2023年08月31日

面白いとは、「同じことと」と「違うこと」

面白いとは何か。なかなか難しいのだが、
二種類あることは知っておいたほうがよい。

「同じことが面白い」という考え方と、
「違うことが面白い」という考え方だ。


もっというと、
「同じ『だから』面白い」という考え方と、
「違う『から』面白い」という考え方がある、
ということである。

まず議論が簡単な、
「違うから面白い」から。

これは若いときに特にある。
これまでと違うだけで面白いと勘違いする、
逆張りとかがそうだね。
これはマンネリから脱して、
違うことを求めることで、進化できる可能性があるから、
若い者特有の感覚だろう。

成功体験も失敗体験もない若者ならば、
概念だけで、
古いか新しいかをかぎ分けて、
新しい方へ行くのは当然とも言える。
これが進化の原動力である、といっても過言ではない。

しかし当然だけど、
逆張りしているだけで、
たいして面白くないものだってあるわけだ。

逆張りしているだけで面白いならば、
ベースになる時代が変わってしまったら、
面白さのかけらもなくなってしまう。
尖ったものはすぐに廃れるわけ。
なんなら、脚本を書き始めたときは逆張りで面白かったが、
書き終えるころにはそれが詰まらなくなっている、
というくらいの流行りだってある。

「逆だから面白い」という感覚は、
だから危険なんだよね。
いつもある、定番の面白さを超えて、
面白くなっているか、
という批判をしないといけないわけだ。
逆張りだから面白いというファクターを除いた場合、
それでも面白さが残っているか?
という検証が必要だね。


さて、
「同じだから面白い」というのはどういうことだろう。
定番とか、安心とかになるわけだね。
永遠なるマンネリもそうだ。

「そうなると安心する」
「やっぱりこれだね」というのは、
ひとつの安心効果、精神安定剤として機能する。
「待ってました!」というパターンもあるし、
それはある一定の品質のものを見た、
という満足感にもなるだろう。

悪を正義が毎回倒すのはなぜか?
片思いが成就するのはなぜか?
安心するからだよね。

悪が勝って正義が通用しなかったり、
辛い思いが実らなかったりしたら、
現実の厳しさを見るだけのものになってしまって、
娯楽とはほど遠いものになってしまう。
夢くらいみさせろよな、
という人たちが多いから、
これらは(娯楽としての)安定した安心感になっているわけだ。

当然、これが過度に働くと、
同じものを量産し続けることになり、
定番しかなくなり、飽きになる。

現在の銀行による予算確保システムが、
過度に働くとこうなってしまう。

銀行は儲かるか儲からないかでしか金を貸さないため、
かつて成功した何かに関してなら投資するけど、
新しい、まだ成功していない何かには投資しない。

だから、
前に成功したパターンの、
「同じもの」しか新しく生まれない、
という悪循環が、ここ十年、あるいはそれ以上続いている。
新しいものは違うものだが、
同じものにしか投資がないわけだ。


ということは。
同じものに見える企画書で、
まったく違うものに仕上がった、脚本をつくればいい、ということになる。

全く同じに見える企画書はいらないし、
全く斬新な企画書は冒険が過ぎる。
7割の安心感と、3割の斬新さが必要だ。

どうせ脚本を読めるやつなんてほとんどいない。
企画書しか読めないんだ。
そういう奴には安心させて金をださせりゃいいのさ。

そして、単なる逆張りじゃない、
新しい違うものをつくればいいのさ。


当然、それは、
同じもので得られる安心感を超えられているか?
が評価ポイントになる。

それが同じもの、定番もの、ベタなものを、
越えるほどのものでなければ、
詰まらないものになるだろう。
だって他にもっと同じ面白いものが転がっているから、
ということになる。

他にない新しい違うもので、
しかもこれまでの同じものを超えるものを、
つくればいいのだ。

しかし、完全にまったく異なるものを作る必要はない。
悪は正義に倒される話という、
定番の安心するものを軸に置きながら、
まったく別の設定やキャラクターや、
テーマや焦点を作り出してもよい。
安心させながら、新しく更新するわけだ。

これらは背反するものではなく、
両立しえる、ということである。


ハリウッドのプロデューサーの言葉で、
「同じだが、違うものを持って来い」というのがある。
これは、このようなことを言っている。

「違うものだが、同じものを持って来い」
ではない所もひとつポイントだね。
安心感が先で、そのあとに新規性ということだね。

定番のこの何かが、少し更新される感じが、
ビジネス上一番求められているということだ。
posted by おおおかとしひこ at 07:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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