2023年06月25日

ワグネルの乱と三人称

すわ軍事クーデターか、と思われたワグネルの乱が、
急にモスクワから撤退して、
リーダーのプリゴジンはベラルーシへ亡命らしい。
これにみんな「???」ってなっている。

これが三人称ということだ。
脚本論的に解説したい。


三人称とは、客観的な視点のことである。
一人称のように、心が見えない。
三人称で見えるのは、外側から見た他人である。

そしてわかりやすいのは、
「決定的な行動」だ。

今回のワグネルの乱は、
ロシアの傭兵部隊ワグネルが武装蜂起、
ロシア正規軍のヘリを落としてモスクワに侵攻、
モスクワ陥落のための戦いを準備した、
という行動が決定的だ。

これに対して、
プーチンは反逆者と決定した。

そして今日になり、
急にワグネルは撤退して、
リーダーのプリゴジンはベラルーシへ亡命。
プーチンは罪は問わないと表明。

大山鳴動して鼠一匹?

これが、
「三人称形式」でわかってること全てである。
(ワグネルが刑務所から死刑囚を出して、
兵に入れた未確認情報もある。
そんなベタなワクワク)


そしてこれは、
「三人称形式で見ると不可解」なわけだ。

なぜ撤退したのか。
なぜ撤退するなら武装蜂起したのか。
なぜプーチンは反逆者と決定したのに、
罪は問わないのか。殺人未遂は罪なのにさ。

つまり一人称的な、
心の中身=動機や目的が、
全くもって不明なのに、
えらく期待のある行動と、
失望した行動があったのが、
ワグネルの乱のモヤモヤなんだよね。

これに対して、
ネットでは、
「反乱分子をまとめるための自作自演」とか、
「オリガルヒ(富裕層)の派閥争い」とか、
色んな説が出ている。
まだ陰謀論は出てないが、そのうち出てくると思う。


さて、映画シナリオだ。

三人称形式であることを念頭に入れよう。

決定的行動から、
その一人称的なもの=動機や目的がわからないと、
こんなにモヤモヤするぜ、
という話である。

何のためにやったのか?
何目的だったのか?
こんな意味不明なシナリオにするなよ、
ということを言おうとしている。

動機や目的が行動から推察されない場合、
それらは外に出す必要がある。
誰かに語る、記者会見する、などでだ。

その世界の大衆はわからなくても観客だけは理解すればよいから、
記者会見の必要はあるまい。
誰かに密かに語る、でもよい。
遺影に語りかける独り言や、
日記を書いてても良い。
なんでもよいから、
その目的や動機を、観客が分かるシーンがあれば、
一見不可解な行動を、
納得しながら見ることができる仕組みなわけだ。

このモヤモヤは、
要するに「下手くそな映画」を見てる時のモヤモヤなんだよな。

ワグネルは何がしたかったんや?と。
のちにプリゴジンの記者会見や声明があれば、
それらが納得できるかも知れないが、
現時点では下手くそな映画を見た気分だ。

うまい映画では、
行動の動機を明らかにして、
その行動の成功の成否にハラハラさせる。

これが映画であれば、
ワグネルは事前に「ロシア正規軍を倒し、ウクライナに平和を」
と一言言ってれば、全世界が味方したはずなのにな。
そして撤退の理由を語れば、
第二第三のワグネルが生まれるかも知れないのに。

大山鳴動して鼠一匹の、
反乱分子炙り出しのための観測気球説は、
一番納得のいく推理だが、
余談を許さない展開になろう。



なお今回の経緯を時系列でまとめたものがこちら。
https://dic.nicovideo.jp/t/a/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%B4%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%81%AE%E4%B9%B1
現時点では撤退以前のモスクワ侵攻までの記録のため、
明快なロシア政府への反逆となっているが、
これが今日の無血撤退、首謀者亡命なのが「???」以降だ。
posted by おおおかとしひこ at 10:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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