2023年12月05日

物語は、無意識が書く

なんでストーリーが浮かぶのか、
その原理的なところはよく分かってないよね。

結局、思いついたから、書くわけだよね。
それってほとんど「無意識が書く」と言っても、
過言ではないかもしれないね。


たとえば、
「言いたいこと」というのは、
どこから出てくるのだろう?

意識から出てくるかな?

たぶんこれまで思ったことが蓄積されてて、
まだ言葉になってない渦みたいなのがあって、
それが言葉を持った時に、
言いたいことが出てくるのではないだろうか。

それって、無意識の領域から出てきたといえるよね。


我々に自由意志があるか?
という問いはまだ答えが出ていない。
脳科学の知見では、
脳内に電気信号が走り、
そのあとにようやく「思いついた」と、
言語化がはじまるそうだ。
大脳の監視意識は、
すでに無意識レベルの脳内信号が出している結論を、
さも今思いついたかのように扱うらしい。

私たちは、
自分の意思で言いたいことを今言っている、
ように自覚しているが、
そもそもそれは無意識下で別の考えが決まってから、
ようやく言語として大脳皮質が認識したにすぎないかもね。


まあ、構造はどうでもいい。

我々は、
「次に言いたいこと」を制御できない。

だから、無意識なのだ。

僕はこのように文章を書いているが、
たぶん無数の無意識が波打ち際で囁き、
その中で、
前の文と繋がりがあり、
しかも全体の論に適合するものを選んで、
無意識から意識的にたどって、
これを書いているはずだ。

単に無意識をランダムに拾っていったら、
きちがいの妄言になると思う。

つまり、
思いつき、次に言いたいことは無意識だが、
それを統御するのは意識、ということを言おうとしている。


「思ったことを言う」ということですらこうだ。
「物語を書く」という、
あの衝動はどこからやって来るのだろう?
そして、
あの展開のアイデアはどこから?
なぜ、次にどのキャラがどう言うかわかるのだろう?

僕は、
すべては無意識からやって来るのだと考えている。


そもそもの芯になるアイデアや、
あらゆるディテールや、
Aでないときの別アイデアとしてBを思いつくことや、
ラストシーンの、まるでこの一言のためだけに全てがあったかのような、
最後の一行のセリフは、
すべて無意識が書くことのような気がしている。

それを支離滅裂な白昼夢に終わらせないのは、
それを書き留める側の、
理性による統御だと考える。

たくさんの無意識が、
同時にあれやこれやとわっと言うけれど、
前のに繋がり、次に繋がるものを、
理性が選んで繋げている、
ような気がする。


だから、物語というのは、
複数の人格で書いてる感覚があるんだよね。

リーダーである書き手と、
好き勝手に妄想するたくさんの無意識たちと。

物語を書く才能とは、
つまるところ、
この無意識たちが毎回豊かに暴れてくれるかと、
統御人格が捌いて最後まで理性を保てるかの、
2方向の制御だと思うんだよね。


「書きたいから書いた」なんて、
支離滅裂で詰まらないパートを放置してるのは、
無意識を制御するだけの統御人格が弱い証拠だし、
理屈ばっかこねて感情が震えない、
詰まらないストーリーは、
無意識の奔放が少ないんだよ。



去年から一年かけて書いてきた小説がある。
(すでに某賞に応募した)

毎日毎日無意識がやかましかった。
あらゆる提案を許すとぐちゃぐちゃになる。

最後らへんは、
どんな無意識の提案も、
すでに出来上がった、無意識と意識の練り上げたものに、
負け始めた。

ああ、これはそろそろ完成が近いんだな、
と思った次第。



無意識が暴れる。
理性が紡ぐ。

無意識が理性の紡ぎの外に出なくなり、
すべてが収まったときが、
「ものを書き終えた」ことではないかと思う。

この理性のこの枠組みでは、
これが最上だと、無意識が納得したのだろう。


さて、
次の暴れをやるかね、と、無意識はいつも元気だ。




私たちはなぜ、どうやって物語を書くのだろう?

誰もちゃんと書いてないし、
よく分かってない。

僕は、無意識が書くのだと思っている。
トランス状態に入らないと書けないからねえ。

プロってのは、構えて二秒でトランスに入れる人のことさ。
あるいは、トランスと日常が、
なだらかに繋がってる人のことをいう。



この一年に書いたやつはとても疲れた。
まだ無意識はやりたがってるが、
リーダーの方が疲労しまくっている。

たぶん、リーダーは理論や理屈で鍛えられる。
無意識は、精神状態で変わってきそうな気がする。
posted by おおおかとしひこ at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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