2023年10月04日

そのキャラクターならではのエピソードを、絵で用意する

複数のキャラクターが出るのが、
映画というものだ。

その人の見せ場を用意しろ、
なんて巷では言われるが、
僕は「見せ場」ではなくて、
「そのキャラクターといえば、その場面」
だと僕は思う。


そしてそれは、
セリフではなく、絵による記憶にするべき、
というのが本題だ。

つまり、
それぞれのキャラクターがとても立つ目立った場面を、
絵で用意してあげるのがベスト。
つまり、
「そのキャラといえばその絵」が、
浮かんできやすくなるからである。


沢山のキャラが魅力的に描かれた、
ドラマ風魔を例にするか。

小次郎はどういう記憶?
最初の蜂退治、女子サッカーで大暴れ、
壬生とのチャンバラ、鞭で吊るされ、
などが記憶に残るね。

「小次郎といえばこの絵」で思い出される。
もちろん主役だから色んな絵があって、
途中で風林火山を持った絵や、
告白の場面なんかも記憶に残るよね。

竜魔は?
不知火戦、死鏡剣だろう。
必殺技は「絵によるそのキャラの記憶」になりえる。

項羽は?
悪ふざけのときや、何故か「流れ矢に注意」の看板の下にいた絵、
ほうら舞え!や、紫の炎の死ぬ場面だよね。

劉鵬や黒獅子は、
お参りの場面や岩持ち上げ、柔道の絵として記憶される。

姫子ですら塔の上の告白される場面や、
いつも総長室で苦悩した絵を思い出す。
蘭子は鞭や告白の場面だよね。

こんな風に、
「そのキャラならではの場面」を、
絵としてイコンにしてしまうといい、
という話だ。


あしたのジョーにマンモス西というキャラがいる。
もう西といえば鼻うどんだ。
減量に耐えきれず夜中屋台のうどんを食いに行って、
ジョーに見つかって殴られて、
鼻からうどんを出しながらごめんと誤る。
強いジョーや力石と違って、
人間の弱さをうまく表現した名場面だ。

西はボクサーとしては大成しなかったけど、
そういう人間の弱さを描く場面として、
強烈に記憶に残るわけ。

でも西の第一印象は、
刑務所の主、牢名主としての、
「ねじりん棒」や「落下傘部隊」だぜ。
鼻うどんが出る前は、
それが西の印象を決める絵(イコン)であった。

しかしそれは、鼻うどんに上書きされる。
そっちの方が強烈だからね。

これから分かることは、
第一印象は絵として記憶に残ると良い、
そしてそれを覆す更なる絵に残る場面をつくるべきで、
それがそのキャラの見せ場になると最高、
ということである。


またまたドラマ風魔に戻れば、
妖水なんて「八将軍最強の妖水さまを尊敬しろー!」
なんて絵になる場面で記憶されてるし、
麗羅は朱麗炎や死ぬ場面やビンタやパティシエとして、
記憶されるに違いない。


つまり、
我々脚本家の設計としては、
キャラクターとは動機や目的や、
行動やセリフなのだが、
観客に残るのは名場面の絵なのだ。

そして、そのキャラといえば、とその絵に紐づいた記憶になるわけ。


僕は普段ガワを馬鹿にしている。
それは、ガワ如きにだまされ、
中身を見失うミスが多いからだ。
逆にいうと、ガワというのはそれほど強力なのである。
ガワに左右されない中身をつくれるようになったときに、
初めてその強力なガワを使うべきじゃね?
と考えている。

で、もちろん「動機を象徴する絵」もいいんだけど、
「一番活躍した場面」や、
「一番そのキャラの本質に迫った場面」を、
絵として作ってあげようぜ、ということである。


最近リライトした「弾切りの一座」では、
新しく弥一郎を象徴する場面を足した。
今後弥一郎といえば、に思い出しやすい、
キャラの立った場面を追加した。
たとえば鉄砲を巻藁がわりに真っ二つにするとか、
スイカを木刀で割るとかだ。


こんな風になることで、
あとで「ああ、あれはこういう人(出てくるのは絵)」
になるようになるとよい。

見ている途中は、
最初は登場シーンや最初の活躍場面だろうが、
それがどんどんある絵に上書きされていくのが、
理想ということ。


名台詞とかちょっとした仕草とかは、
記憶として残りづらい。
音ではなく絵として強くないと記憶に残らないぞ。



ということで、
その場面はどういう絵として記憶される?
と立ち止まって考え直すと良い。

たとえば座って話し合ってるとか、
窓の外を眺めるなんてのは、
何の絵としての記憶にもならないぞ。
どんなにストーリーを左右する場面だとしてもだ。
posted by おおおかとしひこ at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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