2023年10月13日

なぜ冒頭はインパクトがあるべきか

まあそれのほうが人を引き付けるから、
というのが単純な理由だけど、もう少し奥深く考えてみよう。


人を説得したいとしよう。
ある主張を並べて、ABCのように順に説得するとしよう。
でもそれを垂れ流して、そのまま聞いてくれるだろうか?
人は興味あることしか聞かない。
仮に正しいことを主張しても、
興味がなければ聞き、理解することがない。
教科書や正論が正しかったとしても、人は全部聞かない。

だから、冒頭にインパクトを入れて、
人を引き付けることは意味がある。

だけど、それだけではないんだな。
さらに深く考える。

主張の最初、Aを考えようか。
世の中にはいろいろな人がいて、
ただAを提出しても、異論が巻き起りやすい。
いやXだろ、not Aだ、部分的にAでしかない、
などなど、うまくAの話が伝わらないのは、
ツイッターランドを見ていれば明らかだ。

あることを提出しても、
様々な背景の人がいる限り、
AはAとして伝わらない。

そこでAのレベルを下げて、誰にでもわかる範囲に狭めたのがテレビのやり方だ。
ただ馬鹿しか伝わらず、賢い人は馬鹿にする、
という構造が出来上がってしまった。

じゃあどうすればいいか、
に答えるのが、冒頭のインパクトである。

何かしら人目を引くインパクトがあるものは、
必ず波紋を呼ぶ。
波紋とはリアクションのことである。
そのリアクションに対して、
さらにリアクションを引き出すように返していくと、
誘導しやすいのだ。

なぜなら、返ってくるリアクションは一通りで、
それに返し技を考えたほうが楽だからだ。

Aに対するいろんな反論を考えるのは難しいが、
インパクトに対するリアクションはおおむね一通りに集約されるから、
誘導をしやすいのである。
これは大衆心理、確率的心理である。


これを利用した拳法に八極拳がある。
奥義に属する八大開という方法論がある。
これはたとえば右拳で攻撃して、
相手が防御する反応を引き出して、
その防御した腕をかいくぐるやり方を集めたものだ。
防御の方法はこちらの攻撃に応じて最適化したものを出すから、
相手の反応をあらかじめ予想できるというわけ。
つまり、巧妙に相手を誘導していると言える。
有名な猛虎硬爬山は、
右拳で攻撃して、それを払った腕の下をくぐって肘打ちに変化するやり方である。
ストレートから肘打ちに変化するてこの支点を、
相手の腕にするわけだ。

冒頭のインパクトは、
このためにやる。

つまり、相手の反応を予測しやすいインパクトを与える。
そうすると待ってましたと、
こちらの思う壺に落としやすいということ。

たとえば交番の前で全裸になれば、
必ず警官が追いかけてくるだろう。
そのインパクトは相手を引き出すための罠だってことだ。
(どういう罠にかけられるかは仕掛け次第)

相手の反応を一種類に限定するための、
仕掛け技が冒頭ということ。



冒頭に何故インパクトがあったほうがいいのか。
相手を引き付けやすいから、
というのが半分の理由。
そしてもっと重要なもう半分の理由は、
相手の反応を一種類に限定して、
そこから誘導しやすくするため、ということだ。

この文章はそのようにして書かれている。
反応を予測しているから、
流れるように書けるし、読める、というわけ。

三手目を簡単にするための一手目
(相手の反応を二手目として)が、
冒頭のインパクトなのだ。

二手目がたくさんありえて、三手目の対応に迫られる、
普通のAの導入では、
結果多くの人がこぼれる、というわけだ。



冒頭にインパクトを、
と教える表現塾は多いだろう。
なんのために?まで深く考えている人は、
あまりいないのではなかろうか。
なので書いてみた。
posted by おおおかとしひこ at 03:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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