2023年08月27日

「磨く」と「変える」

リライトには二種類ある。

今やってる直しは、どっち?


あることをやろうと思う。
出来上がったものはそこに達していない。
だからディテールを修正して、
その狙いに到達するように直す。

これは磨きである。

磨けば磨くほど、
基本的には良くなる。

ただし、要素を足すのはお勧めしない。
たいていややこしくなって、
磨くべき部分が複雑になるからだ。

磨きはトータルで要素が減っていくことが多い。
しっかり書き込まれてるのに、
ページ数が変わってないとかも、
うまく磨かれた証拠だろうね。


これに比べて、
そもそもの狙いを変えることを、
変えるリライトだと認識しよう。

面白がらせようとしてたけど、
泣けるようにしようとか、
人間関係を逆にしようとか、
大きな改造をイメージすると分かりやすいかな。



さて、本題だ。

磨きは、多少の文字数の直し、
変えるのは、大幅な文字数の直し、
のようなことをイメージするかも知れないが、
手間と関係ないよ、
という話をしよう。


たとえば。


ヒロイン「すき」

というセリフを、

ヒロイン「死ね」

に修正したとしよう。
意味が真逆に変わるから、
これは狙いを変えたことになるだろうか?


これだけでは判断しかねるね。

実は「死ね」というのが、
彼女なりの「すき」の言い方だと設定すれば、
最高の大好きの言い方に変えただけだから、
これは磨きに相当するだろう。

あるいは、
ここで死ねとショックを与えることで、
のちのち大好きというシーンがよくなるなら、
磨きをかけたことになるかも知れない。

一旦嫌いになったことで、
あとでもう一回好きになるシーンが効果的ならば、
ここで最悪のことをする磨きに相当するかもしれないわけだ。


この場合、狙いを変えるとは、
「このヒロインは主人公と結ばれない物語にしよう」
くらい変えることをいう。

物語の本質を変更することが、
変えることになるわけ。


たった数文字変えただけでも、
本質がまるで変わってしまう変更だって、
世の中にはある。

文字を変えることが問題なのではない。

本質をどのように変更するかが問題なのだ。



修正や変更の手間だけをみてると、
「たった数文字/数行/数ページなのに」
なんてことだけを見てしまう。

そうではなくて、
リライトとは、
今ある狙いをより鋭くする磨きと、
今ある狙いそのものを変更する変えることと、
二種類あると自覚した方が良い。


当然ながら、磨きの方が簡単で、
変えることの方が難しい。

そして、磨きならばアンドゥできるけど、
変えるのは失敗してよくなくなるかも知れない。
アンドゥしたときのダメージはかなりデカい。


たとえば、
主人公を変える変更は、
磨きだろうか?変えたことになるか?
これすらも内容と相談だ。

主人公を二番目に変えたごときでストーリーの本質が変わらず、
よりよくなるなら、磨きをかけただけになるかも知れないわけだ。

そうしたことで、ストーリーの本質が変わったり、
テーマが全然違うものになるなら、
変えたことになるだろう。

シーン順の変更は?
セリフの入れ替えは?

句読点をひとつ入れる直しは?


すべての直しは、
今磨きをかけているのか、
本日の変更なのかを、
自覚しながらやるべきだ。

うっかり前よかったものを台無しにするときもあるし、
本質すら変えてしまっていることに気づかないかも知れないぞ。

将棋の一手一手にすべて意味があるように、
あなたの手術工程にはすべて意味がある。

それは、
Aの方向性へと磨きをかけているのか、
AをBの方向へ変える変更をしているのかの、
二つに分かれるわけだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック