2023年05月27日

はじまり、つづき、おわり

ストーリーを語るとは、
この三つをコントロールをすることだ。


真ん中の「つづき」は難易度が高いため、
まずこれなしの、
「はじまり」と「おわり」を考えよう。

はじまりは、
人為的に始める場合もあれば、
偶然始まってしまう場合もある。

デートの申し込みから始めてもいいし、
偶然隣に座って、から始めてもいい。

はじまりは結構誰でも書ける。
はじまりは雨ですらはじまりになるぞ。
(チャゲアス)

だから、
まずはじめなさい。
それは自由だ。


これがストーリーになるには、
おわりがあることである。


おわりとは、
「はじまったことが、どう終わったか」だ。

「いや、まだつづくんです」は、
おわりではないのでストーリーではない。

日本はいつからか始まったが、
まだ完全には終わってないため、
「日本のストーリー」は書くことができない。
あなたの人生もいつからか始まったが、
まだ終わってないため、
「あなたの人生」というストーリーは書くことができない。

死んだ人のストーリーは書ける。
このようにして始まりましたが、
大成功して亡くなりました、でもいいし、
失意のまま死にました、でもいいし、
成功したのにその後色々あって晩年はダメでした、でもいい。

大抵大成功のまま死ぬ人は少ないので、
しょぼくなってしまうため、
ストーリーを書く時は、
「どこからかやってきた人が、
どこかへ行くまでの話で、
その後はどこかへ行ってしまったので知らない」
という形にすることが多い。

そうすると、
はじまったことが幸せにおわるので、
ストーリーが書きやすい。

ラブストーリーが結婚式で終わり、
新婚旅行に車ででかけ、
缶をつけてカラカラ走り出す所で終わるのも、
そういう意味である。


ストーリーのおわった人が、
隣にいるのはバツがわるい。
「せっかくいい所で終わったのにまだいる」
ことになるからだ。

だからストーリーがおわった人は、
立ち去るのがよい。

実はこれは「おわり」の条件なんだけど、
これをきちんと指摘してる人は少ないんじゃないかな。
本能的にやってることだけど、
意識してやってないと思うんだよね。


死のうがどこかへ立ち去ろうが、どちらでも良い。
「おわり」には、
「私たちはこの人に二度と会えない」
ことが必要である。

だから、終わった話の続編とは、
原理的にできないのだ。
それを無理やりやるから、失敗の確率が高いんだよね。

また会えると思ったらサザエさん時空にまきこまれる。
ストーリーとは、
「二度と会えないこと」と定義してもいいくらいだ。


なぜ物語や小説は過去形で書くのか?
「二度と会えないこと」だからだ。
死ぬなり立ち去った人の、過去の、
はじまりからおわりまでを書くのが、
物語である。

映画や演劇は、生の人がそれを演じるから、
現在形のように錯覚する。
しかしそれが終われば、過去である。


はじまりとおわりを持つ有限の一連であるから、
評価できる。
「すばらしいストーリーか?」と。

すばらしいストーリーとはなんだろう?

人々に勇気を与え、拍手すべき、
見本のようになるものは、すばらしいストーリーだ。

みんなに認められなくても、
一部の人に響くものも、(部分的に)すばらしいストーリーだ。

あまり出来が良くないが、
一部にすばらしさや新しさがあるものも、
(部分的に)すばらしいストーリーである。

これらは、金、銀、銅に対応している。

すばらしいストーリーを書こう。

それは、世の中にはクソストーリーの方が多くて、
つまらないからである。
少ない方が価値がある。

もっとも、過去の名作はたくさんある。
これを超える、すばらしいストーリーを書くのだ。

それには、
どのようなはじまりとおわりがあればいいか?
を考えると良い。


大抵気負うと失敗するので、
自分に書けるすばらしいストーリーを考えよう。

あなたが考えるマックスすばらしいものの、
8がけとか5がけくらいを目指して、
まずははじまりとおわりのペアを考えよう。

ラブレターを渡すはじまりでもいいし、
偶然隣に座るはじまりでもいいし、
いつも雨が降っててもいい。


そのはじまりがどうおわるかを考えて、
それがすばらしいかを考えよう。

上の三つの例で、僕はいますばらしいストーリーを思いつけない。
となると、
このはじまりは棄却したほうがいい。

もっと異なる、
はじまりとおわりのペアを考えるべきだ。


ちなみにチャゲアスの「はじまりはいつも雨」は、
浮気の歌と考えられる。
人に言えない恋のことを雨にたとえている。
だから幸せな終わり方をしていない。

「不倫は人に言えないよね」
ということがテーマである。
すばらしいストーリーではないが、
まあ共感できるから、銀か銅かと言ったところだ。
この曲の素晴らしさは歌詞のストーリーよりもメロディなので、
ストーリーは弱いと評価できよう。
実際、大ヒットには至っていない、いぶし銀の曲どまりだ。

