うるさい客は一般には迷惑かもしれないが、
自分のシナリオには、最もうるさい客になるべきだ。
僕は普段からくだらない脚本には、
徹底的に批判し、改善策を提案することにしている。
それは、自分の書いたものにも同じである。
自分のが可愛くて他人にひどく批判をするならば、
それはダブルスタンダードというものだが、
他人のものも自分のものも、
関係なくフラットにうるさいのが僕である。
他人のものはすでに完成していれば、
改善の余地はなく残念だが、
自分のものならば可能である。
他人のものを正しく見て、
正しく改善策を示すことは、
自作品にむけた練習でもあるわけ。
(練習というか日常だな)
これ、金払う価値あんの?
退屈ポイントがかなりあった。こことこことここ。
その原因は同じことの繰り返しだからだ。
他にあったパターンだなこれ。
どこがオリジナリティなんだ?
これだとしたら、これはコアとして小さくないか?
もっと太いオリジナリティこそが金を払う価値があるのでは?
ショウとしては、アクションや芝居やエロがあって、
なんとか持ったけれど、
ストーリーとして金払う意味なくない?
お話に金を払えるものにしなよ。
なんてことを思い、
自分のメモに残すわけ。
で、どうすればそのうるせえ客が、
「うむ、悪くない」というかな、
という条件を洗い出すんだよ。
これならどうですか?
こういうことならばこれらを総合的にまとめられますか?
こういうアイデアならうまくいくのでは?
シェフと客だ。
うるさい客は、シェフを育てる。
この程度で潰れるシェフならば、
その程度だったわけだ。
常に刃を持て。
そして自分にも切りつけろ。
弱点があれば切られる。
そして痛いときは、その弱点に気づいてなかったときだ。
そうして改善策を考えるのだ。
切り付けるのは趣味やストレス発散ではない。
改善するためにやるのだ。
高い金と二時間の集中力を使って、
それに見合わないものを提供されたら、
怒りも湧く。
その怒りの矛先を、自作品にもきちんと向けるわけ。
この程度で人前に出すなよ、と。
もっとこことこことここを直せるだろ、と。
今600Pの小説を書いている。
オムニバス形式だ。
ものすごく苦労してリライトしてきて、
昨日終わったところ。
で、改めて思ったことは、
「もっとバラエティが欲しい。
文章が整い、読みやすくなり、
心が入りやすくなったのはいいが、
そのせいで画一化してしまった。
オムニバスなのに、
同じ人物の話を延々聞かされている気がする」
というものだ。
うるせえ客だな。
でも真実なのだろう。
もう一回600Pのリライトをし直さなければならない。
しかも同一性に気を遣いつつ、
バラエティのような各方向に尖ることも、
やる必要が出てきた。
シチュエーションに関してはかなりのバラエティを用意したつもりだったが、
キャラクターねえ。
たしかに、俺の描く主人公的な男と女の、
限られたパターンしかないかもねえ。
もっと違うキャラ出さないとねえ。
こんなめんどくさいことを、
うるさい客は要求してくる。
ああ、やるよ。
うるせえけどやるよ。
だってその方が良くなるからな。
一番贅沢で、一番教養があって、
一番理解力がなくて、
一番共感力が深い、
うるさい客になろう。
それは最上の客だ。
2023年10月17日
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