と考えるとわかりやすいかもね。
物語は、
基本的に変化を描くものだ。
あるところから出発して、
目的をもってどこかへ行き、
それが達成した(ハッピーエンド)、
ないし別の結末を得ることで、
その影響を受けて変化する。
周囲の状況も変わり、
主人公の内面も影響を受けて変化するだろう。
良い方向への変化を成長と呼び、
悪い方向への変化を闇堕ちとかバッドエンドと呼ぶ。
だから、
原理的には初期状態に戻らない。
戻るものは変化ではなく平行移動だ。
仮に空間的に平行移動しても、
本質が変化してなければ、
元に平行移動で戻れば終わりだ。
平行移動ではなく、
本質が変化してしまうことを描くのが、
一般的な物語であり、映画である。
これと似て非なるものに、
長期シリーズがある。
漫画、人気シリーズドラマ、小説、アニメなどを想定するとよい。
これらは、一見物語形式でありながら、
「変化しない」を狙う。
キャラ設定や世界設定が受けたため、
なるべくこれを長期政権化して、
長く稼ごうという戦略だ。
だからドラえもんやのび太は変化しないし、
ガンダム世界も変化しないのだ。
(アムロやシャアは、変化したから退場した)
長期シリーズは、
「あの○○を見たい!」という欲望で支えられている。
動物園と同じかな。
ライオンが見たいという欲望と、
ガンダムが見たい欲望は同じところにいる。
事件が起こり、
物語形式をつかい、一件落着するのであるが、
成長や変化をせず、
「また元に戻る」ことをする。
このループが楽しくて、
長期シリーズは続く。
もちろん、一部退場や一部新キャラはあるが、
一旦レギュラーメンバーが確定したら、
そのループをなるべく長く伸ばすことが、
世界の維持の目的になる。
バラエティのメンバーもそうかもね。
我々は近所の社会や会社のメンバーや、
コミュニティに属し、それを快感としたいのだ。
だから、毎度毎度その世界にアクセスする。
変化をしてはいけない。
稼ぎ頭である世界観が壊れるからね。
ドラえもんに急にライバルの犬型ロボットは出てこないし、
ガンダム世界でモビルスーツがドローンに技術革新することはない。
のび太は大人にならないし、
各キャラは結婚したり離婚したり転職したり、
宗教を変えたりしない。
キャラ変しないことが、
世界の維持の秘訣である。
つまり映画と真逆だ。
映画は変化を見ることが目的と考えてもいいくらいだ。
AがどうBに変わるかの娯楽だ。
そのために全ての理論が構築されている。
しかし長期シリーズは、
Aが引っ掻き回されて、Aに戻るまでを描き、
またAが引っ掻き回されて…
のループをするのである。
だから、
漫画はキャラの方がストーリーより重要とされる。
「ずっと飽きられない魅力のキャラ」
をつくることが、
ループを長く回すコツだからだ。
引っ掻き回されて元に戻るなら、
極論ストーリーはそこまで重要ではない。
港に着いた安心感が重要で、
航海はまあなんだっていい。
旅するときに、
目的地に行き何かをすることが重要か、
どこへ行ってもいいが、
仲の良いこの人たちと行きたいかが重要か、
という話である。
前者が映画で、後者が長期シリーズだ。
一回切りの興行と、
なるべく長く興行を続けるものの、
本質的な差だ。
世の中に「ストーリー理論」的なものは沢山転がっていて、
ここもそうしたものを展開し続けている。
僕は映画脚本論を書いているが、
ちまたには漫画の脚本論を書いてる人もいる。
混同しないことだ。
もちろん、互いに参考になる部分はあろう。
多くの技術は共通している。
しかし、大元の目的が違うことは、
理解しておくと良い。
一回きりの大冒険と大きな変化か、
その世界をずっと維持したいがためのかき回しか。
長期シリーズの場合、
冒頭部分は組み合わせになることがある。
映画の冒頭のように、
否定されるべき日常世界を描き、
目的が発生して、
非日常世界へ飛び込む。
映画はここから変化を経験していくが、
長期シリーズは、
この魅力的な非日常世界でループし続けることが目的だ。
だから漫画の第一話は、
映画の第一幕と二幕の非日常世界と、
一旦のクライマックスをもってきて、
これから非日常世界での毎日が始まる、
という風な構成がとても多い。
二話以降は、
素敵な世界での日常→事件→解決→もとに戻る
のループになるわけだ。
あとはその事件がどれだけデカイ山かどうかだけだ。
映画は三幕構成をもって変化を語る。
長期シリーズは、
その一部だけ持ってきてオープニングに使う。
そんな感じ。
もちろん、動機や目的や、
サブプロットや外的目的や内的目的、
秘密や嘘や伏線や解消などの、
同じテクニックを共通して使える。
だからとても似ている。
しかし本質的な部分で異なる。
両方書いてみると、理解が早まると思う。
2023年10月24日
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