2023年08月11日

若い観客の雑感

最近立て続けに大学生と話す機会があり、
最近の若者が何を考えてるのか、
ちょっと分かってきた。

ざっくりいうと、
「失敗したら終わりだと思っているから、
表面上はいい子のふりをしなければならないことに、
プレッシャーを感じているので、
せめて裏では黒い面を出したい」
みたいな。


人間に表裏があるのは当然なんだけど、
僕らの世代よりも、
ずいぶん、
「いい子でなければならない」
「一回失敗したら終わりな」
というプレッシャーがキツイように思えた。

世間のプレッシャーは実際のところわからないが、
「本人がそのように世間を捉えている、
内面化された世間からのプレッシャー」
の話。

SNSの発達がデカいのかなあ。

たとえばバイトテロでTwitterは有名になったが、
自己承認欲求が強いのは若者として当然で
(まだ何者にもなってないから)、
でも何をやればいいかわからない、
という人たちは多い。

それでなんかやるんだけど、
SNSで袋叩きに合うから、
その店が潰れたりする。

つまり「袋叩き」の度合いがあがっている。

それは、五人組や村八分の江戸時代よりも、
多分キツイプレッシャーなのでは?と思う。
昔は街に監視カメラなんかなかったしな。
2ちゃん全盛期だって、
今みたいに写真や動画でアップされることもなかった。
フォーカスフライデーはじゃりじゃりの夜の写真一枚のために、
何百万もかけてたのになあ。

気軽に監視できて気軽に袋叩きできる社会で、
青春時代を過ごすと、
「失敗したら終わり」
「いい子にしなければならない」
の枷がとても強いのではないか。
「オシャレしないとモテない」のプレッシャーもキツそう。

で、
だから、反動としての、
「世間が存在しない場での、暗黒面の解放」が、
よりきつくなってるっぽいな。

匿名Twitterで言いたい放題の裏垢もそうだろうし、
悪口を言い合う仲が親友の基準だったりする。
だから、身内と身外の、溝が深い。



ここから映画の話になるのだが、
だから、
「正義の顔をした話」は、面白くないって思うんだって。
それは、やんなきゃいけない、プレッシャーに見えるんだってさ。
だから、
「誰にもバレない暗黒面の解放」
の話が面白く感じるらしい。

ちょっと前に小学生たちがみんな、
「うっせえわ」を連呼しながら下校ムーブをしてて、
みんなたまってんなあ、なんて見ていた。

女子小学生三人が一通り歌って楽しそうな顔をしてて、
「ねえもう一回歌おう」って、
二周目に入った瞬間も目撃した。

その、代償としての悪(カオス?)を、
求めているっぽい。

なので、Xメンよりも、デッドプールを支持して、
トイストーリーズよりも、ミニオンズも支持する。
ふむ。
ダークヒーローは、その中間を取ってるんだな。

70年代の若者は、
「悪は制裁される」ことを前提として、
バッドエンドに至る「俺たちに明日はない」などの、
アメリカンニューシネマに傾倒して、
大人たちに「刹那的」なんて言われたが、
刹那的とも理解されない、
もっと黒いどろどろしたものを抱えているんだなあ、
と感じた。

なので、
「表面はそつなくこなすモブなのに、
裏に回ると真っ黒」
というのが、平均的な若者像であり、
だから「個性」は、
表面にはなくて、
裏面にひどいものしかない、
みたいなことになっている、ように見えた。

サンプルは4なので、
若者全員ではないだろう。

大人たちが正義や道徳を説いても、
たぶん彼らには「ハイハイ綺麗事」
にしか見えてないんだろう。
表面的にはパチパチと小さな拍手をして、
話を合わせてるだけだからね。

だから、
「本気で自己犠牲する」ことは価値がないと思ってて、
「表面上はいい顔をして、裏で掠め取る」
ことに価値があると思っているっぽい。

その一線を踏み越えればジョーカーになるが、
プレッシャーのキツさで、
ジョーカーにはならないだけのことだろう。
その、張り詰めた風船のような感じが、
会話してると伝わってくる。


仕事なんて無限にあって、
どれやっても儲かって、
首になっても明日には求人が死ぬほどあるような、
80年代の空気で育った僕らと、
失われた○十年で育った世代は、
世界の見え方や構造感がまるでちがう。



以下は雑談だ。

宮崎駿やジブリという見え方が、
だから全然違うのに驚いた。

僕の宮崎駿観は、コナン、カリオストロ、ナウシカ、ラピュタの、
明朗冒険活劇だ。

だけど彼らの宮崎駿観は、
「裏での象徴的な意味を読み取る、パズル映画」
なんだそうだ。
だから「考えさせられる」そう。

考えさせられる?
それって、「象徴的な意味を読み取る」行為そのものを、
「考えさせられる」と言っているらしい。
「作業が発生する」意味で。
それは、物語を見て、
うーむ、世界はこのようになっているから、
このようにしなければならんなあ、
という、「考えさせられる」と、
全く違う意味でないか?

