2023年10月17日

一番うるさい客になれ

うるさい客は一般には迷惑かもしれないが、
自分のシナリオには、最もうるさい客になるべきだ。


僕は普段からくだらない脚本には、
徹底的に批判し、改善策を提案することにしている。

それは、自分の書いたものにも同じである。

自分のが可愛くて他人にひどく批判をするならば、
それはダブルスタンダードというものだが、
他人のものも自分のものも、
関係なくフラットにうるさいのが僕である。

他人のものはすでに完成していれば、
改善の余地はなく残念だが、
自分のものならば可能である。

他人のものを正しく見て、
正しく改善策を示すことは、
自作品にむけた練習でもあるわけ。
(練習というか日常だな)


これ、金払う価値あんの?
退屈ポイントがかなりあった。こことこことここ。
その原因は同じことの繰り返しだからだ。
他にあったパターンだなこれ。
どこがオリジナリティなんだ?
これだとしたら、これはコアとして小さくないか?
もっと太いオリジナリティこそが金を払う価値があるのでは?
ショウとしては、アクションや芝居やエロがあって、
なんとか持ったけれど、
ストーリーとして金払う意味なくない?
お話に金を払えるものにしなよ。

なんてことを思い、
自分のメモに残すわけ。

で、どうすればそのうるせえ客が、
「うむ、悪くない」というかな、
という条件を洗い出すんだよ。

これならどうですか?
こういうことならばこれらを総合的にまとめられますか?
こういうアイデアならうまくいくのでは?

シェフと客だ。
うるさい客は、シェフを育てる。
この程度で潰れるシェフならば、
その程度だったわけだ。


常に刃を持て。
そして自分にも切りつけろ。

弱点があれば切られる。
そして痛いときは、その弱点に気づいてなかったときだ。
そうして改善策を考えるのだ。

切り付けるのは趣味やストレス発散ではない。
改善するためにやるのだ。


高い金と二時間の集中力を使って、
それに見合わないものを提供されたら、
怒りも湧く。
その怒りの矛先を、自作品にもきちんと向けるわけ。

この程度で人前に出すなよ、と。
もっとこことこことここを直せるだろ、と。




今600Pの小説を書いている。
オムニバス形式だ。

ものすごく苦労してリライトしてきて、
昨日終わったところ。

で、改めて思ったことは、
「もっとバラエティが欲しい。
文章が整い、読みやすくなり、
心が入りやすくなったのはいいが、
そのせいで画一化してしまった。
オムニバスなのに、
同じ人物の話を延々聞かされている気がする」
というものだ。

うるせえ客だな。
でも真実なのだろう。

もう一回600Pのリライトをし直さなければならない。
しかも同一性に気を遣いつつ、
バラエティのような各方向に尖ることも、
やる必要が出てきた。

シチュエーションに関してはかなりのバラエティを用意したつもりだったが、
キャラクターねえ。
たしかに、俺の描く主人公的な男と女の、
限られたパターンしかないかもねえ。
もっと違うキャラ出さないとねえ。


こんなめんどくさいことを、
うるさい客は要求してくる。

ああ、やるよ。
うるせえけどやるよ。
だってその方が良くなるからな。



一番贅沢で、一番教養があって、
一番理解力がなくて、
一番共感力が深い、
うるさい客になろう。

それは最上の客だ。
posted by おおおかとしひこ at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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