2023年06月27日

タイトルの意味はどこで明らかになるか

「このタイトルはこういう意味だったのか……!」
って伏線回収される作品っていいよね。

どうやったら仕込めるか、考えよう。


まずそれが全然意味が分らない場合は、
暗号みたいなものだ。
だからそれは最後にそうだと回収されれば、
まあいいかもしれない。
でもそれだとそもそも引きのないタイトルだから、
あんまりおもしろくはない。

理想は、
最初はこういう意味と思ったタイトルなのに、
ラストにはまったく意味が変わっていた、
という感じのものだ。

そういう感じのものを最近書いたのだが、
ネタバレになってしまうから、
ここじゃまだ言えないのが惜しいな。

最初はAという引きで見始めるが、
最後まで見終えると、
Bという意味が込められていることが分かって、
なるほど、
と思うタイトルが理想、ということだ。

ここで気を付けるべきことは、
ダジャレじゃだめ、ということ。

最初はAという言葉が、
Bというダジャレで、
ダブルミーニングだったんですよ、
ってなるやつはたいてい寒いからね。

僕はダジャレを認めていないのは、
それをやると「やった気になる」ことが一番よくないからだ。
実はほとんど何もしていないのに、
やった気になって、それ以上追及しなくなることが、問題だ。

ダジャレを禁止したら、
深いところで二重の意味をつくることを考えないといけない。
ダジャレはその辛さの安易な出口になってしまう。
だからダジャレによるダブルミーニングは禁止しよう。


ドラマ「風魔の小次郎」は、
一応それを込めたものになっている。

Aとしては、
原作漫画「風魔の小次郎」の実写化である、
という意味、
「風魔忍者のはねっかえり者小次郎」の意味である。
まあそのまんまだよね。

ところが、ストーリーはそれより深く、
小次郎が忍者としてのアイデンティティを決め切れなくて、
それが風魔として生きることを決意する、
という大きな流れになっている。
それをあんちゃんが「風魔の小次郎」と呼ぶことで、
彼のアイデンティティーBは確定するのだ。

実写ドラマの「風魔の小次郎」は、
所属上は風魔にいる小次郎Aだが、
真の意味での風魔の小次郎Bになる話、
という意味になっている。

風魔であることは、仲間を失い、
自分の命も失う危険を受け入れるということだ。
何の為かを理解して、死んだ者たちも受け継ぐ覚悟があるということだ。
小次郎は里から出てきて、そのことを学び、
成長した。
だから、風魔の小次郎に、彼はなる。

「風魔の小次郎」は、
だから見終えた時には、意味が変わっている。
小次郎はほんとうに風魔の小次郎になったんだなあ、
という感じにだ。

このように、
一見引きのような要素のタイトルにさえ、
あとで「こういう意味だったのか」と認められるような、
二重の意味をかぶせることが出来る。

漫画「タッチ」のタイトルの意味は、
和也の思いを継いで、克也が甲子園に行くという、
「バトンタッチ」の意味であったが、
アニメ化にあたって、
「心に触れる」という意味のタッチを含ませた。
このことにより、
タイトルが二重の意味を持ち、
より深くなったと思う。

こうした二重化の例もあるので、
参考にされたい。

つまりは、
最初に一回タイトルの意味を解説するようなことを前振って置き、
ストーリーの後半に、
それはほんとうはこういう意味であったのだ、
と分るような仕掛けになっていると、
それが出来るだろう。

まさに、
同じものなのに、
文脈で見え方が変わって来る、
モンタージュ理論そのものではないか。

つまりタイトルの理想は、
同じものなのに前と後で意味が変わって来るようなもの、
という、モンタージュ理論になるようなものがベストということだ。


実際は違うカットらしいのだが、
「ゴーンガール」の最初と最後のカットは、
妻の微笑みである。
これは同じ(ような)カットなのに、
前と後ではまったく違う意味として見えるように、
内容がつくられている。
同じカットを使わず、カットを変えた意図は良く分らない。
モンタージュ理論をフィンチャーが知らない筈はないんだがね……。

それはまあよいとして、
そのように出来るタイトルが、
一番優秀なタイトルだと僕は思うがなあ。


引きと、本質の、
両方が込められているもの。
本質のほうは最初は分らないが、
見終えたあとにはその本質しかみえないもの。
ひとつのものでも、
見る方向でまったく違うように見えるもの。
そういうものが理想だ。
posted by おおおかとしひこ at 01:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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