だから、
雨で始まるストーリーは、大抵失敗すると、
僕は考える。

もちろん僕個人の考えだから、
ひっくり返すすばらしいストーリーを考えてもいいぞ。

はじまりはいつも雨で、
おわりはいつも晴れだった。

という話をつくってもいい。
それがおもしろく、すばらしいなら土下座&拍手だ。



さて、最初に無視した「つづき」である。

「つづき」とは、「はじまり」が次にどうなったか?
を書くことである。

どのようになってもよい。
はじまりの「どうなるんだ?」を維持したままずっと続いてもいいし、
それだけじゃ飽きるでしょと、
べつの「どうなるんだ?」へ転換してもよい(ターニングポイント)。

ラブレターを渡して、びりびりに破られたとして、
次に花束を持ってきてもいいし、
うんこを投げつけてもいい。
前者では「彼女のハートをゲットできるのか?」
とはじまり、つづいているわけだが、
後者では、
「彼女には復讐できるのか?」
に転換したというわけだ。

どのようにつづいてもよい。
ただしそれが面白く、納得がいき、
感情が震え、身を乗り出すようで、
ご都合に陥らず、矛盾がなければよい。

あるいは、
第三の男も彼女にほれて、マンションを用意しても良い。

このように、
最初のはじまりになかった、
別のことをはじめてもよく、
それをサブプロットという。

これもはじまりとおわりとつづきを持つ、
メインストーリーと同時進行するストーリーである。

ただしサブプロットにはルールがあり、
メインストーリーより目立ってはいけないこと
(目立ったらそれがメインストーリーということだ)、
サブとメインが一切絡まないのは、
それは二本立てと同じになってしまうから、
ぜひ絡みを面白くしろ、
ということだ。

つづきに困ってサブプロットをはじめる例は、
枚挙に暇がないが、
うまくからめず、うまくおわりが見えない、
なんてこともよくあることだ。

これも、おわりとつづきをうまく組まないと、
面白いストーリーにはならない。


こうして、
はじまったものは、
つづいて、つづいて、つづいて…
おわる。

それがストーリーである。

それが「おもしろい」そして「すばらしい」
であるようにつくればよい。

これだけを見れば簡単だが、
それが難しいからストーリーは難しいのだ。



つまらない場合、
どこから直せばいいか?

おわりからだ。

おわりをまず良くしよう。

そのためには、はじまりを変えなければならない。

つづきは全とっかえになるかもしれない。

要はほとんどが書き直しってことだ。


終わりよければ全てよし、
の格言は、
終わりが良くないなら、全交換、の意味でもある。

おわりがよいものは、
はじまりも大抵良い。

ということは、つづきをリライトするとよい。

うまくつづきを書けなくて、
サブプロットに逃げてないか?
サブプロットのおわりとはじまりはどうか?
そのつづきはどうか?
サブプロットはすばらしいか?
絡みはおもしろいか?

このへんをチェックすれば、
うまくいってないところを発見できるだろう。

サブプロットを諦めて、
全く別のはじまりとおわりを持つ、
別のサブプロットと入れ替えてもいいよ。

静脈を入れ替える手術になるだろうが、
病巣を残すよりは助かる確率が上がるかもしれない。

目的は、
すばらしいストーリーにすることである。



簡単なことばで説明したが、
具体的にどうすればいいかを、
僕は示していない。
それがどのようなストーリーであるかによって、
具体は異なるからだ。

脚本添削スペシャルで、
具体的なものに対して具体的にどう考えればいいか、
手術を行なっているので参考にされたい。

これを自分の原稿でやれば、
ストーリーはどんどんよくなっていく。

リライトはセルフ手術だ。
麻酔を効かせたら痛くないが、正常な判断力も麻痺する。
正常な判断状態を保つには、患部の痛みをまともに受ける。
後者でやるのが望ましい。
批判で凹んでいる場合ではない。
批判で心が痛み、負けるようならば、
ストーリーテラーに向いていない。

それはリライトが下手だってことだ。

セルフ手術をするには、
正確で、的確な批評が必要だ。
レントゲン写真なしで手術する医者は、
まともに成功しないよね。

そして、麻酔なしで最後まで縫合せよ。
できれば傷跡の残らない完璧な術式でね。




はじまりがあり、つづきがあり、おわりがある。

ストーリーはそれだけだ。
それがすばらしく、興奮するような、
金の物語にしていこう。


昨日、去年の秋頃から作り始めていた物語の、
完全リライトが終わった。

一旦完成となって、
一番俯瞰した状態で今書いている。


またどこかで、
別のおはなしをはじめたい。
posted by おおおかとしひこ at 10:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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