僕は普段少女漫画を読まないので、
少女漫画特有の表現があると、敏感に感じ取れる。
たとえば表情の表現。
ぱああああ(喜び)
むっ…!(不満、怒り)
もじもじ…
ぷぅー(すねる)
そっ…そんなことないもん!(はげしい動揺)
などなど。
もちろんこれらは誇張された「漫符」
であることは理解するとしても、
こういう強調は、少女漫画にしかないんよね。
そして当然、
強調表現だから現実に見ることはない。
どんな女の子と付き合ったとて、
少女漫画のような表情、リアルではみたことがない。
演劇の世界や、
大袈裟めの韓国ドラマなら見れるだろうかね。
(僕の知ってる韓国ドラマはひと世代以上前のやつだから、
今ではどうか知らないので、あくまでイメージ)
で、
つまり三人称では存在し得ない表情が、
なぜ少女漫画では存在し得るかというと、
「少女漫画は一人称だから」
と考えるのが妥当だろう。
僕が親しみ、育った少年漫画は、
手塚→石森を経て、ハリウッド映画を常に参考にしてきた。
だから、表現のベースは常に三人称だ。
時々自分の思いを内面のセリフとして入れることはあるが、
それはごく少なめで5%くらいだろう。
これが少女漫画になると、
内面のセリフは30〜50%くらいに跳ね上がる。
僕なんかは少女漫画に慣れてないから、
「こいつらいっつも一人言ばっかいってんなあ」
なんて、9割型内面のセリフに感じてしまう。
少女漫画はつまり、
三人称形式のふりをした、一人称である。
そう考えると、
あり得ない表情の誇張が、
少女漫画にしかないことに説明がつく。
他に表情の表現で一人称を表すメディアがないこともあるか。
(AVはギリあるかも。
表情でイッた、イッてないを議論することもあるからな。
そういう意味では、AVのドラマパートは、
少女漫画のように、表情を引き出す何かにすれば良いのだろう。
演技力に限界がある場合がほとんどだが…)
ちなみに、
この少女漫画特有の「表情表現」に目をつけた、
「少女漫画ぽく愚痴る。」というネタがある。
あまりにも面白いのでいつか一気読みしようと思ってたら、
書籍化されてたみたい。おめでとうございます。
https://www.amazon.co.jp/%E5%B0%91%E5%A5%B3%E6%BC%AB%E7%94%BB%E3%81%BD%E3%81%8F%E6%84%9A%E7%97%B4%E3%82%8B%E3%80%82-%E3%81%9F%E3%82%89%E5%AE%9F/dp/4046817607
などで無料試し読みが可能。
https://taratarimainichi.com/archives/category/illustration/shoujomanga-guchi
だとそれに漏れたやつのアーカイブかな。
主婦のどうでもいい愚痴りが、
少女漫画のキラキラの中に入ることによって、
急に劇的になり、
異化効果を生む稀有な作品だ。
その表情はほとんど少女漫画特有で、
頰のあからみ、涙、汗、息、まわりのエフェクト、
髪の流れ含め、
リアルでこんな表情見ねえわ、って感じのものばかり。
だから、
主観的にはこんな気持ちである、
というあくまで漫符なんだなと思う。
付き合いたての彼女には多少あったかもなあ、ぐらいで、
それも恋の魔法でそう見えてた主観的表情かもねえ。
こうした三人称(主婦の生活感ある愚痴)と、
一人称(私はキラキラ少女漫画!)のズレを、
うまく取り上げてネタまで昇華しており、
なかなか素晴らしいと思う。
まあ発想の元は、
「私たち主婦の愚痴は下らないドロドロしたものばかりで、
少女漫画のキラキラはどこいったんだろーねー、
そうだその二つを組み合わせてみたら?」
ぐらいであり、
「三人称と一人称のギャップをネタに作ろう」
という批評的スタートではないだろうね。
くるくる変わる表情は、
くるくる変わる気持ちの代弁でもある。
三人称メディアである映画では、
この手は使えない。
なぜなら無表情であっても編集と文脈さえうまくいけば、
いい演技だと思えてしまうという、
クレショフのモンタージュ実験があるからだ。
ひとつひとつの表情ではなく、
文脈が大事。
もちろん一人一人の役者の文脈感応度はあるだろう。
しかしあんな表情はリアル人間にはつくれないよね。
あんなに秒で表情変わられたら「薬やってる?」ってなるわな。
表情にたよらずに、
文脈をつくることがシナリオの仕事。
主観的表情は、客観的には存在しない。
ああ、でも何回か女の子のこうした表情はリアルで見たことあるな。
彼氏にベタベタの女の子とかだな。
自分にも何回か向けられたことはあったよなあそういえば。
そんなくらいのレア出現率だね。
それを誇張して商売にしているともいえる。
2023年09月29日
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