2023年11月23日

それは社会的か?

「社会的」の定義が曖昧だが、
とりあえず、
「そのストーリーの結果が、
個人一人だけでなく、
その社会の構成員にとってよくなること」
と定義しようか。


その社会は、最小二人だろう。

ラブストーリーで幸せになるエンドは、
相手も幸せにしているので社会的だ。

ただ誰かを殺して結婚したのだとしたら、
社会的ハッピーエンドではあるまい。
その二人の身勝手だと判断されるだろう。

ところが殺した人が悪人で、
殺したことによって誰か(できればたくさん)が、
救われるのならば、
これは社会的ハッピーエンドだといえる。

多くの物語で悪が成敗されるのは、
社会的だからだ。


これは、なにも物語だけでなく、
現実社会でも同様である。

勝手に一人だけ幸せになってる人には、
人はあまり興味がない。
焼き鳥屋でビール片手に幸せそうになってるオッサンは、
うむ、とは思うものの、
まあどうでもいいとなる。

しかしそのオッサンが誰かを助けて、
その結果勝利の晩餐で幸せになっているならば、
よし、とポイントがあがるものだ。

社会的ポイントとでもいうべきものがある、
ということを言おうとしている。


社会的ポイントが0(個人のもののみの場合)の、
ストーリーには人は興味がない。
1以上のものに興味が出てくる。
それは「価値がある」気がするからだ。

できれば1より2の方が良く、
3の方がもっと良い。

幸せは等量でなくともよい。
恩恵が少しある人から、すごい幸福になるまで、
バラバラでも構わない。

トータルでその社会が改善すれば、
それは社会ポイントを持っている。


あなたの主人公の活躍によって、
誰が幸福になったろう?
たった一人だけを幸せにしたのか?
それともみんなを幸福にしたのか?

前者だとしたら後者に変えてみることは可能か?
他の登場人物は、
主人公の行動の結果、少し人生が良くなっただろうか?

だとしたら、主人公の活躍には、
「意味があった」「価値があった」
ように見えると思う。

逆に「誰も幸せにならなかった」となれば、
その主人公の価値を下げることができる。


日本人の好きな奴は、
「周囲から疎まれ、誤解されているが、
実は社会を良くした、隠れたヒーローなのである」
というやつだ。

民族的伝統だろうか。
個人の幸福と、社会の幸福は、一致の必要はない。



さて、ようやく本題。

この「社会」を、あなたの属しているリアル社会と、
混同するなよ、ということを言おうとしている。

この物語は素晴らしい、
だからリアル社会が影響を受けるべきだ、
などのような主張である。

これは、物語の本質を分かっていない者の考えることだ。


物語とはフィクションである。

我々と似た社会の話ではあるが、
我々の社会の話ではない。

壁の向こうの別世界で起きたことを我々は「覗き見する」
ことしかできず、向こうの世界に影響を及ぼせない。
そして同様に、向こうの世界はこちらに出てこない。

つまり、「第四の壁がある」のである。

「この素晴らしい物語をもって、
社会に影響を与えよう」などと画策する者は、
第四の壁を知らない、
ストーリーの素人である。


ストーリーは常に、
現実社会との接点においては間接話法である。

フィクションの世界の結論は、
こっちのリアル社会ではこのように読める、
ということしか言えない。

それは、第四の壁を通過できないことと同じだ。


ストーリーは常に、
現実と関係ない、別の箱の中で完結する。

だけど我々は、
ストーリーの中の世界は、
我々の世界と同一の法則で動くと仮定している
(特に断りがあればそこは別扱いだが、
それ以外は断りがない限り同一法則だろうと思っている)
ので、
やはり、社会的にポイントがある物語を、
良いと思うだけのことである。


だから、
社会ポイントを上げる話を、
現実社会とは切り離してその社会だけで描くと、
なぜか現実社会が良い影響を受けるのだ。


勝手に幸せを掴みたまえ。
そしてその主人公のおかげで、
周囲(やその社会全体)が、
幸せになる物語を書きたまえ。

勝手に、現実社会がいい影響を受けるだろう。



たとえば、
現実に現れたジョーカーをどう裁くべきか、
いい結論は出ていない。

しかし架空の世界の架空のジョーカーが、
周囲を幸せにする話をつくれれば、
現実社会でのジョーカーは減るかもしれないよ。
それが物語の間接的な影響力なんだよね。
posted by おおおかとしひこ at 00:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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