そんな話を聞いて、バカなと思ったもんだ。
でも今、似たようなことをやってるわ。
サーキットを歩いて確認するのは、
運転中には発見できない、
アスファルトのギャップやコンディション、
縁石などを調べるためらしい。
頭の中では滑らかに繋がってるイメージの路面は、
現実には案外ガタガタで、
「こうだろう」というイメージと、
現実の差を埋めるために、
時速300キロじゃ確認できないから、
歩いてちゃんと見ておくそうだ。
一周だけの一発勝負なら見逃したポイントがあっても、
何とかなるのかもしれないが、
本戦は何時間もかけて何十周もするからね。
そりゃ事前に確認しておくのは、
プロとして当然だろうな、
と今では思える。
当たり前だけど、
物書きというものは、
一字一句を確認する。
文法的にあってるよな、
間違った言葉使ってないよな、
この言葉これでいいんだっけ、
句読点の位置これでいいかな、
こういう言い方だと誤解を生むかもだから、
こういう風に変えられないか、
リズムはどうか、
イメージが膨らむ順番に書けてるか、
「だった」を「だ」に変えたほうがいいか、
「なのだ」のほうがいいか、
改行位置はここがベストか。
アスファルトの路面を歩いて確認するような、
地道な一文字ずつのチェックをやるわけだよな。
4万字もある、
なんて書く前は思ってるけど、
書き終えてしまえば、
たった4万字しかないんだよ。
これだけでこれだけの思いを伝え切れてるのか、
思いが大きすぎてもっと削るべきか、
いや、削りすぎたか、
ほんのわずかな原稿で表現しないといけない。
必要最小限にすればもっと詰め込める、
詰め込みすぎたら理解も追いつかないし楽しくない、
そのせめぎ合い。
サーキット一周何歩だろう。
何万歩くらいかな。
まあ大体似たようなことをやってるわけだよな。
第一稿を書き終えるだけが執筆ではない。
そのあとのリライトは、
第一稿より時間がかかる。
サーキットを一歩一歩歩いてチェックするように、
完全に滑らかな路面になるまで工事するのが、
リライトという工程だ。
きちんとできてれば、
あまりにもスムーズにストーリーが進む。
継ぎ目のないジェットコースターのような、
極上の二時間。
そうなるのは、
サーキットを一歩一歩歩いて確認するような、
精度が求められる。
2023年11月27日
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