must read message from symbols: 考えさせられる
can read many action to the world: 考えさせられる

の、ふたつの「考えさせられる」があり、
若者にとっての宮崎駿は、
前者であり、テスト問題の解読のように、
思ってるんだって。

なんて不幸な。

それは、
後期宮崎駿しか見てないからで、
「トトロは死の使者であり、
サツキとメイは死んでる」みたいなことを、
「解読」しないと、
見たことにならないんだって。
ばっかじゃねえの。

そんな映画つまらないにきまってるじゃん。


でも世間は宮崎駿で騒ぐから、
一応見てますみたいな体をつくるために、
見るんだってさ。
世間というプレッシャーのためにね。

馬鹿馬鹿しい。

俺が後期宮崎駿なんて見る価値もねえと吠えたら、
「見る価値もない」という言葉尻に食いついて、
全否定するのはどうか、と、そこに来た。
え、内容じゃなくて、世間体なんだと、
僕はとてもびっくりした。

映画に対する感想は自由で、
俺が見る価値もねえと考えるのは、
俺の意見でしかないという価値観は、
どうもないようだ。

世間の合意しか発言しちゃいけないって思ってるらしい。
なぜなら、世間に反すると終わりだから。

こりゃきついな、若者。


だから、「君たちはどう生きるか」には、
「考えさせられる」という感想しかないようだ。

あんなものクソメアリースーだろ、
夢で見た話の再現レベル、
という議論にはついてこれなかった。
「つくる」ものだと思ってないからだろうか。


ふむ。


若者は、ずいぶん弱体化してるな。
生きる力を失っている。
奪われているといってもよい。

日本は滅びる。
もっとプレッシャーのない、
自由に発言して喧嘩して仲直りする人たちに、
押し流されるだろう。

映画を見ればわかる。
インドが次の覇権だな。

アメリカは、ハリウッド映画のほとんどが、
ポリコレで「プレッシャー」を受けている。
もうすぐ日本の若者のようになるだろうなあ。


さて。

君たちはどう生きるか。

他人を軸として振り回され続ける、天動説の人として生きるのか。
自分を軸として動く、地動説の人として動くのか。
主人公はコペル君。地動説発見者の名前をいただいている。
(原作小説の話です)


少なくとも宮崎駿は、
天動説と地動説を対比して、
地動説で生きよというメッセージを込めた、
原作の骨子を生かしたストーリーを構築できなかった。
自分の地動説を発表する。
これは最悪だ、これを見て反省しろ、
と言っているように思えた。
脳の中の壊死を、僕は見させられた。
認知症ってこういうことなんだなと。

そのことについて考えさせられたわ。



たぶん、若者って映画を最高の娯楽と思ってないっぽいな。
posted by おおおかとしひこ at 10:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは お久しぶりです 

「君たちはどう生きるか」に熱中している女性たちを見てこれは「千と千尋の神隠し」にも感じていたことなのですが、彼女らは巨匠宮崎駿が理想を追わず、自分達の側に「堕ちてくれた」ことが嬉しくて嬉しくてしょうがないといった風情があります。

この大学生たちにもそういう気配があるような気がします。自分たちの黒いリアルに寄り添ってくれるという「共感意識」が。

私はそういう感覚でフィクションを観た(読んだ)ことがないので珍しいもん見たなーと思うしかないんですが。

てんぐ探偵、すいませんまだ全部読んでません。
個人的にちょっと引っかかるところがあったので。


Posted by りん at 2023年09月18日 17:16
>りんさん

若い者の限界として、
自分たちの近いものしか受け入れられない、
というのはあると思います。
ネットの発達は、
自分たちに近いものと触れる時間を伸ばして、
他者が存在することを認める時間を減らした気がしますね。
若者の最近の気持ちとしては、
「他者は勝手に存在してる分にはとくに何も思わないが、
自分に迷惑をかけてくるなら激怒して排除する」
でしょうか。
お互いが変容して第3案に辿り着くことまでは想定してないように思えます。

てんぐ探偵は、小説技術が素人の僕が10年かけて少しずつ上手くなってるシリーズかと思います。最新章から逆に辿る方が体験としてはマシかもしれません。最新章ですら、自分の書く脚本の方が良いと思ってるくらいなので。
次に発表予定の最終章で、ようやく脚本レベルに来たかなと自覚しています。
Posted by おおおかとしひこ at 2023年09月19日 06:27
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