2023年08月22日

中毒とインフレ

なんでインフレになるのか。
飽きるから、というのでは少し足りない。

ある刺激に対して中毒になるから、
というのがそもそもの理由だと思う。


ものすごく出来の良い、
なんらかのものが出来たとしよう。

それがあまりにも素晴らしいならば、
もう一度欲しくなるのは人の欲の常だ。

美味いものでもいいし、
スリルでもいいし、
驚きでもいいし、
エロでもときめきでもよい。

つい、
同じものを提供しちゃう。
受けるからだね。
受けた芸をやり続ける動物みたいなものだ。

これで観客は中毒になり、
もっともっと、
と要求する。


少年漫画における、
「死んでたと思ってたら生きてた」とか、
トーナメント展開とか、
新技誕生とかは、
ある種の中毒だと僕は考えている。

それを繰り返し提供する薬物みたいなものだと。

だからそれはインフレする。
同じ刺激だと満足しなくなってくるからだ。


ある時期の車田正美は、
この中毒をつくる天才だった。

なにい?!、見開きカッ、
必殺技ドーン、
何かで泣く、5 vs 5、
死んでたと思ったら生きてたー!
中二ネーミングセンス、
などの出来のいい多数の中毒を、
うまく矢継ぎ早に繰り出して、
何度も何度も繰り返して中毒にさせた。

ただインフレが必要で、
世界の端まで行ってしまったら世界の破綻で、
それでおしまいになってしまう。

あとは中毒を出し続けるテンポとの兼ね合いになる。
刺激が繰り返さないと中毒はないし、
繰り返すとインフレして破綻する。

どの道破綻して終わる末路なんだね。


映画でもそうかも知れない。

悪を倒す正義や、
悲恋ものや、
立場が上昇する恋愛なんかは、
人類が繰り返し求める中毒性のある何かではないか、
と僕は考える。

いわば合法麻薬ではないかと。

Twitterの正義マンたちは、
だから正義中毒にかかっている。
常に正義を披露する薬物の中毒者なわけ。
エスカレートしやすかったり、
しばらくないと禁断症状が現れて、
次の生贄を探す感じも、
薬物中毒者に似てると思うよね。


さて。

あなたは中毒性のある薬物提供者である。

どのような中毒をつくる?

理想は、
ABCDEFといった、
すべて方向性の異なる、
中毒を盛り込むことだ。

しかしこれは大変難しいので、
ABAAAA…
みたいに、
昔取った杵柄を繰り返すことになるから、
注意しなさい、
というのが本題。

困ったら全部Aに頼るのは、
不安だから薬物に手を出す中毒者とおなじだね。
自分で作った中毒に中毒してるわけ。


あなたは合法薬物製造者である。

なるべく毎回違う中毒をつくろう。

破綻を避けるためである。
posted by おおおかとしひこ at 08:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック