それとは別に、
「世間で人気のあるもの」
「世間が面白いというもの」にも目を向けてみてください。
100%自分のセンスと一致しないはずです。
そのこととどう向き合うか、
自分の中で答えを探してください。
作家性と商業性の問題ですね。
おっしゃりたいことはなんとなくですが理解できます。
貴重な時間を割いていただき感謝しております。
それでは失礼いたします。
>作家性と商業性の問題
という風に二項対立でとらえない方が良いと思いますね。
世間で新しく一番受けるものを、
自分が新しく一番面白いと思うことが、
理想だと思います。
それと商業性はまた別の次元の話です。
たとえば今の時代は、
昔の商業性「みんなが欲しいものをつくる」
ということをせずに、
「太い客が金を出す対価としてのなにか」
が商業性だったりしますね。
よりピンポイントに金を攫うことをやっています。
自分の思う「いい物語」と
他者(世間)の思う「いい物語」は一致しない。
その差異を理解してどういう作品を作るのか決めなさい
ということですね。
私が思いましたのは
自分が思う「いい物語」と
「太い客が金を出す対価としてのなにか」は違う。
そのズレに自分の中でどう折り合いをつけるか。
ということでした。
私が「いい物語」だと思いますのは
ストーリーやドラマがしっかりしていて
テーマが心を打つような作品です。
一方で、いま世に出ているのは、
「物語以外でカネになる作品」や
「物語以外の関係者が儲かる作品」
に思えます。
グッズにしやすい作品。コラボしやすい作品。
登場人物が多くてモチーフが派手な作品。
私にはこのズレが苦しい。
私が思うような「いい物語」は作られない。世に出ない。
儲からないから。
ビジネスとしてやっていくには
信念を曲げてでも「太い客が金を出す対価としてのなにか」に
迎合するしかないように思える。
とても苦しい。
そんな風に感じていましたので、
勘違いをしてしまいました。
失礼いたしました。
そうですね。それらは全部違います。
ついでにいうと、
「自分が金を出し続ける傾向の作品」
というものもあります。
自分が何に金を出して、何に金を出さないかを観察する
(なるべくタダで見れないかと思うなど)と、
汚い商業主義が自分にもあることがわかります。
かつてテレビはいいものをタダで見れる魔法だったので、
それが崩壊した今、
みんなスタンスが分からなくなってますね。
映画は1900円でいいのか、
配信やレンタルは500円や350円や100円でいいのか、
サブスクはどれくらいがいいのか、
何にどれだけお金を出させてどう回収するのか、
試行錯誤の時代とも言えます。
そして問題は前払い方式という点でしょうか。
よかったから多めにチップを、という文化システムではないので。
ありがとうございました。